後宮にて、あなたを想う

じじ

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63 真夜中の密談2

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「秘密の同盟、ですか」

妙に楽しそうな黄貴妃から、何を言われるのかどきどきしながら奏輝は尋ねた。

「ええ。」
「それはどのようなものでしょうか。」

おそるおそる尋ねると、黄貴妃は今までに見たことがないほど妖艶な笑みで答えた。

「陛下と蔡怜様の仲を私達で発展させましょう!」

思わず絶句した奏輝を見て、黄貴妃は不思議そうに小首を傾げた。

「あら、だめかしら。あなたにとっても悪い話じゃないと思ったのだけれど。」
「ですが、黄貴妃様は側妃様でいらっしゃいます。決してそのような状況を望んでいるわけではございませんが、本来なら蔡怜様と陛下の寵愛を得るため競うお立場であらせられますのに、なぜでしょうか。」
「そうね、確かに私がこのような提案しても不審に思うのも無理ないわよね。」

そうして少し考え込んだ後、いたずらっぽい表情をして黄貴妃は奏輝に告げた。

「一番の理由は、あの二人の幸せなところが見たいから、かしら。他にも理由がないわけではないけれど、陛下や蔡怜様とは直接関係のないことよ。あの二人の幸せを願う気持ちは本心なのだけれど、それでも信じられないかしら」
「いえ、そのようなことは。」
「それでは決まりね!このことは二人だけの秘密よ」

そう言い残して、黄貴妃は颯爽と立ち去っていった。後に残された奏輝は、しばらく呆然と立ち尽くしていたが、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてきてはっと我に帰った。

「蔡怜様にお伝えすべき…なのかしら」

思わず呟く。
黄貴妃と話したこと自体は、蔡怜に報告しておく必要があるだろう。しかし、話の内容は伝えるかどうか悩むところだった。
本来なら全て話すべきだが、黄貴妃に口止めされている。それでも自分の主人ではないのだから言われた通りにする必要などないのだが、二人の仲を取り持つというのは魅惑的な提案だった。
だが、このことを蔡怜が知ってしまえば今まで以上に陛下に対する自分の気持ちに頑なになりかねない。
なにより、それを提案してきた黄貴妃から悪意が一切感じられなかった。単純に二人を恋仲にしたい、と言うわけでもなさそうだが、他に思惑があれど、それは蔡怜を傷つけるものではないように感じた。

「蔡怜様には申し訳ないけれど、黙って見守るだけでは進むもの進まないわね。黄貴妃様が味方についてくださるなら…いつまでも逃げさせませんよ、蔡怜様」

そう呟いて奏輝は自室に向かった。
明日の朝一番に蔡怜に、夜中に黄貴妃に出会って挨拶をした、と言う報告だけはせねば、と思いながら。
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