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第一章 4月
翼を得た者 ★4★ 陸上部のお姉さま
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「どうして急に、そんなこと考えたんですか?」
そう聞くと智子さんは、うーんと悩むように目を閉じた。
「いや、最初はね。もっと違う話をする気だったの。でもここに来るまでに色々考えてさ。思ったんだ」
「はい」
「私はね。陸上部の家系なんて、ちっとも興味ない。今の子達にアドバイスする気も全くない」
きっぱりと言ってから、智子さんはミルクティーをゴクゴクと飲んだ。
それから、私を見てにっこりと笑う。
「でもさ。出来れば楓とは、大学違ってもずっと仲良く親しい間柄でいたいなって思ってるよ」
「私と、ですか?」
「うん。高等部卒業してからも、ずっと絵ハガキくれたでしょう?楓、そういうの下手くそなくせに」
下手くそと言われて、曖昧に笑うしかない。
「でも、嬉しかった。楓をメンティにした時と変わらず嬉しかったよ」
「本当ですか?」
「本当だよ。だからね。私はそういう関係がずっと、ずーっと続く気がしてた」
智子さんは急に真顔になった。
こちらをじぃっと見つめてくる。
「でも、気がしてたじゃダメだった。もう高校とは違う。私たちにはもう関係を繋いでるバッチがないんだもん。だから、ちゃんと楓の気持ちを聞かなきゃいけないんだって気付いたの」
「私の気持ち?」
「そうだよ。大学も違うし、私は楓より凄い先輩じゃないし、物足りないかもしれないけど、私は楓と仲良くしていたい。だから、どんな風にこれからを作るのか、作らないのか。ちゃんと2人で決めなきゃダメじゃない?」
そう言われて、これからも智子さんを大好きでもいいんだって言われてるみたいで。
なんだかとても嬉しくて嬉しくて。
涙が出そうになって、空を見上げた。
でも、泣かないと決めて、ぐっと堪えた。
卒業式の日、智子さんの前で泣いて後悔したから、もう泣きたくなかった。
「私」
代わりになる言葉を探して、口にすると、智子さんは何?と聞き返した。
「私、智子さんにいつも励まされてました。智子さんに褒められると嬉しくて。なんかそれがあるとめちゃくちゃ頑張れたし、それがないと本調子が中々出なくて」
「そうなの?」
智子さんは心底驚いた様子で目を見開いた。
本当です、と言ってから、ああ、と声が漏れた。
「私、常葉学園の大学部に行けば良かったなぁ」
「はあ?」
なによ、今更と言われて。そうだなって思う。
それについては今更だ。後悔したって遅い。
智子さんは急ににぃっと悪い笑みを浮かべた
「そうよ。楓は常葉学園の大学部に来るべきだったのよ。そしたらその口から二度と「お姉さま」なんて言わせないし、『ともちゃん』を強要してやったんだから」
「あぁ、いやその」
思わず口ごもりながら。
智子さんのその言葉に今までつかえていたものが、取れた気がした。
ずっとあった重苦しいものが、どこかに消えてしまった。
私はふっと笑ってしまう。
「いつか『ともちゃん』も努力します」
「本当に?絶対だよ!?」
「はい」
『ともちゃん』なんて恐れ多い、とんでもないとずっと思っていたが、智子さんの話を聞いてたらなんだかそれも良いかなと思えてきた。
『お姉さま』と呼べて嬉しかった気持ちにも嘘はない。
だけど、そのどちらにも特別な気持ちがあるのなら、『ともちゃん』と呼ぶ努力をしてもいいかもしれないって思えた。
自慢のメンティだった。
そう思ってもらえていたことがとても嬉しかった。
私はようやく、野菜ジュースを開けて、一口飲んだ。
そう聞くと智子さんは、うーんと悩むように目を閉じた。
「いや、最初はね。もっと違う話をする気だったの。でもここに来るまでに色々考えてさ。思ったんだ」
「はい」
「私はね。陸上部の家系なんて、ちっとも興味ない。今の子達にアドバイスする気も全くない」
きっぱりと言ってから、智子さんはミルクティーをゴクゴクと飲んだ。
それから、私を見てにっこりと笑う。
「でもさ。出来れば楓とは、大学違ってもずっと仲良く親しい間柄でいたいなって思ってるよ」
「私と、ですか?」
「うん。高等部卒業してからも、ずっと絵ハガキくれたでしょう?楓、そういうの下手くそなくせに」
下手くそと言われて、曖昧に笑うしかない。
「でも、嬉しかった。楓をメンティにした時と変わらず嬉しかったよ」
「本当ですか?」
「本当だよ。だからね。私はそういう関係がずっと、ずーっと続く気がしてた」
智子さんは急に真顔になった。
こちらをじぃっと見つめてくる。
「でも、気がしてたじゃダメだった。もう高校とは違う。私たちにはもう関係を繋いでるバッチがないんだもん。だから、ちゃんと楓の気持ちを聞かなきゃいけないんだって気付いたの」
「私の気持ち?」
「そうだよ。大学も違うし、私は楓より凄い先輩じゃないし、物足りないかもしれないけど、私は楓と仲良くしていたい。だから、どんな風にこれからを作るのか、作らないのか。ちゃんと2人で決めなきゃダメじゃない?」
そう言われて、これからも智子さんを大好きでもいいんだって言われてるみたいで。
なんだかとても嬉しくて嬉しくて。
涙が出そうになって、空を見上げた。
でも、泣かないと決めて、ぐっと堪えた。
卒業式の日、智子さんの前で泣いて後悔したから、もう泣きたくなかった。
「私」
代わりになる言葉を探して、口にすると、智子さんは何?と聞き返した。
「私、智子さんにいつも励まされてました。智子さんに褒められると嬉しくて。なんかそれがあるとめちゃくちゃ頑張れたし、それがないと本調子が中々出なくて」
「そうなの?」
智子さんは心底驚いた様子で目を見開いた。
本当です、と言ってから、ああ、と声が漏れた。
「私、常葉学園の大学部に行けば良かったなぁ」
「はあ?」
なによ、今更と言われて。そうだなって思う。
それについては今更だ。後悔したって遅い。
智子さんは急ににぃっと悪い笑みを浮かべた
「そうよ。楓は常葉学園の大学部に来るべきだったのよ。そしたらその口から二度と「お姉さま」なんて言わせないし、『ともちゃん』を強要してやったんだから」
「あぁ、いやその」
思わず口ごもりながら。
智子さんのその言葉に今までつかえていたものが、取れた気がした。
ずっとあった重苦しいものが、どこかに消えてしまった。
私はふっと笑ってしまう。
「いつか『ともちゃん』も努力します」
「本当に?絶対だよ!?」
「はい」
『ともちゃん』なんて恐れ多い、とんでもないとずっと思っていたが、智子さんの話を聞いてたらなんだかそれも良いかなと思えてきた。
『お姉さま』と呼べて嬉しかった気持ちにも嘘はない。
だけど、そのどちらにも特別な気持ちがあるのなら、『ともちゃん』と呼ぶ努力をしてもいいかもしれないって思えた。
自慢のメンティだった。
そう思ってもらえていたことがとても嬉しかった。
私はようやく、野菜ジュースを開けて、一口飲んだ。
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