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第二章 5月‐序
GWに待っているもの ★3★ 幸の場合
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5月のGWの始まりは、程よく快晴。
程よく、と感じるのは、まだ朝に近い午前中だからだろう。
寮で食事を終えて、常葉学園の中庭をぶらり散歩しているのは、高等部一年生の春野幸。
この日までは、友人の柚鈴と共に課題に明け暮れていたが、それは昨日までの話だ。今朝は実にのんびりしている。
きちんと制服さえ来て、生徒手帳を所持していれば、休みの日に校内に入れてもらうことは難しくはない。
平日と違い門は閉じているが、部活動などでやってくる生徒や先生のために守衛さんが常駐しているので入れてもらえるのだ。
学園自体には早くから活動している運動部もいるので、幸が一番乗りと言うわけではない。
だが中庭は十分静かで、のんびりしたかった幸には恰好の場所だった。
「GWは香苗さんのお手伝いだもんなぁ」
うきうきとした声が、つい漏れてしまう。
春野香苗さん。常葉学園がまだ体制の変わる前の卒業生である、遠縁の親戚の名前だ。
幸は実家が長野ではあるが、両親は海外転勤中。
GWに帰っても誰もいない。
ならば都内に住む従姉の家に行ってみようかと思っていたら、こっちは仕事で連日夜遅い帰宅になるらしい。
「幸ちゃん。もう少し早くいってくれたら仕事なんて断わったのに」
高校の様子を聞きたがってた従姉は心底残念そうだったが、幸も入学したばかりの高校で、休みがどうなるかなんて気が回ってなかったのだから仕方ない。
友人の柚鈴は実家に帰ると言っていたし、薫は陸上部で練習。
寮で一人はさみしいなぁ、などと思っていたところに、都内で働いている香苗さんのことを思い出した。
ブリザーブドフラワーのお店とスクールを経営していて、いつもおっとり穏やかな女性だ。
歳も一回り以上離れているし、親戚というには遠いので、頼るのには少々気がひけるのだが、幸は小さな頃からこの人が大好きだった。
好きというより憧れていると言っていい。
常葉学園の受験を考えたのも、元々は卒業生である香苗さんきっかけなのだ。
駄目元でGWに顔を出していいか、お伺いを立てたら、快く了承を得られた。
それどころか泊まっていけばいいと言ってもらえたのだ。
嬉しくて、昨日は遅くまで課題をこなしていたくせに、出発の予定より早く目が覚めてしまった。
そうして時間つぶしに選んだのが、常葉学園の散歩だったのだ。
こういう時に寮が近いってのは良いなあ。
機嫌良く、涼みながら中庭を進んだ。
いつも生徒が溢れている場所だから、のんびり見て回れることはほとんどない。
でも常葉学園の中庭の造形は実に見事なのだ。
文芸部所属の幸の想像力を刺激するには充分すぎるくらいだ。
ほわほわと、しばらく歩いていると、中庭のベンチに座っている生徒に気付いた。
日向ぼっこしているのだろうか?
長い髪は肩で横に結んで前に流していて、表情は柔らかく微笑みが浮かんでいる。
背はすらりと高いのが座っていても分かる。
ふと視線がこちらに向いた。ばっちり目があって、にっこり笑われる。
程よく、と感じるのは、まだ朝に近い午前中だからだろう。
寮で食事を終えて、常葉学園の中庭をぶらり散歩しているのは、高等部一年生の春野幸。
この日までは、友人の柚鈴と共に課題に明け暮れていたが、それは昨日までの話だ。今朝は実にのんびりしている。
きちんと制服さえ来て、生徒手帳を所持していれば、休みの日に校内に入れてもらうことは難しくはない。
平日と違い門は閉じているが、部活動などでやってくる生徒や先生のために守衛さんが常駐しているので入れてもらえるのだ。
学園自体には早くから活動している運動部もいるので、幸が一番乗りと言うわけではない。
だが中庭は十分静かで、のんびりしたかった幸には恰好の場所だった。
「GWは香苗さんのお手伝いだもんなぁ」
うきうきとした声が、つい漏れてしまう。
春野香苗さん。常葉学園がまだ体制の変わる前の卒業生である、遠縁の親戚の名前だ。
幸は実家が長野ではあるが、両親は海外転勤中。
GWに帰っても誰もいない。
ならば都内に住む従姉の家に行ってみようかと思っていたら、こっちは仕事で連日夜遅い帰宅になるらしい。
「幸ちゃん。もう少し早くいってくれたら仕事なんて断わったのに」
高校の様子を聞きたがってた従姉は心底残念そうだったが、幸も入学したばかりの高校で、休みがどうなるかなんて気が回ってなかったのだから仕方ない。
友人の柚鈴は実家に帰ると言っていたし、薫は陸上部で練習。
寮で一人はさみしいなぁ、などと思っていたところに、都内で働いている香苗さんのことを思い出した。
ブリザーブドフラワーのお店とスクールを経営していて、いつもおっとり穏やかな女性だ。
歳も一回り以上離れているし、親戚というには遠いので、頼るのには少々気がひけるのだが、幸は小さな頃からこの人が大好きだった。
好きというより憧れていると言っていい。
常葉学園の受験を考えたのも、元々は卒業生である香苗さんきっかけなのだ。
駄目元でGWに顔を出していいか、お伺いを立てたら、快く了承を得られた。
それどころか泊まっていけばいいと言ってもらえたのだ。
嬉しくて、昨日は遅くまで課題をこなしていたくせに、出発の予定より早く目が覚めてしまった。
そうして時間つぶしに選んだのが、常葉学園の散歩だったのだ。
こういう時に寮が近いってのは良いなあ。
機嫌良く、涼みながら中庭を進んだ。
いつも生徒が溢れている場所だから、のんびり見て回れることはほとんどない。
でも常葉学園の中庭の造形は実に見事なのだ。
文芸部所属の幸の想像力を刺激するには充分すぎるくらいだ。
ほわほわと、しばらく歩いていると、中庭のベンチに座っている生徒に気付いた。
日向ぼっこしているのだろうか?
長い髪は肩で横に結んで前に流していて、表情は柔らかく微笑みが浮かんでいる。
背はすらりと高いのが座っていても分かる。
ふと視線がこちらに向いた。ばっちり目があって、にっこり笑われる。
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