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第一章 4月
お姉さま、事件です ★6★
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「で、一番大切な解決策はどうしましょうか?」
遥先輩が問うと、凛子先輩は目を一度伏せてから、ゆっくり開いた。
「前年度の陸上部部長に、うまく収めて貰えると一番良いのでしょうね」
「前年度の?緋村先輩ってこと?」
遥先輩はその人物がすぐ思い当たったようで露骨に顔をしかめた。
「何よ、遥。その顔」
「緋村先輩は無理でしょう」
「難しいのは分かっているわ。でも緋村先輩を説得するのがやっぱり一番確実なのよ。まあ緋村先輩は常葉大学にはいらっしゃらなかったはずだから、すぐに連絡がつくかも分からないけど」
遥先輩は多少不安を感じたように肩を竦めた。
「色々、前途多難ね。じゃあ凛子はその方向で頑張ってちょうだい」
それから少しだけ悪戯めいて笑う。
「連絡がつかなかったら、凛子が同級生に心を込めて説得にあたるという、珍しい光景を見れるというわけね」
「遥…」
その表情に困ったような顔をすると、遥先輩は少しだけ真面目な顔をした。
「有沢さんみたいな運動部の方が相手じゃ、私の説得は逆効果だもの。緋村先輩がダメだった時のことも私は考えるから、まず凛子は凛子で動いてみて」
「もちろん、精一杯頑張るわ」
凛子先輩は肩を竦めてみせた。
なんだかんだで信頼しあっているのだろう。そのことが見てとれて、ほっとしてしまった。
遥先輩はそれじゃあと薫を見た。
「薫さん、寮長として貴女の部活動を三日間禁じます。貴女は部活でトラブルを起こし、寮の雰囲気を著しく損ないました。よって放課後は明日から三日間、寮での清掃活動をし、寮の風紀向上に努めなさい。よろしくて?」
ツインテールを揺らして宣言すると、凛子先輩は苦笑した。
寮長権限。ほとんど実施されることがない形だけの決まりの一つを持ち出した遥先輩の取って付けた言い方のせいだろう。
だが頷いて承諾してみせる。
「多少無理があるけど、まあいいわ」
「無理は承知よ。でも寮長権限は確かに存在するんだから使えるでしょう?」
「ええ。部活動禁止については私が明日、陸上部顧問の先生と話をしておくわ」
それから、改めて薫を見る。
「この件はどうにか収めるように努力するわ。精一杯ね。だから一つ、言っておかなければならないことがあるの」
「はい」
薫が神妙に返事をすると凛子先輩ははっきりと言った。
「そもそもは貴女自身にも原因の一端はある、とも私は思っているわ」
「原因の一端?」
薫は一度呟いてから凛子先輩を見つめた。
「それはなんだと思われますか?」
「そうね。物事をシンプルに考えすぎたことかしら。それは良いことだとも思うけれど、こうしてあなたを困らせることもあるわ。だから今回みたいに気付くことがあれば、今後同じことにならないように工夫していってちょうだい」
「工夫ですか」
「ええ。今回のように誰かを頼ったり、何か起こった時には、一度立ち止まって考えてみたりしても良いかもしれない。なんでも良いから変化を起こしてみるの。必要ないと思うのなら、別にそれでも良いと思うわ」
薫は少し考えてから頷いた。
そして2人の先輩に頭を下げた。
「ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします」
遥先輩が問うと、凛子先輩は目を一度伏せてから、ゆっくり開いた。
「前年度の陸上部部長に、うまく収めて貰えると一番良いのでしょうね」
「前年度の?緋村先輩ってこと?」
遥先輩はその人物がすぐ思い当たったようで露骨に顔をしかめた。
「何よ、遥。その顔」
「緋村先輩は無理でしょう」
「難しいのは分かっているわ。でも緋村先輩を説得するのがやっぱり一番確実なのよ。まあ緋村先輩は常葉大学にはいらっしゃらなかったはずだから、すぐに連絡がつくかも分からないけど」
遥先輩は多少不安を感じたように肩を竦めた。
「色々、前途多難ね。じゃあ凛子はその方向で頑張ってちょうだい」
それから少しだけ悪戯めいて笑う。
「連絡がつかなかったら、凛子が同級生に心を込めて説得にあたるという、珍しい光景を見れるというわけね」
「遥…」
その表情に困ったような顔をすると、遥先輩は少しだけ真面目な顔をした。
「有沢さんみたいな運動部の方が相手じゃ、私の説得は逆効果だもの。緋村先輩がダメだった時のことも私は考えるから、まず凛子は凛子で動いてみて」
「もちろん、精一杯頑張るわ」
凛子先輩は肩を竦めてみせた。
なんだかんだで信頼しあっているのだろう。そのことが見てとれて、ほっとしてしまった。
遥先輩はそれじゃあと薫を見た。
「薫さん、寮長として貴女の部活動を三日間禁じます。貴女は部活でトラブルを起こし、寮の雰囲気を著しく損ないました。よって放課後は明日から三日間、寮での清掃活動をし、寮の風紀向上に努めなさい。よろしくて?」
ツインテールを揺らして宣言すると、凛子先輩は苦笑した。
寮長権限。ほとんど実施されることがない形だけの決まりの一つを持ち出した遥先輩の取って付けた言い方のせいだろう。
だが頷いて承諾してみせる。
「多少無理があるけど、まあいいわ」
「無理は承知よ。でも寮長権限は確かに存在するんだから使えるでしょう?」
「ええ。部活動禁止については私が明日、陸上部顧問の先生と話をしておくわ」
それから、改めて薫を見る。
「この件はどうにか収めるように努力するわ。精一杯ね。だから一つ、言っておかなければならないことがあるの」
「はい」
薫が神妙に返事をすると凛子先輩ははっきりと言った。
「そもそもは貴女自身にも原因の一端はある、とも私は思っているわ」
「原因の一端?」
薫は一度呟いてから凛子先輩を見つめた。
「それはなんだと思われますか?」
「そうね。物事をシンプルに考えすぎたことかしら。それは良いことだとも思うけれど、こうしてあなたを困らせることもあるわ。だから今回みたいに気付くことがあれば、今後同じことにならないように工夫していってちょうだい」
「工夫ですか」
「ええ。今回のように誰かを頼ったり、何か起こった時には、一度立ち止まって考えてみたりしても良いかもしれない。なんでも良いから変化を起こしてみるの。必要ないと思うのなら、別にそれでも良いと思うわ」
薫は少し考えてから頷いた。
そして2人の先輩に頭を下げた。
「ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします」
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