後宮にて、あなたを想う

じじ

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46 蔡怜と弟殿下4

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桂騎の話を聞いた蔡怜は、妙に納得してしまった。

お互いが片想いだったからこそ、弦陽はかえって忌憚なく桂騎に律佳のことを気遣うように言いやすかったのだろうな。
恋仲だったなら、陛下の妃に想いを残す者として要らぬ憶測を呼びかねないし。
それでも、二人が最終的に結ばれたのは良かったと言えば良かったけれど。

そこまで、考えて蔡怜はハッと気づいた。

「陛下、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
「律佳様の御子が亡くなられた時、子が産めないお体になられたとお聞きしました。」
「ああ」
「そのことを弦陽様はご存知だったのでしょうか」
「ああ、もちろん知っていた」
「では、陛下が律佳様をご実家にお戻しになられたのは、弦陽様は律佳様が子を産めなくても娶られると分かっていたからですか」
「律佳の実家が娘を家に戻すことに肯定的だったことももちろんあるけどな。でも、律佳を実家に返すことを桂騎に話した時に、弦陽に話していいか、と聞いてきたからな。きっと再嫁するだろうとは思っていた」
「ちなみに、二人が想いあっているとお知りになられたのはいつなのでしょうか」
「そうだな。弦陽の方は桂騎に言われてからだ。律佳の方は、城を去る時だな。そう言う話が出るかもしれない、と私から彼女に伝えた。」

後宮という特殊な場所とはいえ、自分の夫だった人物から、他の男との婚姻を示唆されるというのは微妙な気持ちになるだろうな、と考えながら蔡怜は尋ねた。

「律佳様はなんと?」
「こう言ってはなんだが、律佳の明るい表情を後宮であまり見たことがなかった。その彼女が、思わず、と言った感じではあったが、本当に嬉しそうに微笑んだのだ。子を亡くし、自ら後宮を去らせて欲しいと言った時の律佳には、今後は一人で生きていく、と言ったような強い決意を感じた。おそらくその気持ちは彼女の本心だったと思う。しかし一方で陳家にいた時に好意を抱いていた相手が、子が産めないとわ分かった上で、まだ自分を望んでくれたのだ。嬉しく思うなという方が無理だろう。」
「そうだったのですね。それで今、律佳様と弦陽様はどうされているのでしょう」
「仲睦まじく暮らしいるそうだぞ。と言っても弦陽は毎日、王宮に武官として出仕しているから顔も合わせるが、律佳はあまり屋敷から出ないそうでな。私も彼女が後宮を去って以降は出会ったこともないのだが」

懐かしむように言いながら話し終えた皇帝に対して、桂騎の口から辛辣な言葉が飛び出した。

「兄上。それは当たり前だと思いますよ。後宮にいた時、水月湖月姉妹から嫌がらせを受けていたにもかかわらず表立って庇うどころか、釘をさすことすらされなかったのですから。」

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