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第一章
王子様の四方山話 2
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「海もいいし、山もいいし、花火も楽しい。帰したくない日もあるがしれない。先立つものはどれだけあっても良いからね」
「朝帰りなんて、うちのオニイサマが聞いたら怒ると思うけどねぇ」
「朝?」
これは驚いたというように、珪はわざとらしく目を丸くしてから、ニヤリと笑った。
「朝はないだろう?帰るのは昼か夜か。ゆっくりさせて頂かないと」
その言葉に経済学部の王子様と呼ばれる愛想の良さを一瞬消して、なんとも剣呑な視線を風人が送れば、冗談、と珪は両手を上げてみせた。
なんだかんだと今の所、清いお付き合いなわけだから、男同士の四方山話にすぎないことが暗黙の了解だ。
「そういう風人クンは?」
「ん?」
「浮いた話とかないわけ?」
「浮けない程度に面倒な話は山ほどあるぜ?」
九条グループの次男坊として、というニュアンスを暗に感じさせるように、華やかな笑顔で返すと、楽しそうで何よりと珪は小さく笑うだけだった。
どうせ気に入らない縁談なら適当にあしらうのだから、心配してやるのほどのことでもなかろう、といったところだ。
実際、心配が必要なほどの時は、どうせ何もしてあげれるわけではない。
勿論、妹の方のことなら、がむしゃらに努力することもある。
問題はあしらいすぎて、本当に良い子を逃しそうな気配が風人にはする、ということだ。
愛想が良く、華やかなこの青年は、ある程度大人しい女子は引け目を感じて声を掛けれないだろうし、しかし強引に自分を売り込む女子を好むとも思えない。
身内のことで忙しそうにしている姿を見ている風人には、思うような春が中々訪れないのではないかと、珪は推察していた。
「お前、モテても女心分からなそうだしな」
本音を口に滑らせた珪に、反論こそしないが不機嫌そうな気配が一瞬現れた。
しかし、思い当たることがあったのか、ふと考え込むような仕草をしてみせる。
「あー、そういえば。ちょっと前から大学でずっと見て来るコがいる。あの気持ちは良く分からないかな」
「なに?美人?」
「まー可愛い子だけど。お前、気になるの外見かぃ」
興味をそそられた様子の珪に、風人は呆れたような顔を見せた。
もちろんずっと見てくる相手とは花宮瑞華のことだ。
しっかり恨みがましい視線は気付かれていて、特に害がないからと放っておかれているのだ。
とはいえ、九条風人側に思い当たる節はないため、疑問の対象にはなっていた。
珪は面白そうに目を輝かせて、話に食いついた。
「そんな美味しい話、まずはおさえるとこ1つでしょうが」
「珪が思っているような色恋じゃないぜ?多分。熱っぽい視線じゃなくて、なーんか恨まれてるようなやつ」
「へぇ」
「でも、まったく心当たりがないんだよな。愛想も頭も育ちも良いこなんだよ。昔は親の付き合いでうちに来たこともあったんじゃないかな」
「それって、風人のストーカーじゃないの?」
「はあ?そりゃないだろ」
したり顔で、とんでもないことを言いだした珪の目線は真剣なことを話しているというよりも、どこまでも楽しそうにしている。
いくらなんでも相手に失礼だろうと否定的な様子の風人にクスクスと笑って見せた。
「朝帰りなんて、うちのオニイサマが聞いたら怒ると思うけどねぇ」
「朝?」
これは驚いたというように、珪はわざとらしく目を丸くしてから、ニヤリと笑った。
「朝はないだろう?帰るのは昼か夜か。ゆっくりさせて頂かないと」
その言葉に経済学部の王子様と呼ばれる愛想の良さを一瞬消して、なんとも剣呑な視線を風人が送れば、冗談、と珪は両手を上げてみせた。
なんだかんだと今の所、清いお付き合いなわけだから、男同士の四方山話にすぎないことが暗黙の了解だ。
「そういう風人クンは?」
「ん?」
「浮いた話とかないわけ?」
「浮けない程度に面倒な話は山ほどあるぜ?」
九条グループの次男坊として、というニュアンスを暗に感じさせるように、華やかな笑顔で返すと、楽しそうで何よりと珪は小さく笑うだけだった。
どうせ気に入らない縁談なら適当にあしらうのだから、心配してやるのほどのことでもなかろう、といったところだ。
実際、心配が必要なほどの時は、どうせ何もしてあげれるわけではない。
勿論、妹の方のことなら、がむしゃらに努力することもある。
問題はあしらいすぎて、本当に良い子を逃しそうな気配が風人にはする、ということだ。
愛想が良く、華やかなこの青年は、ある程度大人しい女子は引け目を感じて声を掛けれないだろうし、しかし強引に自分を売り込む女子を好むとも思えない。
身内のことで忙しそうにしている姿を見ている風人には、思うような春が中々訪れないのではないかと、珪は推察していた。
「お前、モテても女心分からなそうだしな」
本音を口に滑らせた珪に、反論こそしないが不機嫌そうな気配が一瞬現れた。
しかし、思い当たることがあったのか、ふと考え込むような仕草をしてみせる。
「あー、そういえば。ちょっと前から大学でずっと見て来るコがいる。あの気持ちは良く分からないかな」
「なに?美人?」
「まー可愛い子だけど。お前、気になるの外見かぃ」
興味をそそられた様子の珪に、風人は呆れたような顔を見せた。
もちろんずっと見てくる相手とは花宮瑞華のことだ。
しっかり恨みがましい視線は気付かれていて、特に害がないからと放っておかれているのだ。
とはいえ、九条風人側に思い当たる節はないため、疑問の対象にはなっていた。
珪は面白そうに目を輝かせて、話に食いついた。
「そんな美味しい話、まずはおさえるとこ1つでしょうが」
「珪が思っているような色恋じゃないぜ?多分。熱っぽい視線じゃなくて、なーんか恨まれてるようなやつ」
「へぇ」
「でも、まったく心当たりがないんだよな。愛想も頭も育ちも良いこなんだよ。昔は親の付き合いでうちに来たこともあったんじゃないかな」
「それって、風人のストーカーじゃないの?」
「はあ?そりゃないだろ」
したり顔で、とんでもないことを言いだした珪の目線は真剣なことを話しているというよりも、どこまでも楽しそうにしている。
いくらなんでも相手に失礼だろうと否定的な様子の風人にクスクスと笑って見せた。
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