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第二章 5月‐序
GWに待っているもの ★2★
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『春に籍を入れてから、柚鈴ちゃんがすぐに寮に入って、あまり家にいなかったじゃない?お父様ったら仕事で入学式にも行けなかったし、なんだか焦ってきたみたいで』
「はぁ」
そういえば、確かに最初は入学式に行きたいと言ってた気がした。
すぐに難しいことが決まり、あまり気にしていなかったが、志奈さんの口ぶりだとオトウサンはかなり気にしていたようだ。
『柚鈴ちゃんが帰ってくるGWに合わせて休みが取れるようにって、この一週間ずぅっと残業して仕事を詰め込んでいるの』
「え!?と、止めてくださいよ」
『私が止めても逆効果なのよ。入学式にも行ったし、その他でも会ったことをお母さんに話していたら、耳に入っちゃったみたいで』
逆効果、ということは、志奈さんにライバル意識でも燃やしているということだろうか。
あんまり想像できないが、羨ましく思っているというのはあるんだろう。
だからと言って実の娘が逆効果とはどういうことだ。
『今日も朝早くに出て、当然まだ帰ってきてないから、なんだか逆に柚鈴ちゃんが心配になっちゃって』
「そこで志奈さんも、オトウサンの心配はしないんですか...」
『しないわけでもないけど、優先順位があるもの』
どうしてこう、はっきり物事を言う人なんだろう。
悪気もないし、柚鈴のことを考えてくれているのは分かるのだが、オトウサンに申し訳ない気がして仕方なかった。
いや、オトウサンの方ももしかしたら大差ないのかもしれないが。
何にせよ、オトウサンは柚鈴の帰宅を志奈さんに心配されるほどに楽しみにしているらしい。
「なんだか意外です。お会いしてから、私と話していても、志奈さんみたいにはしゃいだりする人でもなかったし、大人で落ち着いている人かと思っていました」
『それも別に間違ってはいないとは思うわ。お父様って私と似ている所があるし』
「え?それってどういうことですか?」
その言い方だと、志奈さんも『大人で落ち着いた人』みたいだけど、とまでは流石に言えない。
言わなかったので、志奈さんには伝わらなかったらしい。うーんと考え込むようにしてから返事が返ってきた。
『簡単に言えば、優先順位がはっきりしているの』
繰り返した言葉を使い言うと、志奈さんは思うところがあるらしくため息をつく。
『お父様は、あの雰囲気では分かり辛いと思うけど、仕事の捌ける人なの。そのわりに偉ぶったりしないし、いつも穏やかで人の懐に上手に入るのよね』
「へぇ」
この評価は志奈さんの自己分析も入るのか分からず、適当な言葉は見つからず相槌を返す。
『別に萎縮するわけでもないけど、お父様が気が小さいと思う人も多いみたい。だから油断して、ちょっと話しすぎたりしちゃう。そういうことをちゃんと気づいて黙って受け止めておくの』
「そ、そうなんですか」
どうも志奈さんの説明するオトウサン像というのは志奈さんと似ているのだろうか?
気が小さいとは志奈さんを見て思う人はいないだろう。だとしたら、人を油断させるところがあるのだろうか?
志奈さんが言う『私と似てる』とはどう言う意味なのか聞くのが怖い気がして、というよりまだ知らない方が良い気がして、柚鈴の口は貝のようになっていた。
それに気づいたのか、志奈さんは一瞬黙ってからクスクスと笑いだした。
『本当に私もお父様もとてもシンプルな人間なのよ』
「そうだとすごく助かります」
心の底からの気持ちを伝えると、志奈さんは実に楽しそうだった。
『ふふ。何にせよ、お父様が明日はしゃいでいても、驚かないでねって言いたかったの』
志奈さんそう言うと、明日楽しみにしているわ、と電話を切った。
柚鈴は困ったように肩を竦めた。
まぁ、気にしすぎても、どうしようもないか。
そう思って机に向かうと、終わりが見えてきた課題へと集中し始めた。
「はぁ」
そういえば、確かに最初は入学式に行きたいと言ってた気がした。
すぐに難しいことが決まり、あまり気にしていなかったが、志奈さんの口ぶりだとオトウサンはかなり気にしていたようだ。
『柚鈴ちゃんが帰ってくるGWに合わせて休みが取れるようにって、この一週間ずぅっと残業して仕事を詰め込んでいるの』
「え!?と、止めてくださいよ」
『私が止めても逆効果なのよ。入学式にも行ったし、その他でも会ったことをお母さんに話していたら、耳に入っちゃったみたいで』
逆効果、ということは、志奈さんにライバル意識でも燃やしているということだろうか。
あんまり想像できないが、羨ましく思っているというのはあるんだろう。
だからと言って実の娘が逆効果とはどういうことだ。
『今日も朝早くに出て、当然まだ帰ってきてないから、なんだか逆に柚鈴ちゃんが心配になっちゃって』
「そこで志奈さんも、オトウサンの心配はしないんですか...」
『しないわけでもないけど、優先順位があるもの』
どうしてこう、はっきり物事を言う人なんだろう。
悪気もないし、柚鈴のことを考えてくれているのは分かるのだが、オトウサンに申し訳ない気がして仕方なかった。
いや、オトウサンの方ももしかしたら大差ないのかもしれないが。
何にせよ、オトウサンは柚鈴の帰宅を志奈さんに心配されるほどに楽しみにしているらしい。
「なんだか意外です。お会いしてから、私と話していても、志奈さんみたいにはしゃいだりする人でもなかったし、大人で落ち着いている人かと思っていました」
『それも別に間違ってはいないとは思うわ。お父様って私と似ている所があるし』
「え?それってどういうことですか?」
その言い方だと、志奈さんも『大人で落ち着いた人』みたいだけど、とまでは流石に言えない。
言わなかったので、志奈さんには伝わらなかったらしい。うーんと考え込むようにしてから返事が返ってきた。
『簡単に言えば、優先順位がはっきりしているの』
繰り返した言葉を使い言うと、志奈さんは思うところがあるらしくため息をつく。
『お父様は、あの雰囲気では分かり辛いと思うけど、仕事の捌ける人なの。そのわりに偉ぶったりしないし、いつも穏やかで人の懐に上手に入るのよね』
「へぇ」
この評価は志奈さんの自己分析も入るのか分からず、適当な言葉は見つからず相槌を返す。
『別に萎縮するわけでもないけど、お父様が気が小さいと思う人も多いみたい。だから油断して、ちょっと話しすぎたりしちゃう。そういうことをちゃんと気づいて黙って受け止めておくの』
「そ、そうなんですか」
どうも志奈さんの説明するオトウサン像というのは志奈さんと似ているのだろうか?
気が小さいとは志奈さんを見て思う人はいないだろう。だとしたら、人を油断させるところがあるのだろうか?
志奈さんが言う『私と似てる』とはどう言う意味なのか聞くのが怖い気がして、というよりまだ知らない方が良い気がして、柚鈴の口は貝のようになっていた。
それに気づいたのか、志奈さんは一瞬黙ってからクスクスと笑いだした。
『本当に私もお父様もとてもシンプルな人間なのよ』
「そうだとすごく助かります」
心の底からの気持ちを伝えると、志奈さんは実に楽しそうだった。
『ふふ。何にせよ、お父様が明日はしゃいでいても、驚かないでねって言いたかったの』
志奈さんそう言うと、明日楽しみにしているわ、と電話を切った。
柚鈴は困ったように肩を竦めた。
まぁ、気にしすぎても、どうしようもないか。
そう思って机に向かうと、終わりが見えてきた課題へと集中し始めた。
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