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第二章 5月‐序
GWに待っているもの ★4★ 幸の場合
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「ごきげんよう」
「あ、ごきげんよう」
幸は相手の挨拶に同じ言葉を返した。
このご挨拶は…
幸は北クラスか、西3クラスのどれかの生徒なのだろうと思った。
芸術系の北組と普通科である西3組は、そもそもの常葉学園の流れを汲んで、ある程度育ちの良いお嬢さまか、もしくはそういった教養を重視している生徒達が多い。
だから「ごきげんよう」の挨拶が主流である。
一方、特進科である東組と体育科とも言える南組は外部からの受験者も多く、挨拶は「おはよう」「こんにちは」が一般的。常葉学園では、この二つのタイプが何故か存在している。もちろん例外はあるのだが、大体はクラスによって分かれている。
そしてその組の生徒は進学によっても混ざることがほぼないので、特に問題なく卒業まで過ごすのだ。
ちなみに例外のほとんどは、部活動の場合のみ挨拶の仕方を変える生徒がいることだ。
だから、このどこかおっとりした、気品さえ感じる生徒は、前者に違いないと確信をした。
「1年生の方ですか?」
聞かれて幸は、はいっと返事をする。
「1年生の春野幸です」
つい東組の言葉を抜かしてしまう。今更「ごきげんよう」の組にいないというのが、気恥ずかしく感じてしまった。
もちろん特進科である東組が恥ずかしいわけではないのだが、柚鈴のように特待生ならともかく、幸は東組ギリギリ。
堂々と名乗れる程でもない。
「私は沢城悠です。2年生です。仲良くしてくださいね」
ぺこりと、上級生だと言うのに、丁寧に挨拶されてしまった。
無防備な様子で、良かったらと席を勧められる。
幸は誘われるまま、横に座った。
「幸さんはお散歩ですか?この場所は気持ち良いですからね」
柔らかく微笑まれて、優しそうな笑顔に、つい幸も誘われてにっこり笑った。
「はい、そうなんです。でもこんなに人がいない時に中庭に来たことがなかったんで、とっても素敵で驚きました」
「そうですね。確かに生徒がいる間はこんなにのんびり出来ませんよね。私も今日は可愛い下級生と話しが出来て、いつもより得した気分です」
「…」
にこにこにこ、っと幸せそうな笑顔に一瞬何故か従姉を連想させた。
この人はもしかしたら、警戒すべき相手なんだろうか?
念のため、少しだけ距離を取る。
気付くか気づかれないか程度。
だがやっぱり気づかれたらしい。
沢城先輩は一瞬悲しそうな目を見せてから、何も見なかったように前を向いた。
その様子には気づかなかった振りをすることにした。
「沢城先輩は、やっぱりお散歩ですか?」
意外な質問を受けたというように、沢城先輩は一瞬目を見開いてから笑った。
「お散歩というか用があって来たんですが、今日は時間を間違えてしまったようで。それでここにいたんですよ」
「え?!後、どれくらいここにいるんですか?」
「家に帰るとちょっと時間が掛かるものですから。ここにいるのはもう少しのつもりでしたけど、幸さんが相手をしてくれるなら頑張れるかもしれません」
なんてことない、と言う感じで笑うので、中々大らかな人だと感心してしまった。
「私で良ければお相手しますので、気を確かにもってくださいね」
幸もそこまで沢山の時間があるわけではないのだが、気になってしまって励ますと、沢城先輩は嬉しそうに笑った。
「そろそろ寂しい気持ちにもなってきた所だったので助かります」
「さ、寂しかったんですか」
「ちょっと早く来過ぎましたね」
穏やかに笑われて、幸も流石に目を瞬かせた。
どこかおっとりしているが、素直な人だ。
そうか寂しかったのなら、さっきの言動も仕方なかったのかもしれない。思い直して元の位置に座りなおした。
沢城先輩はそれにも気づいたようで、少し嬉しそうな顔をした。
「あ、ごきげんよう」
幸は相手の挨拶に同じ言葉を返した。
このご挨拶は…
幸は北クラスか、西3クラスのどれかの生徒なのだろうと思った。
芸術系の北組と普通科である西3組は、そもそもの常葉学園の流れを汲んで、ある程度育ちの良いお嬢さまか、もしくはそういった教養を重視している生徒達が多い。
だから「ごきげんよう」の挨拶が主流である。
一方、特進科である東組と体育科とも言える南組は外部からの受験者も多く、挨拶は「おはよう」「こんにちは」が一般的。常葉学園では、この二つのタイプが何故か存在している。もちろん例外はあるのだが、大体はクラスによって分かれている。
そしてその組の生徒は進学によっても混ざることがほぼないので、特に問題なく卒業まで過ごすのだ。
ちなみに例外のほとんどは、部活動の場合のみ挨拶の仕方を変える生徒がいることだ。
だから、このどこかおっとりした、気品さえ感じる生徒は、前者に違いないと確信をした。
「1年生の方ですか?」
聞かれて幸は、はいっと返事をする。
「1年生の春野幸です」
つい東組の言葉を抜かしてしまう。今更「ごきげんよう」の組にいないというのが、気恥ずかしく感じてしまった。
もちろん特進科である東組が恥ずかしいわけではないのだが、柚鈴のように特待生ならともかく、幸は東組ギリギリ。
堂々と名乗れる程でもない。
「私は沢城悠です。2年生です。仲良くしてくださいね」
ぺこりと、上級生だと言うのに、丁寧に挨拶されてしまった。
無防備な様子で、良かったらと席を勧められる。
幸は誘われるまま、横に座った。
「幸さんはお散歩ですか?この場所は気持ち良いですからね」
柔らかく微笑まれて、優しそうな笑顔に、つい幸も誘われてにっこり笑った。
「はい、そうなんです。でもこんなに人がいない時に中庭に来たことがなかったんで、とっても素敵で驚きました」
「そうですね。確かに生徒がいる間はこんなにのんびり出来ませんよね。私も今日は可愛い下級生と話しが出来て、いつもより得した気分です」
「…」
にこにこにこ、っと幸せそうな笑顔に一瞬何故か従姉を連想させた。
この人はもしかしたら、警戒すべき相手なんだろうか?
念のため、少しだけ距離を取る。
気付くか気づかれないか程度。
だがやっぱり気づかれたらしい。
沢城先輩は一瞬悲しそうな目を見せてから、何も見なかったように前を向いた。
その様子には気づかなかった振りをすることにした。
「沢城先輩は、やっぱりお散歩ですか?」
意外な質問を受けたというように、沢城先輩は一瞬目を見開いてから笑った。
「お散歩というか用があって来たんですが、今日は時間を間違えてしまったようで。それでここにいたんですよ」
「え?!後、どれくらいここにいるんですか?」
「家に帰るとちょっと時間が掛かるものですから。ここにいるのはもう少しのつもりでしたけど、幸さんが相手をしてくれるなら頑張れるかもしれません」
なんてことない、と言う感じで笑うので、中々大らかな人だと感心してしまった。
「私で良ければお相手しますので、気を確かにもってくださいね」
幸もそこまで沢山の時間があるわけではないのだが、気になってしまって励ますと、沢城先輩は嬉しそうに笑った。
「そろそろ寂しい気持ちにもなってきた所だったので助かります」
「さ、寂しかったんですか」
「ちょっと早く来過ぎましたね」
穏やかに笑われて、幸も流石に目を瞬かせた。
どこかおっとりしているが、素直な人だ。
そうか寂しかったのなら、さっきの言動も仕方なかったのかもしれない。思い直して元の位置に座りなおした。
沢城先輩はそれにも気づいたようで、少し嬉しそうな顔をした。
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