59 / 91
本編【第二章】
2-32 カレン視点
しおりを挟む
先に口を開いたのは父様だった。
「私は…そんな簡単に割り切れない。」
続けて母様も涙の滲んだ瞳のまま、こちらを向いて答えた。
「私にも無理よ…それにあの子は私達のことを見限ったわ。」
私はゆっくり頷いた。できるなら父様と母様にも私と同じ思いを抱いて欲しかった。でも、自分の罪さえ償いきれていない私が父様や母様に無理強いはできない。
「分かりました。お疲れのところ私の話を聞いてくださり感謝します。それと父様、母様。二人が自慢に思ってくださったカレンは次のパーティを最後にいなくなるでしょう。親不孝な行いばかりして申し訳ありません」
二人とも私が何のことを言っているのか薄々感じ取ったのだろう。静かに頷いた。
部屋を出た私はアンの方に向き直り、声をかけた。
「付き合わせて悪かったわね」
その言葉に驚いたように私を見つめ、アンは答えた。
「まさか本当に仰られるとは思いませんでした」
「どうせ、自分の都合の良いように話を持っていくって?」
皮肉っぽく尋ねると、生真面目な顔で頷かれてしまい、私は笑うしかなかった。
「それはそうよね。散々あなたにもカリーナにも嫌がらせをしたのだから。」
「…」
「…おやすみなさい」
部屋の前でアンと別れると私はベッドに倒れ込んだ。直近のパーティーは明後日。公爵家で開かれるものだ。貴族の多くが出席するだろう。当然私の取り巻きの多くも、カリーナとフォーゼム様も出席する。
パーティを台無しにはできない。けれどカリーナがこれ以上好奇の目で見られないように、次のパーティーでなんとかしないといけない。
そんなことを考えながら眠りに落ちた。
翌朝、私付きのメイドであるエリナが慌てたように声をかけてきた。
「カレン様、失礼致します」
「返事をする前に入ってこないで…」
まだ着替えておらず、ガウンを羽織っただけだった私はエリナに小言を言いかけて、途中で言葉を飲み込んだ。エリナの後ろからシュナイダー様が入ってきたのだ。
その様子を見てエリナが慌てて止める。
「シュナイダー様、客間でお待ちくださるように申し上げたはずです。」
エリナの言葉をうるさそうに手で払いながらシュナイダー様は下卑た笑いを浮かべてこちらに近づいてきた。
「カリーナ殿には及ばないが、やはりカレンも美しいな。今日は正式な婚約の破棄を伝えにきたが…気が変わりそうだ」
「私は…そんな簡単に割り切れない。」
続けて母様も涙の滲んだ瞳のまま、こちらを向いて答えた。
「私にも無理よ…それにあの子は私達のことを見限ったわ。」
私はゆっくり頷いた。できるなら父様と母様にも私と同じ思いを抱いて欲しかった。でも、自分の罪さえ償いきれていない私が父様や母様に無理強いはできない。
「分かりました。お疲れのところ私の話を聞いてくださり感謝します。それと父様、母様。二人が自慢に思ってくださったカレンは次のパーティを最後にいなくなるでしょう。親不孝な行いばかりして申し訳ありません」
二人とも私が何のことを言っているのか薄々感じ取ったのだろう。静かに頷いた。
部屋を出た私はアンの方に向き直り、声をかけた。
「付き合わせて悪かったわね」
その言葉に驚いたように私を見つめ、アンは答えた。
「まさか本当に仰られるとは思いませんでした」
「どうせ、自分の都合の良いように話を持っていくって?」
皮肉っぽく尋ねると、生真面目な顔で頷かれてしまい、私は笑うしかなかった。
「それはそうよね。散々あなたにもカリーナにも嫌がらせをしたのだから。」
「…」
「…おやすみなさい」
部屋の前でアンと別れると私はベッドに倒れ込んだ。直近のパーティーは明後日。公爵家で開かれるものだ。貴族の多くが出席するだろう。当然私の取り巻きの多くも、カリーナとフォーゼム様も出席する。
パーティを台無しにはできない。けれどカリーナがこれ以上好奇の目で見られないように、次のパーティーでなんとかしないといけない。
そんなことを考えながら眠りに落ちた。
翌朝、私付きのメイドであるエリナが慌てたように声をかけてきた。
「カレン様、失礼致します」
「返事をする前に入ってこないで…」
まだ着替えておらず、ガウンを羽織っただけだった私はエリナに小言を言いかけて、途中で言葉を飲み込んだ。エリナの後ろからシュナイダー様が入ってきたのだ。
その様子を見てエリナが慌てて止める。
「シュナイダー様、客間でお待ちくださるように申し上げたはずです。」
エリナの言葉をうるさそうに手で払いながらシュナイダー様は下卑た笑いを浮かべてこちらに近づいてきた。
「カリーナ殿には及ばないが、やはりカレンも美しいな。今日は正式な婚約の破棄を伝えにきたが…気が変わりそうだ」
20
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
【完結】毎日記憶がリセットされる忘却妻は、自称夫の若侯爵に愛されすぎている。
曽根原ツタ
恋愛
見知らぬ屋敷で目覚めたソフィアは、ユハルと名乗る美貌の侯爵に──三年前から契約結婚していると告げられる。さらに……
「結婚後まもなく、風邪を拗らせた君は、記憶を一部喪失し、少々珍しい体質になったんだ。毎日記憶がリセットされる──というね。びっくりだろう?」
自分のことや家族のことはぼんやり覚えているが、ユハルのことは何ひとつ思い出せない。彼は、「義理で世話をしてるだけで、僕は君を愛していない」と言う。
また、ソフィアの担当医師で、腹違いの義姉のステファニーも、ユハルに恋心を寄せており……?
★小説家になろう様でも更新中
★タイトルは模索中
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる