77 / 282
第二章 5月‐序
GWに待っているもの ★2★
しおりを挟む
『春に籍を入れてから、柚鈴ちゃんがすぐに寮に入って、あまり家にいなかったじゃない?お父様ったら仕事で入学式にも行けなかったし、なんだか焦ってきたみたいで』
「はぁ」
そういえば、確かに最初は入学式に行きたいと言ってた気がした。
すぐに難しいことが決まり、あまり気にしていなかったが、志奈さんの口ぶりだとオトウサンはかなり気にしていたようだ。
『柚鈴ちゃんが帰ってくるGWに合わせて休みが取れるようにって、この一週間ずぅっと残業して仕事を詰め込んでいるの』
「え!?と、止めてくださいよ」
『私が止めても逆効果なのよ。入学式にも行ったし、その他でも会ったことをお母さんに話していたら、耳に入っちゃったみたいで』
逆効果、ということは、志奈さんにライバル意識でも燃やしているということだろうか。
あんまり想像できないが、羨ましく思っているというのはあるんだろう。
だからと言って実の娘が逆効果とはどういうことだ。
『今日も朝早くに出て、当然まだ帰ってきてないから、なんだか逆に柚鈴ちゃんが心配になっちゃって』
「そこで志奈さんも、オトウサンの心配はしないんですか...」
『しないわけでもないけど、優先順位があるもの』
どうしてこう、はっきり物事を言う人なんだろう。
悪気もないし、柚鈴のことを考えてくれているのは分かるのだが、オトウサンに申し訳ない気がして仕方なかった。
いや、オトウサンの方ももしかしたら大差ないのかもしれないが。
何にせよ、オトウサンは柚鈴の帰宅を志奈さんに心配されるほどに楽しみにしているらしい。
「なんだか意外です。お会いしてから、私と話していても、志奈さんみたいにはしゃいだりする人でもなかったし、大人で落ち着いている人かと思っていました」
『それも別に間違ってはいないとは思うわ。お父様って私と似ている所があるし』
「え?それってどういうことですか?」
その言い方だと、志奈さんも『大人で落ち着いた人』みたいだけど、とまでは流石に言えない。
言わなかったので、志奈さんには伝わらなかったらしい。うーんと考え込むようにしてから返事が返ってきた。
『簡単に言えば、優先順位がはっきりしているの』
繰り返した言葉を使い言うと、志奈さんは思うところがあるらしくため息をつく。
『お父様は、あの雰囲気では分かり辛いと思うけど、仕事の捌ける人なの。そのわりに偉ぶったりしないし、いつも穏やかで人の懐に上手に入るのよね』
「へぇ」
この評価は志奈さんの自己分析も入るのか分からず、適当な言葉は見つからず相槌を返す。
『別に萎縮するわけでもないけど、お父様が気が小さいと思う人も多いみたい。だから油断して、ちょっと話しすぎたりしちゃう。そういうことをちゃんと気づいて黙って受け止めておくの』
「そ、そうなんですか」
どうも志奈さんの説明するオトウサン像というのは志奈さんと似ているのだろうか?
気が小さいとは志奈さんを見て思う人はいないだろう。だとしたら、人を油断させるところがあるのだろうか?
志奈さんが言う『私と似てる』とはどう言う意味なのか聞くのが怖い気がして、というよりまだ知らない方が良い気がして、柚鈴の口は貝のようになっていた。
それに気づいたのか、志奈さんは一瞬黙ってからクスクスと笑いだした。
『本当に私もお父様もとてもシンプルな人間なのよ』
「そうだとすごく助かります」
心の底からの気持ちを伝えると、志奈さんは実に楽しそうだった。
『ふふ。何にせよ、お父様が明日はしゃいでいても、驚かないでねって言いたかったの』
志奈さんそう言うと、明日楽しみにしているわ、と電話を切った。
柚鈴は困ったように肩を竦めた。
まぁ、気にしすぎても、どうしようもないか。
そう思って机に向かうと、終わりが見えてきた課題へと集中し始めた。
「はぁ」
そういえば、確かに最初は入学式に行きたいと言ってた気がした。
すぐに難しいことが決まり、あまり気にしていなかったが、志奈さんの口ぶりだとオトウサンはかなり気にしていたようだ。
『柚鈴ちゃんが帰ってくるGWに合わせて休みが取れるようにって、この一週間ずぅっと残業して仕事を詰め込んでいるの』
「え!?と、止めてくださいよ」
『私が止めても逆効果なのよ。入学式にも行ったし、その他でも会ったことをお母さんに話していたら、耳に入っちゃったみたいで』
逆効果、ということは、志奈さんにライバル意識でも燃やしているということだろうか。
あんまり想像できないが、羨ましく思っているというのはあるんだろう。
だからと言って実の娘が逆効果とはどういうことだ。
『今日も朝早くに出て、当然まだ帰ってきてないから、なんだか逆に柚鈴ちゃんが心配になっちゃって』
「そこで志奈さんも、オトウサンの心配はしないんですか...」
『しないわけでもないけど、優先順位があるもの』
どうしてこう、はっきり物事を言う人なんだろう。
悪気もないし、柚鈴のことを考えてくれているのは分かるのだが、オトウサンに申し訳ない気がして仕方なかった。
いや、オトウサンの方ももしかしたら大差ないのかもしれないが。
何にせよ、オトウサンは柚鈴の帰宅を志奈さんに心配されるほどに楽しみにしているらしい。
「なんだか意外です。お会いしてから、私と話していても、志奈さんみたいにはしゃいだりする人でもなかったし、大人で落ち着いている人かと思っていました」
『それも別に間違ってはいないとは思うわ。お父様って私と似ている所があるし』
「え?それってどういうことですか?」
その言い方だと、志奈さんも『大人で落ち着いた人』みたいだけど、とまでは流石に言えない。
言わなかったので、志奈さんには伝わらなかったらしい。うーんと考え込むようにしてから返事が返ってきた。
『簡単に言えば、優先順位がはっきりしているの』
繰り返した言葉を使い言うと、志奈さんは思うところがあるらしくため息をつく。
『お父様は、あの雰囲気では分かり辛いと思うけど、仕事の捌ける人なの。そのわりに偉ぶったりしないし、いつも穏やかで人の懐に上手に入るのよね』
「へぇ」
この評価は志奈さんの自己分析も入るのか分からず、適当な言葉は見つからず相槌を返す。
『別に萎縮するわけでもないけど、お父様が気が小さいと思う人も多いみたい。だから油断して、ちょっと話しすぎたりしちゃう。そういうことをちゃんと気づいて黙って受け止めておくの』
「そ、そうなんですか」
どうも志奈さんの説明するオトウサン像というのは志奈さんと似ているのだろうか?
気が小さいとは志奈さんを見て思う人はいないだろう。だとしたら、人を油断させるところがあるのだろうか?
志奈さんが言う『私と似てる』とはどう言う意味なのか聞くのが怖い気がして、というよりまだ知らない方が良い気がして、柚鈴の口は貝のようになっていた。
それに気づいたのか、志奈さんは一瞬黙ってからクスクスと笑いだした。
『本当に私もお父様もとてもシンプルな人間なのよ』
「そうだとすごく助かります」
心の底からの気持ちを伝えると、志奈さんは実に楽しそうだった。
『ふふ。何にせよ、お父様が明日はしゃいでいても、驚かないでねって言いたかったの』
志奈さんそう言うと、明日楽しみにしているわ、と電話を切った。
柚鈴は困ったように肩を竦めた。
まぁ、気にしすぎても、どうしようもないか。
そう思って机に向かうと、終わりが見えてきた課題へと集中し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる