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第二章 5月‐序
姉妹っぽいこと ★1★
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朝起きて、着替えてから顔を洗う。
小鳥遊家で柚鈴と志奈さんの部屋はそれぞれ二階にある。
洗面所は一階にも二階にもあり、二階では普段は使用しない客用のバスルームと並んでいる部屋にある。身支度にために顔を洗うなどの用事であれば、全て二階で済ますことが出来た。
贅沢に間取りを使う生活は、なんだかホテル暮らしでもしているようだ。着替えを終えて、一階に降りると、お母さんが既に起きていた。
仕事用のスーツを着て、髪も化粧もきっちりしている。しっかり仕事モードだ。
「柚鈴、おはよう。よく眠れた?」
「おはよう。少し緊張してたみたいで、まだ少し眠い、かな」
「寝てても良かったのに」
「お母さん、今日も仕事でしょう?見送りくらいはしたかったし」
そう言うと、お母さんは嬉しそうに笑う。
GWに実家に帰る一番の理由はやっぱり母親にある。
『新婚』でもある母にべったりする気持ちにはなれなかったが、少しでも親子らしい時間が得られるのだ。
「兼久さんが、朝食にパンを買ってきてくれたから、一緒に食べましょう」
お母さんは、柚鈴を招いた。
柚鈴はその言葉に思わず時計を見る。
階段を下りる前と当然ながら変わらない時間。まだ七時台。
「こんなに早く買いに行ったの?」
「焼きたてが絶対美味しいって、近くのパン屋さんの開店と同時に買ってきたらしいわよ。なんというか贅沢よね」
苦笑交じりの表情に柚鈴も頷く。自分の休日の朝一に、家族のためにパンを買いに行くオトウサンというのは、サービス精神が旺盛としか言いようがない。
どうやら今日の食事当番はオトウサンの番らしい。料理の手間暇を掛けるよりも、男性らしく行動力でフォローをしている、ということだろうか。
世間一般の父親とはそういうものなのだろうか?
そこまでしなくても、と思うのだが、まぁ同じように思っているお母さんがいるとわかっただけでもひとまず納得することにした。
なんせ、オトウサンはお母さんが選んだ相手。
娘があんまり引いていたら、立つ瀬がないだろう。
お母さんに背中を押されて、食卓に向かうと、サラダがテーブルに置かれて、オトウサンがトーストの準備をしていた。焼きたてのいい匂いがする。
Tシャツにジーンズというラフな格好で、ちゃんとエプロンをしていて、若干やる気さえ感じてしまう。
なにより朝から爽やかな笑顔だ。
「おや、柚鈴ちゃん。おはよう」
「おはようございます。オトウサン、わざわざ朝からパン屋に行ったんですか?」
「うん。ジョギングのついでにね。焼きたてのパンだからそのままでも美味しいよ」
そういいながら手早く動いて、お母さんに包みにいれたお弁当を差し出した。
「百合さん、サンドイッチを用意して置いたから、お昼にどうぞ」
「わざわざ?」
驚いたお母さんに、オトウサンは申し訳なさそうに付け足した。
「作ったのは僕ではなく、パン屋さんだけどね」
にっこり笑ったオトウサンに、お母さんがどこかほっとしたようにに頷いた。
「それはそれは、わざわざありがとう」
焼きたてパンを買ってきた上に、お昼ごはんまで用意されたら、申し訳ないというお母さんの気持ちが伝わってきて、柚鈴はぎこちなく笑った。
柚鈴とよく似たお母さんを、随分大切にしているオトウサン。
どうにもそのことに、まだまだ違和感を感じてしまうのだ。
ごめんなさい。
食卓に着くとオトウサンが焼きたてのトーストをお皿に乗せて出してくれる。
「柚鈴ちゃんは早起きで運がいいよ。やっぱり焼きたてが一番美味しいからね」
「ありがとうございます」
受け取ってお礼を言うと、お母さんもお皿を受け取った。
それからすぐにもう一枚トースターに入れたところを見ると、もしや柚鈴が受け取ったのはオトウサンの分だったかと気づいた。
いや、おそらくそうなんだろう。
申し訳なくなるが、受け取ったものを今更返すというのもどうかとも思う。
特に気にせず食べてるお母さんにならって、トーストを口にした。
小鳥遊家で柚鈴と志奈さんの部屋はそれぞれ二階にある。
洗面所は一階にも二階にもあり、二階では普段は使用しない客用のバスルームと並んでいる部屋にある。身支度にために顔を洗うなどの用事であれば、全て二階で済ますことが出来た。
贅沢に間取りを使う生活は、なんだかホテル暮らしでもしているようだ。着替えを終えて、一階に降りると、お母さんが既に起きていた。
仕事用のスーツを着て、髪も化粧もきっちりしている。しっかり仕事モードだ。
「柚鈴、おはよう。よく眠れた?」
「おはよう。少し緊張してたみたいで、まだ少し眠い、かな」
「寝てても良かったのに」
「お母さん、今日も仕事でしょう?見送りくらいはしたかったし」
そう言うと、お母さんは嬉しそうに笑う。
GWに実家に帰る一番の理由はやっぱり母親にある。
『新婚』でもある母にべったりする気持ちにはなれなかったが、少しでも親子らしい時間が得られるのだ。
「兼久さんが、朝食にパンを買ってきてくれたから、一緒に食べましょう」
お母さんは、柚鈴を招いた。
柚鈴はその言葉に思わず時計を見る。
階段を下りる前と当然ながら変わらない時間。まだ七時台。
「こんなに早く買いに行ったの?」
「焼きたてが絶対美味しいって、近くのパン屋さんの開店と同時に買ってきたらしいわよ。なんというか贅沢よね」
苦笑交じりの表情に柚鈴も頷く。自分の休日の朝一に、家族のためにパンを買いに行くオトウサンというのは、サービス精神が旺盛としか言いようがない。
どうやら今日の食事当番はオトウサンの番らしい。料理の手間暇を掛けるよりも、男性らしく行動力でフォローをしている、ということだろうか。
世間一般の父親とはそういうものなのだろうか?
そこまでしなくても、と思うのだが、まぁ同じように思っているお母さんがいるとわかっただけでもひとまず納得することにした。
なんせ、オトウサンはお母さんが選んだ相手。
娘があんまり引いていたら、立つ瀬がないだろう。
お母さんに背中を押されて、食卓に向かうと、サラダがテーブルに置かれて、オトウサンがトーストの準備をしていた。焼きたてのいい匂いがする。
Tシャツにジーンズというラフな格好で、ちゃんとエプロンをしていて、若干やる気さえ感じてしまう。
なにより朝から爽やかな笑顔だ。
「おや、柚鈴ちゃん。おはよう」
「おはようございます。オトウサン、わざわざ朝からパン屋に行ったんですか?」
「うん。ジョギングのついでにね。焼きたてのパンだからそのままでも美味しいよ」
そういいながら手早く動いて、お母さんに包みにいれたお弁当を差し出した。
「百合さん、サンドイッチを用意して置いたから、お昼にどうぞ」
「わざわざ?」
驚いたお母さんに、オトウサンは申し訳なさそうに付け足した。
「作ったのは僕ではなく、パン屋さんだけどね」
にっこり笑ったオトウサンに、お母さんがどこかほっとしたようにに頷いた。
「それはそれは、わざわざありがとう」
焼きたてパンを買ってきた上に、お昼ごはんまで用意されたら、申し訳ないというお母さんの気持ちが伝わってきて、柚鈴はぎこちなく笑った。
柚鈴とよく似たお母さんを、随分大切にしているオトウサン。
どうにもそのことに、まだまだ違和感を感じてしまうのだ。
ごめんなさい。
食卓に着くとオトウサンが焼きたてのトーストをお皿に乗せて出してくれる。
「柚鈴ちゃんは早起きで運がいいよ。やっぱり焼きたてが一番美味しいからね」
「ありがとうございます」
受け取ってお礼を言うと、お母さんもお皿を受け取った。
それからすぐにもう一枚トースターに入れたところを見ると、もしや柚鈴が受け取ったのはオトウサンの分だったかと気づいた。
いや、おそらくそうなんだろう。
申し訳なくなるが、受け取ったものを今更返すというのもどうかとも思う。
特に気にせず食べてるお母さんにならって、トーストを口にした。
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