拝啓、お姉さまへ

一華

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第一章 4月

お姉さま、入学式です ★5★

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「志奈さん、なんなんですか?その格好は」
学園近くの喫茶店に入るなり、柚鈴は疑問を口に出していた。
まるで変装でもしているようなスーツにも帽子にもサングラスにも違和感を覚えて仕方ない。
「ふふ。私は常葉学園では有名人らしいから、目立たないようにしてみました」
「別の意味で目立ってたけどねぇ」
案内された席につきながら、志奈さんにもだけど、クスクスと笑うお母さんにもガックリしてしまう。
よく見たら、志奈さんが着ているスーツもお母さんのものだ。
2人で楽しみながら今日を迎え、過ごしたということだろう。

色々言いたげな顔をしているであろう私を見ながら、流石に室内ということで、帽子とサングラスを外した志奈さんは拗ねたように口を尖らせる。
「だって、常葉学園の入学式の写真は、卒業アルバムにも載るのよ。柚鈴ちゃんの写真に残りたかったもの」
「なんですか、その理由」
反射的に悪態が口に出るが、内心はナルホド、と納得する。
それは確かに志奈さんはこだわるだろう。

ひとまず、注文することにして、メニューを志奈さんに見せた。
お母さんはアメリカン、柚鈴はアイスコーヒーがお決まりだ。
志奈さんは甘党だから、迷うだろうなと思って見ていると、案の定ケーキセットを見ながら考えこむ。
「イチゴのショートケーキと桜のモンブラン、悩むなぁ」
「両方食べても良いのよ?」
真剣に悩みこむ志奈さんに声を掛けるお母さんは、恐らく甘い物を欲しがる志奈さんが新鮮なんだろう。
柚鈴はあまりデザートの類に興味がなかったし、お母さんもそうだ。

「いや、そこで両方頼むのは、心が痛みます」
真剣に答えながらも、選ぶために目を輝かせている志奈さんは子供みたいだ。

つい頬が緩み、水を飲んで間を持たせた。
悩みきった志奈さんは、すがるように柚鈴を見てくる。
「柚鈴ちゃん、どっちなら一口食べる?」
「え?どっちも要りません」
「えー」
えー、ではない。不満そうに言われて困ってしまう。
「強いていうなら、イチゴなら食べても良いですけど、イチゴのショートケーキのイチゴ食べたら、意味ないでしょう?」
「あら、イチゴなら良いの?じゃあイチゴのショートケーキにするわ」
にっこり笑って、注文をお願いしてしまった。

い、良いんだ。
当然、諦めるだろうと思っていたので、驚いてしまった。
「本当仲良し姉妹ねぇ」
「そうでしょう?」
なんだか嬉しそうなお母さんと志奈さんの言葉に、はっ!となる。
「何言ってるの、2人で!」
めいいっぱい抗議の意味を込めて言うと。
「まだまだ片想いのようです」
「あらまぁ」
わざとらしく悲しげに志奈さんが言って、お母さんが面白そうに笑っている。

もはや2人はすっかり馴染んでいるみたいだった。
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