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第六章
華は風を追って 5
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もう一度、経費を見つめて、例年通りの数字を洗い出していく。
気になる、幾つかの項目がはじき出される。
年間顧客にDMと共に発行していた商品券。施策から見ればカットされているはずなのに、数字として減り幅がおかしいことに気付いて
流石に眉を潜めた。
おかしいと思わなければ、気になる所ではない。
いくらでも理由なんて思いつく。
その他に見つかった項目もそう。
――経理の部長は古参の社員だったが、去年退職をしている――
今、経理をしきっているのは誰だったろう?
軽く唇を噛んだ。
どうにかこのパソコンを見ていれば、気づけた事柄なのに、どうして諦めていたんだろう。
どうして、怯えるだけだったんだろう。
落ち着こう。
ここは瑞華の城だ。
多少、ブランクがあったとしても、問題はない。
まずは何があっているのか確認しなければならない。
――携帯が鳴っていた。
それは九条家からのものだったが。
だが、出るだけの意識はなかった。
花宮の社長たる父は、鷹羽の会社にいるスケジュールだった。
父は人と会う時には携帯の電源を切る。
連絡は付きようがないが、新しい取引が行われる前に止めなければならない。
瑞華の携帯には何度か着信があったが。
ごめんなさい。
手を合わせてから、鷹羽氏の会社へと入って行く。
ここに来る前に思いついて、店舗で経理の領収書を確認したが。
計算してみると過剰に、切手など郵便関係が購入されている。
切手も商品券も――換金出来る「商品」だ。
そして、鷹羽氏の会社はアウトレット――その中で金券を取り扱う業務も行っている。
細かな気になる項目も、鷹羽さんが関われるものがありすぎる。
――新しい契約が行われる前に、きちんとしたことが分かるまでは。
父には鷹羽との距離を置いてもらわなければならない。
受付で、父が来社していることを確認してから、社長室への引き継ぎを頼む。
程なく鷹羽の執務室に通された。
「今、お二人ともいらっしゃいますので」
にこやかに秘書の方に告げられ。
緊張した面持ちで二人を待つ。
時間は、少しばかり緩やかに過ぎている気がした。
やがてドアが開いて、鷹羽氏が入ってきた。一人で。
にこやかに笑う笑顔に寒気を感じる。
「タイミングが良かった。ちょうど婚約の日程が決まった所です」
冷たい視線が瑞華を捕らえた。
気になる、幾つかの項目がはじき出される。
年間顧客にDMと共に発行していた商品券。施策から見ればカットされているはずなのに、数字として減り幅がおかしいことに気付いて
流石に眉を潜めた。
おかしいと思わなければ、気になる所ではない。
いくらでも理由なんて思いつく。
その他に見つかった項目もそう。
――経理の部長は古参の社員だったが、去年退職をしている――
今、経理をしきっているのは誰だったろう?
軽く唇を噛んだ。
どうにかこのパソコンを見ていれば、気づけた事柄なのに、どうして諦めていたんだろう。
どうして、怯えるだけだったんだろう。
落ち着こう。
ここは瑞華の城だ。
多少、ブランクがあったとしても、問題はない。
まずは何があっているのか確認しなければならない。
――携帯が鳴っていた。
それは九条家からのものだったが。
だが、出るだけの意識はなかった。
花宮の社長たる父は、鷹羽の会社にいるスケジュールだった。
父は人と会う時には携帯の電源を切る。
連絡は付きようがないが、新しい取引が行われる前に止めなければならない。
瑞華の携帯には何度か着信があったが。
ごめんなさい。
手を合わせてから、鷹羽氏の会社へと入って行く。
ここに来る前に思いついて、店舗で経理の領収書を確認したが。
計算してみると過剰に、切手など郵便関係が購入されている。
切手も商品券も――換金出来る「商品」だ。
そして、鷹羽氏の会社はアウトレット――その中で金券を取り扱う業務も行っている。
細かな気になる項目も、鷹羽さんが関われるものがありすぎる。
――新しい契約が行われる前に、きちんとしたことが分かるまでは。
父には鷹羽との距離を置いてもらわなければならない。
受付で、父が来社していることを確認してから、社長室への引き継ぎを頼む。
程なく鷹羽の執務室に通された。
「今、お二人ともいらっしゃいますので」
にこやかに秘書の方に告げられ。
緊張した面持ちで二人を待つ。
時間は、少しばかり緩やかに過ぎている気がした。
やがてドアが開いて、鷹羽氏が入ってきた。一人で。
にこやかに笑う笑顔に寒気を感じる。
「タイミングが良かった。ちょうど婚約の日程が決まった所です」
冷たい視線が瑞華を捕らえた。
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