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第一章
王子様の四方山話 1
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まさに豪邸と呼ぶに相応しい九条家。
広大な敷地と贅を尽くしたと言われても文句は言われないであろうお屋敷の一室。
そこでのんびりとお茶を飲んでいるのは、仲睦まじい二人の男女。
九条家の華やかな兄弟である月人氏と風人氏の二人の妹である、高校生の雪乃嬢と、その恋人である萬屋珪。
艶やかな黒髪に妖しさを感じるほど秀麗な容姿を兼ね備えた九条雪乃が、よく似ていると評されるのが同じく母親似の長兄の月人だ。しかしその長兄と全く似ていないのが、その細身の女性らしい身体つきである。
大概のスポーツをこなしてしまう二人の兄とは違い、簡単に手折られそうにさえ感じてしまう。
白くきめ細やかな肌と、魅惑的な紅い唇を持ち、思わず魅入ってしまう深い眼差しを持っている。
高校生にしては些か色香を持ちすぎであるが、相手として側にいる萬屋珪といる時間を過ごすことで少女の様に、はにかんだ姿さえ見せていた。
萬屋珪の方は、風人氏と同じ大学四年生。
どこか甘さを感じさせる笑顔の持ち主で、たまに人懐こい表情を見せる。女性が話しかけやすく感じる雰囲気を持っている好青年だ。スリムではあるが鍛えられた身体つきは服から覗く身体つきからも分かった。
別に育ちが良いお坊ちゃんのわけでもないのだが、美しすぎる恋人にも、九条家の邸宅ぶりにも恐れおののく気配はない。
大物なのか鈍感なのかは謎だが、今日も出された、高品質で香りも良く、勿論お値段も良すぎる紅茶と、九条家ご自慢のパティシエの作ったお菓子を頂きながら、それよりも二人の時間を楽しんでいた。
そこに帰って来たのが、九条風人である。
「よう、来てたのか」
「どうも」
軽く手を上げて返事を返されると、二人は大学も違い昔からの友人でもないのだが、そこは同い年の気安さがあるらしい。
風人は珪側の空いている椅子に座った。
「ご一緒にお茶をされますか?」
「あぁ、頼むよ」
風人に頼まれた妹が席を外すと、長い脚を組んで、話す姿勢になった。
それが随分と絵になるので、珪は軽く口の端を上げて笑った。
随分無意識だが、恋人である雪乃と同じで周りの視線を集めるのだ。
その無自覚さを愉快に感じる珪も、中々性格が悪いが、こちらは自覚している。
そういう無邪気さも、自分の長所だろうとポジティブに認識している程度だ。
一挙一動を観察しているのは気付いてるのかいないのか、風人は視線には無反応に並べられたお菓子に手をつけた。
「最近は忙しいって聞いてたけど」
そう尋ねれば、肩をすくめて珪は笑った。
「ちょっと趣味と実益を兼ねてバイトしておりまして」
「ん?大学と別に副業持ってなかったっけ?」
どれくらいの収入があるのかは知らないが、某有名芸術家の息子であるという珪は、風人とは馴染みがあるようでない仕事を色々しているはずだ。どちらかといえば、九条家はお客様側。
だが商売人家系でもなく、そういった気質もない珪はどこでも、それこそ恋人の雪乃以外には強い執着も見せない。来るもの拒まず去る者追わずという所がある。
活動分野がまるで違うからこそ、いずれは九条グループの一翼を担う、多忙な御曹子である風人とは、気兼ねなくへつらうこともなく付き合っている。
「まぁ親父の手伝いとか、色々してるけど。もうすぐ夏休みだし、儲けは少しでも多く持っておきたいんだよ」
「夏休み?」
何かあるのかと聞きたげな風人の様子に、珪は破顔した。
「そりゃ、こちらのお嬢さんとデートでしょう?」
それから楽しそうに話し出した。
広大な敷地と贅を尽くしたと言われても文句は言われないであろうお屋敷の一室。
そこでのんびりとお茶を飲んでいるのは、仲睦まじい二人の男女。
九条家の華やかな兄弟である月人氏と風人氏の二人の妹である、高校生の雪乃嬢と、その恋人である萬屋珪。
艶やかな黒髪に妖しさを感じるほど秀麗な容姿を兼ね備えた九条雪乃が、よく似ていると評されるのが同じく母親似の長兄の月人だ。しかしその長兄と全く似ていないのが、その細身の女性らしい身体つきである。
大概のスポーツをこなしてしまう二人の兄とは違い、簡単に手折られそうにさえ感じてしまう。
白くきめ細やかな肌と、魅惑的な紅い唇を持ち、思わず魅入ってしまう深い眼差しを持っている。
高校生にしては些か色香を持ちすぎであるが、相手として側にいる萬屋珪といる時間を過ごすことで少女の様に、はにかんだ姿さえ見せていた。
萬屋珪の方は、風人氏と同じ大学四年生。
どこか甘さを感じさせる笑顔の持ち主で、たまに人懐こい表情を見せる。女性が話しかけやすく感じる雰囲気を持っている好青年だ。スリムではあるが鍛えられた身体つきは服から覗く身体つきからも分かった。
別に育ちが良いお坊ちゃんのわけでもないのだが、美しすぎる恋人にも、九条家の邸宅ぶりにも恐れおののく気配はない。
大物なのか鈍感なのかは謎だが、今日も出された、高品質で香りも良く、勿論お値段も良すぎる紅茶と、九条家ご自慢のパティシエの作ったお菓子を頂きながら、それよりも二人の時間を楽しんでいた。
そこに帰って来たのが、九条風人である。
「よう、来てたのか」
「どうも」
軽く手を上げて返事を返されると、二人は大学も違い昔からの友人でもないのだが、そこは同い年の気安さがあるらしい。
風人は珪側の空いている椅子に座った。
「ご一緒にお茶をされますか?」
「あぁ、頼むよ」
風人に頼まれた妹が席を外すと、長い脚を組んで、話す姿勢になった。
それが随分と絵になるので、珪は軽く口の端を上げて笑った。
随分無意識だが、恋人である雪乃と同じで周りの視線を集めるのだ。
その無自覚さを愉快に感じる珪も、中々性格が悪いが、こちらは自覚している。
そういう無邪気さも、自分の長所だろうとポジティブに認識している程度だ。
一挙一動を観察しているのは気付いてるのかいないのか、風人は視線には無反応に並べられたお菓子に手をつけた。
「最近は忙しいって聞いてたけど」
そう尋ねれば、肩をすくめて珪は笑った。
「ちょっと趣味と実益を兼ねてバイトしておりまして」
「ん?大学と別に副業持ってなかったっけ?」
どれくらいの収入があるのかは知らないが、某有名芸術家の息子であるという珪は、風人とは馴染みがあるようでない仕事を色々しているはずだ。どちらかといえば、九条家はお客様側。
だが商売人家系でもなく、そういった気質もない珪はどこでも、それこそ恋人の雪乃以外には強い執着も見せない。来るもの拒まず去る者追わずという所がある。
活動分野がまるで違うからこそ、いずれは九条グループの一翼を担う、多忙な御曹子である風人とは、気兼ねなくへつらうこともなく付き合っている。
「まぁ親父の手伝いとか、色々してるけど。もうすぐ夏休みだし、儲けは少しでも多く持っておきたいんだよ」
「夏休み?」
何かあるのかと聞きたげな風人の様子に、珪は破顔した。
「そりゃ、こちらのお嬢さんとデートでしょう?」
それから楽しそうに話し出した。
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