拝啓、お姉さまへ

一華

文字の大きさ
21 / 282
第一章 4月

お姉さまに聞きたいことがあります! ★5★

しおりを挟む
「今日、2年生にペアになるつもりだって宣言されたよ」
「え、そうなの?」
幸さんの驚いたような顔につられて、薫さんをまじまじと見る。
「なんか面倒そうでさ。あれ、断ったらダメなのかな?」
「えぇ??うーん」
考え込むように幸さんは、一度潜ってから、火照ったような顔でお風呂場から上がった。
「はぁーもうきついー。続きは外でお願いしますー!」
はふはふと、手で風を送る様子に、薫さんと顔を見合わせ、笑って後を追い出る。
「そういえば、なんか助言者メンター制度って、部活とか先生ぐるみで話が来たりするから断りにくいみたいだね」
頬の赤い顔で幸さんが言うと
「そうなの?」
苦笑した薫さんが、まいったなーとロッカーへと歩いていった。
脚が長いので、すすっと追い抜かれた感じだ。
逆に幸さんはぽてぽてと、子犬のような歩き方だ。

「昔の姉妹制度の時は、誰でもお姉さまになれたし、2人の同意が重要だったみたい。もしかしたら断りづらいことくらいはあったかもしれないけど。今は助言者メンターは、学校からの認定がなきゃなれないでしょう?だから先生たちも、なるべく組み合わさるようにバックアップするんだって」
「幸さん、詳しいの?」
「ううん。そうらしいって学園に来る前に常葉OBの親戚が言ってたの。私は昔の常葉学園の話を聞いてて、なんか素敵だなぁって思ったんだ。なんかほのぼのしてて。でも、今は進学校らしく結果重視してるみたい」
はふーと息をはいてから、髪を乾かし始めた幸の横で、寝巻きなのか部屋着なのかジャージにタンクトップ姿の薫が、わしわしと髪をふいている。

「もしかして幸さん、昔の常葉学園の話を聞いて受験したの?」
「そういうとこもあるなー。うちの両親が海外転勤になって、一緒に来るか残るかの話になったんだ。従姉妹がこっちに住んでるから、この辺で高校探すことになって。なら親戚から聞いたことある常葉学園が良いなって思ったの」
「従姉妹と一緒に住む話にはならなかったの?」
「それは私が困るのー!ものすごく面倒臭い、いっつもからかって来る人なんだもん。寮が良いー!寮最高っ」
ぶんぶんぶん、と首を振る様子が、可愛いが一生懸命だ。その人が本当に嫌なんだろう。
しかし、知っていて常葉学園に来た幸さんは、助言者メンター制度について、どう思っているんだろう?
私は幸さんを見た。

「幸さんは、ペアになってくれる助言者メンターが欲しい?」
「ほへ?うーん。欲しいかなぁ。えへへ。実はちょっと憧れてるの。でも、来年上級生に進級して助言者メンターになれる自信ないから、誰からも選ばれない気がする」
そう言うととほほ、と肩を落とす。見てない耳やら尻尾が、垂れたみたいでなんだか撫でたい気持ちになった。
「幸さんは大丈夫みたいな気がする」
「私も」
小動物は可愛がられるはずだ。
思わず言葉にすると薫さんも深々と頷く。
幸は意味が分からなかったらしく、柚鈴と薫さんの顔をえ?え?え?と見比べてる。

短髪のため、ドライヤーをざっくり使って終わらせた薫さんは、立ち上がった。荷物をまとめ、さっさと出ようとしたのを幸さんが引き止める。
「行っちゃうの?」
なんとも悲しげな目で見られて薫さんは固まった。
捨てられた子犬みたいな目だ。
捨てるか?拾うか?のような決断を迫られているようだ。

結果、薫さんは小さくため息をついて、幸さんが使っていたドライヤーを奪う。
「遅い」
捨て犬を拾う、もとい待つことに決めたらしい薫さんはヤケクソのように、勢いよくドライヤーで幸さんの髪をくしゃくしゃにしながら乾かしていく。
「はわわわわ」
子犬こと、幸さんのおかしな声が聞こえる。
とても面白いがこれを見ていたら、私が遅くなってしまう。
2人が戯れてる間に、柚鈴も自分の髪を乾かしてしまった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

処理中です...