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第一章 4月
私の居場所 ★3★
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ようやく顔を上げることが出来た。
そこには、にっこり笑った幸の顔が待っていた。
だけでなく。
ちょうど幸は携帯のカメラで、部誌の志奈さんのページを撮ろうとしているところだった。
「な、何してるの?!」
「へ?だって柚鈴ちゃん、この部誌は文芸部保存用で持ち出し禁止なんだよ!」
「それは知ってるよ。分かってるけど」
慌てる意味が全く分かって貰えず、柚鈴は、さっきまで感じていた幸せの余韻に浸る暇もない。
「ほら、このページ。志奈さんの好きな色とか食べ物とか、貰って嬉しいプレゼントとか色々書いてあるじゃない?いつ柚鈴ちゃんに必要になるか分からないと思って」
「そ、そんなの必要になるか分からないじゃない!」
「必要になってから慌てないように、柚鈴ちゃんをサポートしたいんだよ」
その目がキラキラしていて、楽しんでいるようにしか思えないんだけど。
なるだけ冷静に問題点を指摘する。
「そもそも学園内の携帯使用は禁止事項でしょう」
「そうだよ。写真撮ったらすぐ電源切らなきゃ」
「そういう話じゃない気がするんだけど」
「うん。だから内緒ね」
へらっと笑ってみせた幸ちゃんは最強に見えた。
も、もう言えることがない。
柚鈴は諦めるように、息を吐いた。
何せ、幸の行動は善意なのだ。
善意ほど、恐ろしい無敵の動機はないかもしれない。
写真を撮り終えて、電源を切った幸は、見逃しがないか、もう一度部誌を眺めている。
そこで何か発見したように、息を飲んだ。
「見てみて。この人」
志奈さんのページから、遡って何人めかの特集。
陸上部部長、緋村楓と書かれている。
「昨年度の部長さんだよね」
「だと思う」
常葉学園の体操着で走っている写真が一枚大きく使われていて、横には見出しがついている。
『厳しい指導で数多くの後輩を育て上げた陸上部の名部長』
その言葉を裏付けるように、後輩達を集めて何やら言葉を投げかけている写真や、熱心に後輩の記録を取っている写真が添えられている。
「なんだか、厳しそうな人だね」
幸が呟くのに、思わず即、頷いてしまう。
写真を見ただけでも、緊張感が伝わってくる気がして、とても優しそうには見えない。
凛子先輩はこの人に事態の収拾をお願いしたいと言っていたのだ。
大丈夫なんだろうか。
「なんとかなるといいね」
「うん」
心配になると、昨日の薫を思い出してしまう。
いつも飄々としていた薫があんな風な顔をするなんて思ってもいなかった。
「なんかさ」
「うん?」
「薫になにかしてあげれることないのかな」
「うん...うーん」
幸は頷いてから考えるように唸った。
そして思いついたようにこちらを見て、いたずらっぽく笑う
思わずその答えを期待して、柚鈴は待った。
「とりあえずは一緒に清掃活動、とかじゃないのかな」
一緒に清掃活動。
そう言われて顔を見合わせて。
なるほどな、と思って笑ってしまった。
そこには、にっこり笑った幸の顔が待っていた。
だけでなく。
ちょうど幸は携帯のカメラで、部誌の志奈さんのページを撮ろうとしているところだった。
「な、何してるの?!」
「へ?だって柚鈴ちゃん、この部誌は文芸部保存用で持ち出し禁止なんだよ!」
「それは知ってるよ。分かってるけど」
慌てる意味が全く分かって貰えず、柚鈴は、さっきまで感じていた幸せの余韻に浸る暇もない。
「ほら、このページ。志奈さんの好きな色とか食べ物とか、貰って嬉しいプレゼントとか色々書いてあるじゃない?いつ柚鈴ちゃんに必要になるか分からないと思って」
「そ、そんなの必要になるか分からないじゃない!」
「必要になってから慌てないように、柚鈴ちゃんをサポートしたいんだよ」
その目がキラキラしていて、楽しんでいるようにしか思えないんだけど。
なるだけ冷静に問題点を指摘する。
「そもそも学園内の携帯使用は禁止事項でしょう」
「そうだよ。写真撮ったらすぐ電源切らなきゃ」
「そういう話じゃない気がするんだけど」
「うん。だから内緒ね」
へらっと笑ってみせた幸ちゃんは最強に見えた。
も、もう言えることがない。
柚鈴は諦めるように、息を吐いた。
何せ、幸の行動は善意なのだ。
善意ほど、恐ろしい無敵の動機はないかもしれない。
写真を撮り終えて、電源を切った幸は、見逃しがないか、もう一度部誌を眺めている。
そこで何か発見したように、息を飲んだ。
「見てみて。この人」
志奈さんのページから、遡って何人めかの特集。
陸上部部長、緋村楓と書かれている。
「昨年度の部長さんだよね」
「だと思う」
常葉学園の体操着で走っている写真が一枚大きく使われていて、横には見出しがついている。
『厳しい指導で数多くの後輩を育て上げた陸上部の名部長』
その言葉を裏付けるように、後輩達を集めて何やら言葉を投げかけている写真や、熱心に後輩の記録を取っている写真が添えられている。
「なんだか、厳しそうな人だね」
幸が呟くのに、思わず即、頷いてしまう。
写真を見ただけでも、緊張感が伝わってくる気がして、とても優しそうには見えない。
凛子先輩はこの人に事態の収拾をお願いしたいと言っていたのだ。
大丈夫なんだろうか。
「なんとかなるといいね」
「うん」
心配になると、昨日の薫を思い出してしまう。
いつも飄々としていた薫があんな風な顔をするなんて思ってもいなかった。
「なんかさ」
「うん?」
「薫になにかしてあげれることないのかな」
「うん...うーん」
幸は頷いてから考えるように唸った。
そして思いついたようにこちらを見て、いたずらっぽく笑う
思わずその答えを期待して、柚鈴は待った。
「とりあえずは一緒に清掃活動、とかじゃないのかな」
一緒に清掃活動。
そう言われて顔を見合わせて。
なるほどな、と思って笑ってしまった。
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