拝啓、お姉さまへ

一華

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第二章 5月‐序

オトウサンとのお出かけ ★1★

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食事が終わると、オトウサンが真っ直ぐ柚鈴の方を見てにっこり笑った。
「僕はこれから、柚鈴ちゃんとのドライブを希望します」
「え?」
きょとんとした顔で見上げると、志奈さんも驚いたように目を見開いた。
その表情に、オトウサンは一息先に言葉を発した。
「志奈はこれから片付けするだろうし、夕飯の準備だってするんだろう?だったら、暇同士ということで柚鈴ちゃんとドライブに行ってこようと思うんだよ」
愛想の良く説明するオトウサンに、志奈さんは不満そうに眉をひそめた。
少し遅れて、柚鈴も状況を理解する。
ドライブにオトウサンは柚鈴と二人だけで行こうと提案しているのだ、と。
突然の提案に驚いてしまうのだが、その驚きもつかの間、オトウサンと志奈さんの二人で攻防を初めてしまった。
「だからってお父様と2人でなんて」
「親子の時間を連休中に欲しいと言うのは我儘かな?」
「時と状況によっては我儘だと思うわ」
「ええ、酷いなあ。2人で姉妹らしいことをする時にはどうせ僕が放っておかれることになるんだし、少しくらいは良いじゃないか」
「少しくらいって。この場合、気にしないといけないのは別のことじゃないかしら?」
「どういうことだい?」
志奈さんはおっとりとした話し方はいつも通りながら、嫌そうな空気をにじませている。
オトウサンはどこまでも穏やかだけど、志奈さんの雰囲気に何を言い出すのかと柚鈴も内心ハラハラせずにはいられなかった。

「考えてもみて?お父様。ついこの間まで他人だった中年男性と女子高生をドライブなんて、柚鈴ちゃんが可哀想じゃない!」
ええ!?
そ、そんな言い方しちゃうんですか?
不安が的中してしまった、以上の発言に、柚鈴は絶句してしまう。
「可哀想って志奈。お前、そこまで言うのか」
「事実、そうじゃない。何か間違っているかしら」
父親には遠慮がない、ということなのか。呆れたととも憤りとも見える表情の志奈さんに対してなんとも情けない顔を見せたオトウサン。
何か間違っているかと問われれば、確かにオトウサンに反論の余地はない。
つい最近まで他人だったのも事実であれば、残念ながらオトウサンが中年男性の部類に入るのも事実である。
しかしこれには柚鈴の方がオトウサンが可哀想な気持ちになってくる。

ついこの間まで他人だった女子高生に、姉妹として仲良くしようとしている「志奈さん」という女子大生だっているというのに。
いや、「志奈さん」はただの女子大生ではなく、高校時代は「全校生徒のお姉さま」と呼ばれ、どこに出しても理想的な可愛い女子大生だから許されるのだろうか?
そう考えると、この姉妹ごっこに関して一般的に問題に思われるのは、「平凡な女子校生でありながら、急に出来た美人なお姉さんを両手を上げて歓迎しない」柚鈴の方なのだろうか。
いやいやいや。
バカな考えが浮かんで、今は本題が違うと首を振った。
そう、本題はオトウサンの方だ。

そもそもオトウサンは、決して娘に毛嫌いされるようなタイプの男性ではない。
父親という存在が、柚鈴には今までの人生では、ほとんどあり得たことがないので、その点に関しては偉そうなことは言えないのだが。
清潔感もあり、いつも穏やかで笑顔を浮かべて、笑いジワが刻まれた表情は、男性としても魅力があると言われることの方が多いはずだ。
もちろん格好いいと感じるかは好みの分かれ目ではあるが、少なくとも嫌われるタイプでないことは確かだ。
体型はどちらかと言えば痩せ型。身長も男性としては平均的な高さで、スーツを着こなして、澄ました表情を作れれば(作るのかどうかは疑問もあるけど)見た目は頼りになる上司タイプにもなるだろう。実際気も効く方で、話し方や行動もスマートな方だ。とにかく中年男性などという言い方をされることはほとんど無いと思う。

このオトウサンに、その言い様は少々可哀想すぎる。
その気持ちがとうとう、柚鈴に二人の話を割って入らせた。
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