散華へのモラトリアム

一華

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第七章

瑞々しく咲く華とならむ 1

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「婚約?」 

掠れる声で絞り出せば、笑顔が返る。 
「そう。婚約です。私としても卒業まで待てない気持ちだったのでちょうど良かったのですが・・・華屋の社長がどうしても急ぎたいと」 
「・・・そんな」 

俄かに信じがたい気持ち。 
いや、それよりも。 
瑞華はここで納得するわけにはいかないと気持ちを振るい立たせた。

「婚約をすることは出来ません。鷹羽さん」 

上擦る声を、それでも搾り出してはっきり告げた。 
いや、ここはきっちりしておかねばと思った。 
父に見せるつもりで慌てて纏めた資料を並べて、はっきりと告げる。 

「会社のお金でいくつか気になる点があります。貴方に関係があるはずです。
はっきりするまでは、華屋は貴方と距離を置きます」 

告げると。 
鷹羽氏は、ソファーに座って、ゆったりと資料を手に取り、じっくりと眺める。 

実に愉しそうに。 
やがて、全て見終わると 
瑞華に座る様に指示して、頬杖をついた。 

「――それで?」 

何事もなかった様な態度に、背筋が寒くなった。 
立ったまま、鷹羽氏を見つめていると、背もたれに体を沈めて足を組み、穏やかに目を細めた。 

「貴女が何に疑問を持たれているかは知りませんが――必要なら華屋さんの経理の方とじっくりと突き詰めましょう 。恐らくは疑問は全て解消されるはずだ」 

たいしたことがなさそうに、続けられる。 
だがその目はじっと瑞華を捕らえ、油断なく構えてるのも気づいた。

「華屋さんが、私と距離を置くのは構いませんが、こういった件がすぐに明らかになったり、急に取引先がなくなったりすれば、そちらにとっては痛手ではありませんか?」 

くすくす、と。 
試すような視線を向けられた。 

それで瑞華は気づいた。鷹羽は切り札の一つとして、こういった裏金作りめいたことをし、何かの時には華屋を陥れる材料にしようとしていたのだと。 
瑞華の顔色は青ざめたと思うが、返事が変わることはない。

「あなたが心配することではありません」 
凛と返すが、流石に震えた。 
――鷹羽氏と直接言葉を交わすのは失敗だったと気付く。 
だから、父がいる時にと思ってきたのに――どうしてこんなことになってしまったのだろうか? 
居心地の悪い気分から抜け出すべきだと、瑞華にも分かった。

「今日は失礼します」 
帰らなくては。 
踵を返して。 
おかしな話が出ない内に撤退しようとした所で鋭く声が飛んだ。 

「お待ちなさい」 

力強い声に、つい立ち止まると、歩み寄られ肩を捕まれる。 
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