75 / 282
第一章 4月
お姉さまと一緒に ★4★
しおりを挟む
寝る前に、遅いだろかと思いつつ、その後の報告をしたいからと電話の許可を求めるメールを志奈さんに送ったら、すぐに電話が掛かってきた。
「あの、志奈さんの言う通り、丸く収まりました。ありがとうございます」
『そう、良かった』
「それで薫が、志奈さんと真美子さんにお礼がしたいと言ってて」
「お礼?」
志奈さんは不思議そうに言った。
『私には必要ないわ。元々柚鈴ちゃんが困ってたら助けたいって思ってたから、それがその通りに出来て満足よ』
あっさりと言われて、柚鈴は曖昧に笑う。
「ま、まぁ、志奈さんには私もお礼をしたい気持ちがあるので、何かさせてください」
『そうなの?うーん』
志奈さんは少し困ったように考えた。
てっきり喜んで、色々考えるかと思っていたので、拍子抜けしてしまう。
『なんというか、今回の件は柚鈴ちゃんと喫茶店でケーキも食べれたし、満足しちゃっているのよね』
「あ、あれで良いんですか?」
『良いも悪いも、別に大して働いてないから、ピンと来なくて』
志奈さんは欲がない言い方だ。
今回の件を解決したのに、大して働いてない、と言ってしまえる志奈さん。
もしかしてすごく経験値が高いのかもしれない。
志奈さんはそうねぇ、と考えてから何か思いついたように声を明るくした。
『柚鈴ちゃん、GWには帰って来るんでしょう?なら、そこで何か私と姉妹らしいことをしましょう』
「姉妹らしいこと、ですか?」
『そう。それを柚鈴ちゃんが考えてくれることが私へのお礼ってことでどうかしら?思いつかなければ、その友達にも相談して考えて?それなら皆んな、私にお礼をしたことになるわ』
「な、なるほど」
随分アバウトなお願いだったが、それなら確かに薫も参加出来る。
どうせ家に帰ったら志奈さんに戯れられるんだから、最初から計画しておくのも悪くない気がした。
なにか、私もズレてきただろうか?
一抹の不安もよぎったが、気にしないことに、今回はする。
「じゃあ後は、真美子さんが喜びそうなお礼とか、心当たりありませんか?」
『真美子?真美子は簡単よ』
「そうなんですか?」
『生徒会が困るようなことがあったら、助けてあげてちょうだい。真美子はね、あれで後輩想いなの。特に生徒会では真美子なりに色々頑張っていたから、そうしてくれることが一番のお礼になるわ』
「わかりました。そうします」
『うん。よろしくね』
志奈さんの方は、現生徒会の為というより、真美子さんの為に頼んでいる気がした。
後輩の為には頼まないが、真美子さんの為には頼む、ということ?
友達想いなのかな?
この辺りの関係はいまいち良く分からないが、これから少しずつ分かって来るだろう。
そう、これから。
なんだかそう考えると温かい気持ちになってきた。
「志奈さん」
『なあに?』
「私、ちょっと志奈さんの妹になれて良かったなって思ってきました」
『……』
てっきりすぐに歓声でも上げるかと思ったら、志奈さんは聞こえてなかったのかと思うくらい黙りこんだ。
「あの、志奈さん」
『……』
問いかけるけど、返事がない。
電波状況が悪いのかと、窓の近くに進んでいくと、ようやく志奈さんの声が聞こえた。
『ありがとう』
ただ、それだけの言葉だった。
けど、志奈さんの気持ちが伝わって来る気がした。
志奈さんはなんだかとても掴み所がなくて、私を振り回しているけれど、もしかしたら志奈さんも案外一生懸命なのかもしれない。
なんだかそんな風にも思えて来た。
この人が、私のお姉さん
まだまだぎこちないけれど、最初の一歩を踏み出した四月だった
「あの、志奈さんの言う通り、丸く収まりました。ありがとうございます」
『そう、良かった』
「それで薫が、志奈さんと真美子さんにお礼がしたいと言ってて」
「お礼?」
志奈さんは不思議そうに言った。
『私には必要ないわ。元々柚鈴ちゃんが困ってたら助けたいって思ってたから、それがその通りに出来て満足よ』
あっさりと言われて、柚鈴は曖昧に笑う。
「ま、まぁ、志奈さんには私もお礼をしたい気持ちがあるので、何かさせてください」
『そうなの?うーん』
志奈さんは少し困ったように考えた。
てっきり喜んで、色々考えるかと思っていたので、拍子抜けしてしまう。
『なんというか、今回の件は柚鈴ちゃんと喫茶店でケーキも食べれたし、満足しちゃっているのよね』
「あ、あれで良いんですか?」
『良いも悪いも、別に大して働いてないから、ピンと来なくて』
志奈さんは欲がない言い方だ。
今回の件を解決したのに、大して働いてない、と言ってしまえる志奈さん。
もしかしてすごく経験値が高いのかもしれない。
志奈さんはそうねぇ、と考えてから何か思いついたように声を明るくした。
『柚鈴ちゃん、GWには帰って来るんでしょう?なら、そこで何か私と姉妹らしいことをしましょう』
「姉妹らしいこと、ですか?」
『そう。それを柚鈴ちゃんが考えてくれることが私へのお礼ってことでどうかしら?思いつかなければ、その友達にも相談して考えて?それなら皆んな、私にお礼をしたことになるわ』
「な、なるほど」
随分アバウトなお願いだったが、それなら確かに薫も参加出来る。
どうせ家に帰ったら志奈さんに戯れられるんだから、最初から計画しておくのも悪くない気がした。
なにか、私もズレてきただろうか?
一抹の不安もよぎったが、気にしないことに、今回はする。
「じゃあ後は、真美子さんが喜びそうなお礼とか、心当たりありませんか?」
『真美子?真美子は簡単よ』
「そうなんですか?」
『生徒会が困るようなことがあったら、助けてあげてちょうだい。真美子はね、あれで後輩想いなの。特に生徒会では真美子なりに色々頑張っていたから、そうしてくれることが一番のお礼になるわ』
「わかりました。そうします」
『うん。よろしくね』
志奈さんの方は、現生徒会の為というより、真美子さんの為に頼んでいる気がした。
後輩の為には頼まないが、真美子さんの為には頼む、ということ?
友達想いなのかな?
この辺りの関係はいまいち良く分からないが、これから少しずつ分かって来るだろう。
そう、これから。
なんだかそう考えると温かい気持ちになってきた。
「志奈さん」
『なあに?』
「私、ちょっと志奈さんの妹になれて良かったなって思ってきました」
『……』
てっきりすぐに歓声でも上げるかと思ったら、志奈さんは聞こえてなかったのかと思うくらい黙りこんだ。
「あの、志奈さん」
『……』
問いかけるけど、返事がない。
電波状況が悪いのかと、窓の近くに進んでいくと、ようやく志奈さんの声が聞こえた。
『ありがとう』
ただ、それだけの言葉だった。
けど、志奈さんの気持ちが伝わって来る気がした。
志奈さんはなんだかとても掴み所がなくて、私を振り回しているけれど、もしかしたら志奈さんも案外一生懸命なのかもしれない。
なんだかそんな風にも思えて来た。
この人が、私のお姉さん
まだまだぎこちないけれど、最初の一歩を踏み出した四月だった
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる