後宮にて、あなたを想う

じじ

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15 皇后と貴妃

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「黄貴妃様、ご入室なさいます。」
貴妃の訪れを侍女が告げる。
「ええ、どうぞ」
「皇后様、本日はお招きいただきまして、誠にありがとうございます」
「黄貴妃様にお会いできて嬉しいですわ。」
にこりと微笑みながら、椅子に座るように勧める。
「黄貴妃様のご出身の黄島では、貿易が盛んなのですよね。どのようなものが多く扱われるのでしょう。」
「皇后様のご興味のあるものかは分かりませんが、多いのは海産物や香辛料ですね。それに、それぞれの国の貿易の中継地点ということもあり、さまざまな国の情報なども入ってくるのですよ。」

さすが属国とはいえ、黄王家の姫だな、と蔡怜は純粋に関心する。蔡怜が聞いたことだけでなく、本当に興味を持つであろう国の情報のことまで、さらりと付け加えてくる。

本来なら、黄王家の姫こそが私にとって殿上人だよなー。それが政治的判断によって、私の方が上の立場となっているのに、全く気にする素振りもなくこちらを立ててくれているし。まぁ、こちらが本来は皇后の地位など望んでいないことは、この方にはバレてそうだけど。

そう思いながら、蔡怜は黄貴妃に尋ねた。
「黄貴妃様、どうぞ私のことは名前でお呼びになって。国の情報とおっしゃいましたが、それはどの程度のことなのでしょう。例えば、国同士に戦が始まる予兆があると言ったような大きな出来事なのでしょうか。」
「では、私のこともどうぞ、黄昭と。そうですね、それぞれの国の情勢ももちろんですが、意外に思われるかもしれませんが、貴族同士の確執や内政に関わる部分も意外と漏れ聞こえてくるものです。」

もしや、私が後宮の噂について知りたいことが見抜かれているのだろうか。私が昨日皇帝と謁見していることを側妃方はもちろん知っている。なんならその際、人払いがなされたこともすでに知れわたっているのかもしれない。黄昭様は頭が切れるようだし、皇帝の話の内容にあたりをつけているのかも。せっかく向こうから話題を振ってくれたことだし、少し聞いてみるか。

「黄昭様、後宮の噂について詳しくご存知でしょうか。皇帝陛下のさきのお妃方に起こった不幸をどう捉えるべきか、皇后として、悩んでおります。」
「ええ。私が実家におりました折によく耳にしておりました。呪いだ、などと申す者もいたようですが、私にはそうは思えません。物事には必ず理由があるものです。なにかしらの事故または事件だと考えるべきでしょう」

やはりか。もちろん前皇帝を弑した、などのことがあれば、呪いだ、と言う声があがるのも無理はないが、今回はさきの皇帝が病により崩御した、ということが明らかになっているしな。問題は事故ならなぜこれほど連続して起こるか、事件なら誰が何のためにしているか、だな。

蔡怜は思わず考え込んだ。
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