22 / 282
第一章 4月
お姉さまに聞きたいことがあります! ★6★
しおりを挟む
どうにかお風呂タイムを終えた頃には、二年生が何人かお風呂から上がってきていた。
大浴場を出て、食堂の前を通ると
「そこのゆっくりした一年生、寄っていかない?」
遥先輩から声を掛けられた。
奥には常葉学園のセーラー服に身を包んだ見知らぬ人が座っている。
長くまっすぐな髪を一筋の乱れも感じないポニーテールでまとめ、つり目がちの凛々しい表情。
誰かな?
「今、我が寮の副寮長かつ高等部生徒会長である、長谷川凛子が帰ってきた所なのよ」
「止めてよ、遥。さっきから一年生が通るたびに」
遥先輩が芝居がかって説明すると、紹介された凛子先輩はため息をついて、立ち上がるとこちらに微笑んだ。
「初めまして。高等部3年、長谷川凛子です。ご紹介頂いた通り生徒会長をさせて頂いてます。とはいえ、寮で『生徒会長』なんて呼ばないでね」
確かに生徒会長と言われれば、これ以上生徒会長らしい人もいないかもしれない。
実に堂々とした様子で、響く声をしている。眼光鋭く、威厳ある容貌だ。
「高村薫です」
「春野幸です」
「小鳥遊柚鈴です」
つられるように名前を名乗り、3人でよろしくお願いしますと頭を下げた。
凛子先輩は何かに反応するようにまっすぐ柚鈴を見てくる。
視線が、今日の誰より、痛い。
やっぱりこれも、苗字に反応しているんだろうか?
「1年生はこれで最後ね。あなたたち、入寮祝いに凛子が自販機の飲み物をどれでもご馳走してくれるそうよ。どれが良い?」
「なんだか今日はそういうことになってしまったのよ。良ければ皆さんどうぞ」
「良いんですか?ありがとうございます」
遥先輩がふんわり笑って促すと、凛子先輩が自販機にお金を入れる。
幸さんは早速、飛びつくように、自販機の前で飲み物を選び始め、薫さんは迷わずコーヒー牛乳の紙パックを選ぶ。
出遅れた柚鈴に、凛子先輩がどうぞ、と自販機の前に手招いた。
「柚鈴さんは、どうする?」
「あ、じゃあオレンジジュースを」
悩み続ける幸さんを追い越す形でオレンジジュースの紙パックを自販機から取る。
慌てたのは幸さんだ。
「ぅぅ!待って、待ってて。そして飲んで行こうよ」
「待つから、あんたは早く選びなさい」
薫さんが席に着くので、柚鈴も笑って隣に座った。
「なんか、あの子。実家の豆柴に似てるわ」
薫さんが、やれやれとため息をつくと、凛子先輩と遥先輩がテーブルを囲むように向かい側の席に着いた。
「みんな凛子に恐縮したのか、飲み物持って早々と部屋に帰ってしまったのよね。あなたたちで最後みたいだし、ご一緒してもいい?」
遥先輩はちゃっかり紅茶の紙パックを持っている。
「ごちそうさま、凛子」
「はいはい」
『ごちそうさまです』
薫さんと柚鈴が2人でお礼を言った後に、ようやく幸もイチゴ牛乳を選んで来た。
「いただきまーす」
幸せそうに一口飲んで、美味しそうに頬を緩める幸さんは子供のようだ。
「なんだか、イチゴ牛乳も喜んでそう」
思わず私が口にすると、薫さんがニヤリと笑う。
幸さんが意味がわからない風の顔をしている。
きょとん、とした顔が可愛らしいのだ。
大浴場を出て、食堂の前を通ると
「そこのゆっくりした一年生、寄っていかない?」
遥先輩から声を掛けられた。
奥には常葉学園のセーラー服に身を包んだ見知らぬ人が座っている。
長くまっすぐな髪を一筋の乱れも感じないポニーテールでまとめ、つり目がちの凛々しい表情。
誰かな?
「今、我が寮の副寮長かつ高等部生徒会長である、長谷川凛子が帰ってきた所なのよ」
「止めてよ、遥。さっきから一年生が通るたびに」
遥先輩が芝居がかって説明すると、紹介された凛子先輩はため息をついて、立ち上がるとこちらに微笑んだ。
「初めまして。高等部3年、長谷川凛子です。ご紹介頂いた通り生徒会長をさせて頂いてます。とはいえ、寮で『生徒会長』なんて呼ばないでね」
確かに生徒会長と言われれば、これ以上生徒会長らしい人もいないかもしれない。
実に堂々とした様子で、響く声をしている。眼光鋭く、威厳ある容貌だ。
「高村薫です」
「春野幸です」
「小鳥遊柚鈴です」
つられるように名前を名乗り、3人でよろしくお願いしますと頭を下げた。
凛子先輩は何かに反応するようにまっすぐ柚鈴を見てくる。
視線が、今日の誰より、痛い。
やっぱりこれも、苗字に反応しているんだろうか?
「1年生はこれで最後ね。あなたたち、入寮祝いに凛子が自販機の飲み物をどれでもご馳走してくれるそうよ。どれが良い?」
「なんだか今日はそういうことになってしまったのよ。良ければ皆さんどうぞ」
「良いんですか?ありがとうございます」
遥先輩がふんわり笑って促すと、凛子先輩が自販機にお金を入れる。
幸さんは早速、飛びつくように、自販機の前で飲み物を選び始め、薫さんは迷わずコーヒー牛乳の紙パックを選ぶ。
出遅れた柚鈴に、凛子先輩がどうぞ、と自販機の前に手招いた。
「柚鈴さんは、どうする?」
「あ、じゃあオレンジジュースを」
悩み続ける幸さんを追い越す形でオレンジジュースの紙パックを自販機から取る。
慌てたのは幸さんだ。
「ぅぅ!待って、待ってて。そして飲んで行こうよ」
「待つから、あんたは早く選びなさい」
薫さんが席に着くので、柚鈴も笑って隣に座った。
「なんか、あの子。実家の豆柴に似てるわ」
薫さんが、やれやれとため息をつくと、凛子先輩と遥先輩がテーブルを囲むように向かい側の席に着いた。
「みんな凛子に恐縮したのか、飲み物持って早々と部屋に帰ってしまったのよね。あなたたちで最後みたいだし、ご一緒してもいい?」
遥先輩はちゃっかり紅茶の紙パックを持っている。
「ごちそうさま、凛子」
「はいはい」
『ごちそうさまです』
薫さんと柚鈴が2人でお礼を言った後に、ようやく幸もイチゴ牛乳を選んで来た。
「いただきまーす」
幸せそうに一口飲んで、美味しそうに頬を緩める幸さんは子供のようだ。
「なんだか、イチゴ牛乳も喜んでそう」
思わず私が口にすると、薫さんがニヤリと笑う。
幸さんが意味がわからない風の顔をしている。
きょとん、とした顔が可愛らしいのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる