散華へのモラトリアム

一華

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第六章

華は風を追って 3

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思い浮かんでしまったのだ。 
無駄に華やかで、優しげで意地悪な。 
本当に無駄で無駄で無駄な! 

九条風人。 
 

慌てて首を振り、フル回転で言い訳する。 

――そ、そうよ。気になるのは会社のことだ。風人と会ってなくて詳しく聞けてないこの間の会社のことが気になる。会社の為に、会社の為にこんなに・・・ 


一人呼吸困難気味に考え込みながら。 

ウダウダしても仕方ない、と。 
花宮の本社へ向かうことにした。
会いたいのだから、素直に会ってみればいい。

花火の日に勝手に傷ついた気持ちも。
あれだけ振り回されてしまえば、気にしている方がばかばかしい。
鷹羽に対する恐怖も、どうせ受け入れなければならないなら、思い残しなど残したくない。

だから、私は会いに行こう。
そう思った。 


九条家からの迎えがある予定だったから、花宮の車を呼ばなくてはいけないが時間が惜しかった。
乗り慣れない電車に乗るために駅に向かう。
途中、携帯が鳴った。
誰より憧れている九条月人からだった。 

顔が綻び、携帯を開きかけて 
ふと止まる。 

電話が何かのお誘いだったり、今後の打ち合わせや慰労だったりしたら。 
風人に会うチャンスはなくなるかも知れない。 
電話に出てしまえば、断ることは瑞華には出来ない。

そう思うと、携帯が開けなかった。 
 


会社に行けば、。  
――・・・ 

そう思うと。 
大きなため息をついて。

会社に行こう、と。 
携帯をしまった・・・ 




普段、九条風人が使用している専務取締役の部屋。
1人でくるのは久しぶりだが、瑞華がその部屋に入ることは難しくなかった。 

駐車場から重役専用エレベーターで昇りすぐの部屋だ。一人では出入り禁止でも誰かに見つからなければ問題ない。
エレベーターは基本的に外の人間が使用出来ないようにパスがいるようになっている。 
会社の人間には人の出入りに気付かれる可能性が少なく、鷹羽は使用することもない。 

――駐車場に風人の車がなく、覚悟はしていたが、専務取締役の扉を開いても誰もいなかった―― 

手持無沙汰にパソコンの電源を入れて、ぼんやりと思考を巡らせる。 
どこに行ったんだろう? 


勿論、卒業後は九条の一端を担い、また華屋全店の経営まで見ている風人が忙しくないわけがない。 
色々あるんだろうが、会いたかった。
ため息を漏らして、パソコンからデータを眺める。 
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