拝啓、お姉さまへ

一華

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第一章 4月

お姉さまは有名人? ★4★

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柚鈴の部屋の前に立っている市原寮長にぶつかりそうな勢いで近寄ったかと思うと、詰め寄るようにしがみつく。
小柄な市原寮長よりは高いが、平均的な身長の女の子を驚きながらマジマジと見てしまう。

こ、こんどはなに?

走ってきた女の子は、活力に溢れた高い声とすこし垂れ目がちになる表情を、くるりと内巻きに顔にかかる髪が可愛らしくデコレーションしている。

それに、遥、さま?

寮長は様付けなのだろうか。それとももしや常葉学園では先輩は様付けなのだろうか?
私は戸惑ったが、呼ばれた市原寮長の方は、特に疑問を持った様子はない。

ないどころか、様呼びを当然としたように、可愛らしいだけだった市原寮長が、急に小さく顎を上げてショートカットの少女を咎めるように目を細めた。

「なんですか、花奏かなで騒々しい。寮内を走らないでちょうだい」
「す、すみません。あの遥様のお部屋、三階のあのお部屋に移られたって聞いて探してたんですよ!本当なんですか?」
「あら、耳が早いのね。本当よ」
「うわぁ、すごい!お部屋見せてくださいっ」
少し誇らしげに市原寮長が笑い、花奏さんは手を合わせて、感動したように目を輝かせている。
付いていってないのは柚鈴だけだ。

急に目の前で始まったお嬢さま劇場にどうしたら良いか分からない。
引きつった顔で困っていると、市原寮長が気づいて愛らしく笑った。

もうすでに、その愛らしい笑顔もちょっと怖い。

「花奏、それよりもここはあなたと同じ新入生の部屋よ。ご挨拶なさい」
花奏さんには、可愛らしい姿からは、想像つかないような上から目線の言い方。
まさに「命じる」と花奏さんはこちらを見て、えへへと笑ってみせた。

「ごめんなさい。初めまして。私は中西花奏かなでです。常葉学園には中等部から通ってました。寮生ではないんだけど、私はこちらの市原遥様の家系に四月から入るから、こちらには良く顔を出すのでよろしくね」
「か、家系?」
「柚鈴さんは外部からの入学だから、ご存じないのよね」

不思議な言葉に、自己紹介し返すのも忘れて言葉を反芻すると、市原寮長が間に入ってくれた。
外部入学生が知らない、ということは、このお嬢さま劇場は常葉学園の習慣なのだろうか?
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