拝啓、お姉さまへ

一華

文字の大きさ
27 / 282
第一章 4月

お姉さま、入学式です ★3★

しおりを挟む
「はぅー。素敵」
幸が幸せそうに声を漏らす。
もちろん、柚鈴も同じ心境だ。

教室は常葉学園は理事が変わって以来「東・西・南・北」を呼称に使った6クラス
特待生を含めた、勉強に力を入れる特進科の東組
いわゆる普通科で、一般教養や特別授業など、多様な授業が盛り込まれる、昔ながらの常葉学園の特色が1番強く残っている北西・南西・西組
スポーツ特待制度などを使用した体育授業に力を入れた南組
芸術・美術に力を入れた北組

それぞれクラス別に受験をしているので、入学式以降にクラス分けが行われるのは普通科の「北西組」「南西組」「西組」3クラスだけだ。

柚鈴と幸は東組
薫は南組
花奏はクラス分けを確認して南西組
と言う風になった。
「薫や花奏ちゃんとは違うクラスなんだね。寂しいなぁ」
幸が言うと、薫はフッと笑う。
「柚鈴と一緒だから良かったじゃない。あんたが東組だってことは私には疑問だけどね」
「酷いっ。でも本当にギリギリだったんだよ。特進クラスはもしかしたら入れるかも知れないけど、特待生は絶対無理だって中学の先生に言われたもん」
とほほと肩を落とす。
「でもそこには入れないと、私立だしお金掛かっちゃうでしょう?別の学校に行くなら寮もないし。特進科入れなかったら、従姉妹と一緒に住みなさいって言われてたから頑張ったの!」
「幸ちゃん、どれだけ従姉妹の人が嫌なの?」
度々出てくる『従姉妹』の話に思わず笑って聞くと、幸はどこか疲れたような笑顔を見せた。
「イヤというか、なんというか」

幸は曖昧に笑ってみせた。
親戚もほとんどいない柚鈴からすると、幸は親戚が多いようで、常葉学園OGである人とか、従姉妹とか、良く話に出てきて羨ましい。
従姉妹のことも心底嫌ってるわけでもなさそうだし、みんな仲が良さそうだ。
元々、人懐こいタイプだし、幸みたいな性格だったら、志奈さんともすぐ打ち解けたかもしれないと思ったりもするくらいだ。
もちろん柚鈴の知らない事情があるのかもしれないけれど、本当に深刻に悩んでいる風でもないことは、なんとなくわかっていた。

はっきりとした答えを言わない幸に、花奏はからかうように声をかけた。
「まーまー。幸ちゃんも来年は私と同じ西3クラスのどこかにいるかもしれないし」
「えぇ!?花奏ちゃん、それどういう意味?」
「西3クラスはいいよー。常葉学園の昔からの特色を一番強く残してるのは、やっぱり西3クラスだもん。高校3年間は一度しかないから、楽しまなきゃ」
幸の悲鳴のような質問を、笑顔で畳み込んで花奏は楽しそうだ。
「酷いよ、花奏ちゃん。冗談にもならないよ」
口を尖らせた幸に、思わず笑ってしまうと、今度は柚鈴の方に恨みがましい目線を向けられてしまう。慌てて視線を花奏に向けた。

「そう言えば、花奏ちゃん。南組は考えなかったの?」
「ぜんぜん」
明るくさっぱりと否定される。
「私はスポーツは部活だけでいいのよ。普通科にいれば、選択授業の幅も広がるし。色々挑戦したいしね」
「私は勉強はほどほどでいいから、理解できないや」
薫は笑って軽く首を振ると、案内板を見て、自分の教室の場所を確認する。
「んじゃ、私は自分の教室行くわ」
薫が言い出すと、花奏もくるりと方向転換した。
「私も行くね。じゃあねー」

薫と花奏はそれぞれ自分たちの教室に行ってしまった。
あとに残された幸に目を向けると
「柚鈴ちゃん、勉強ついて行けなくなったら、教えてね」
「もちろんだよ。一緒に頑張ろう」
すでに不安の固まりになってる幸を、笑って落ち着かせる。

いや、私もすごく余裕ないのだけど、ここは請け負うのが正解、だよね?
心の中だけで、汗を感じた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

処理中です...