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第二章 5月‐序
オトウサンとのお出かけ ★6★
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「志奈は誰かを選べと言われたら、自分が好きな子ではなくて、そうするべきと周りが思うような子を探してしまったと思うんだよね」
「そう、なんですか?」
オトウサンは小さく笑った。
「志奈は自分を特別じゃなくて、重要だと思ってくれる人が欲しいんだよ。そうなんだろうと僕は思うよ」
特別じゃなくて重要?
その言葉の違いが少しわかったようで、柚鈴はいよいよ黙り込んだ。
「あー、難しいかな?ごめんね」
「いえ、あの。すみません」
見晴らしの良い、海と街並みが一望出来る高台に着くと、オトウサンは車を停めて降りた。
柚鈴も車のドアを開け、外の空気を吸った。
風が心地よく吹いていて、景色のより良く見える方へオトウサンは手招きしてくれていた。
そちらに向かい、街を見下ろして、気持ちが高揚するが、話の続きが気になってしまった。
「オトウサンは、どうしてそう思うんですか?」
「え?」
「志奈さんが、自分では上手にペアになる後輩を選べないって」
「あー。うん」
オトウサンは困ったように頭をかいた。
それから自嘲するように笑ってみせる。
「僕がね、やっぱりそういうの苦手な方だからかな」
「え?」
「正直に話すけど、いいかな?」
オトウサンは柔らかく笑って、でもその視線は柚鈴の迷いを払うようにまっすぐで。
柚鈴はゆっくりと頷いた。
オトウサンは、高台の柵に軽く座って、世間話をするようになんてことないように話出した。
「志奈のお母さんだった人とはね、僕が生まれた時には結婚が決まってたんだ。勿論大好きな人だった。けど、志奈が生まれてすぐ亡くなってしまって。僕の両親もその後にやっぱり亡くなってしまったから、僕はずっと志奈と2人きりだった」
オトウサンが話す言葉は、柚鈴自身が聞いていいのかどうか悩むくらいの内容だったけど、オトウサンは特に気にした様子もなく話続ける。
多分、それがオトウサンの柚鈴に対する誠実な態度の現れなのではないかと思い、頑張って聞いていることにした。
「親戚には随分、志奈のために早く誰かと結婚するように言われたけど、難しくて。自分の為だけの結婚なら、正直誰でも良いのかもなんて思ったりもしたよ。よく考えたら、僕は誰かを自分で選んだことがなかったことに改めて気づいたりてね」
困ったように肩を竦めて、話を続ける。
「次の結婚は志奈のためにするとなると、亡くなった妻以上の人が全く思い当たらなかったんだ」
オトウサンの様子に、柚鈴とすると反論しないわけにはいかなかった。
向こうもそれを待っているようで、仕方なく口を開いた。
「でも、お母さんと再婚したじゃないですか」
「うん。それは本当に運が良かったと思っているよ。うん、多分。初めて自分から好きになった人なんだと思う」
「初めて?」
「そう。亡くなった妻のことだって大切で好きだったよ。でも自分から選んだのは百合さんが初めてなんだよね」
オトウサンは、機嫌よさそうにへらっと笑った。
「僕は、柚鈴ちゃんのお母さんが大好きなんだ」
「そ、そうですか。それはどうもありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
困ってしまった柚鈴が思わずお礼を言うと、オトウサンは丁寧に頭を下げてお礼を返す。
この人、娘に熱烈に母に対する愛を語るってどうなんだろう。
喜ぶべきなのかもしれないが、なんだか泣きたい気持ちになる。
しかし泣いても仕方ないので、心を強くして我慢する。
平常心の振りで、なるべく無表情。
「そう、なんですか?」
オトウサンは小さく笑った。
「志奈は自分を特別じゃなくて、重要だと思ってくれる人が欲しいんだよ。そうなんだろうと僕は思うよ」
特別じゃなくて重要?
その言葉の違いが少しわかったようで、柚鈴はいよいよ黙り込んだ。
「あー、難しいかな?ごめんね」
「いえ、あの。すみません」
見晴らしの良い、海と街並みが一望出来る高台に着くと、オトウサンは車を停めて降りた。
柚鈴も車のドアを開け、外の空気を吸った。
風が心地よく吹いていて、景色のより良く見える方へオトウサンは手招きしてくれていた。
そちらに向かい、街を見下ろして、気持ちが高揚するが、話の続きが気になってしまった。
「オトウサンは、どうしてそう思うんですか?」
「え?」
「志奈さんが、自分では上手にペアになる後輩を選べないって」
「あー。うん」
オトウサンは困ったように頭をかいた。
それから自嘲するように笑ってみせる。
「僕がね、やっぱりそういうの苦手な方だからかな」
「え?」
「正直に話すけど、いいかな?」
オトウサンは柔らかく笑って、でもその視線は柚鈴の迷いを払うようにまっすぐで。
柚鈴はゆっくりと頷いた。
オトウサンは、高台の柵に軽く座って、世間話をするようになんてことないように話出した。
「志奈のお母さんだった人とはね、僕が生まれた時には結婚が決まってたんだ。勿論大好きな人だった。けど、志奈が生まれてすぐ亡くなってしまって。僕の両親もその後にやっぱり亡くなってしまったから、僕はずっと志奈と2人きりだった」
オトウサンが話す言葉は、柚鈴自身が聞いていいのかどうか悩むくらいの内容だったけど、オトウサンは特に気にした様子もなく話続ける。
多分、それがオトウサンの柚鈴に対する誠実な態度の現れなのではないかと思い、頑張って聞いていることにした。
「親戚には随分、志奈のために早く誰かと結婚するように言われたけど、難しくて。自分の為だけの結婚なら、正直誰でも良いのかもなんて思ったりもしたよ。よく考えたら、僕は誰かを自分で選んだことがなかったことに改めて気づいたりてね」
困ったように肩を竦めて、話を続ける。
「次の結婚は志奈のためにするとなると、亡くなった妻以上の人が全く思い当たらなかったんだ」
オトウサンの様子に、柚鈴とすると反論しないわけにはいかなかった。
向こうもそれを待っているようで、仕方なく口を開いた。
「でも、お母さんと再婚したじゃないですか」
「うん。それは本当に運が良かったと思っているよ。うん、多分。初めて自分から好きになった人なんだと思う」
「初めて?」
「そう。亡くなった妻のことだって大切で好きだったよ。でも自分から選んだのは百合さんが初めてなんだよね」
オトウサンは、機嫌よさそうにへらっと笑った。
「僕は、柚鈴ちゃんのお母さんが大好きなんだ」
「そ、そうですか。それはどうもありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
困ってしまった柚鈴が思わずお礼を言うと、オトウサンは丁寧に頭を下げてお礼を返す。
この人、娘に熱烈に母に対する愛を語るってどうなんだろう。
喜ぶべきなのかもしれないが、なんだか泣きたい気持ちになる。
しかし泣いても仕方ないので、心を強くして我慢する。
平常心の振りで、なるべく無表情。
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