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第二章 5月‐序
姉妹っぽいこと ★7★
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「どうしたの?柚鈴ちゃん」
沈黙した柚鈴に不思議そうに目を向けた志奈さん。
正直にいうのは躊躇われて、柚鈴はじぃっと志奈さんを見つめてから、そっぽを向いてごまかすために言葉を繋げた。
「志奈さん、本当はお祖母様が漬けたっていうお酒、実はすこし飲んだことあるんじゃないですか?そんな疑いの心が生まれました」
「ええ?」
「志奈さんが試しに一口飲まなかったなんて、信じられないような気がします」
「酷いわ。そ、そこまで欲深くないもの」
「本当ですか?」
わざと冷たい言い方をすると、志奈さんはふーんっとソッポを向いた。
「その時はお祖母様が、アルコールなしの梅ジュースも作ってくれたもの。それを飲んだから、お酒は飲まなかったのよ」
「梅ジュースですか」
「柚鈴ちゃんという通り、作ったからには飲みたくなったのよね。でもお祖母さまは当然ダメだっておっしゃって、私が残念そうにしてたら作ってくれたの」
「優しい、お祖母さまですね」
「……」
相槌を打っただけのつもりだったが、柚鈴の言葉に志奈さんは黙って柚鈴を見た。
「な、なんですか?」
「そうか、優しい、か」
何か重要なことに気づいたように志奈さんはもう一個瓶に手を触れた。
「なら、私は、優しいお姉さまになるわ!」
「は…?」
急に決意したように志奈さんが高らかに宣言した。
「梅の時期になったら私が梅ジュースも作っておくの。それなら成人まで待たなくてもいいし、柚鈴ちゃんとすぐに飲めるわ。そして飲むたびに柚鈴ちゃんが『優しいお姉さんが作ってくれた』と思うの」
「え」
斜め上の進展に、絶句してしまう。
「そう思ってね。柚鈴ちゃん」
志奈さんはにこにこと楽しそうだ。
柚鈴は、後ろめたいような、なんだか複雑な気持ちを隠したまま、志奈さんの笑顔を見つめた。
これは柚鈴が、寂しい気持ちを抱いたなんて、気づいていない気がする。
無邪気そのものだ。
「随分、嬉しそうですね」
「嬉しいわ。柚鈴ちゃんが妹になった年のお酒を作ったり、成人するまでの期間のために梅ジュースを作っておくなんて考えただけでも楽しいもの」
「そうですか」
「そうよ。そもそも柚鈴ちゃんの為に何かしたくたって大して出来ないでしょう?お姉さんとしての私は瀕死寸前なのよ」
「なんですか、瀕死寸前て」
「体力が有り余っているってことかなあ」
お姉さんをすることにやる気満々の志奈さんは、確かに余力が有り余っているらしい。
それなら、と柚鈴は思いついて、もう一つ瓶を手にとった。
図々しいかもしれないけど、何かしたいならいいかと思うことにする。
瀕死状態なら、少しくらい。
「なら梅が手に入ってから作る梅酒は二瓶にしておいてください」
「え?」
「4人で事あるごとに出して飲んだら、すぐになくなってしまいそうじゃないですか。だから二瓶はお願いしたいんですけど」
そう言うと、志奈さんは瞬きしてから、こちらをまっすぐ見ていた。
「……」
「いけませんか?」
心配になって柚鈴が聞くと、首を振って微笑んだ。
「ううん。そうか、これから4人なんだなぁって、改めて思っただけ」
志奈さんの言葉に、少し恥ずかしくなって憎まれ口になってしまう。
「志奈さんがあっという間に結婚して、人数減っちゃう可能性もありますけどね」
「あら、私は柚鈴ちゃんと姉妹を堪能しきるまで、家を出て行くつもりはないわよ」
「いつ堪能しきるんですか?」
「いつかなー。一生かかったりして」
うふふ、と冗談めかして言う姿に困った気持ちになりながらも、少しだけ嬉しい。
寂しい気持ちも、志奈さんの優しさで癒される気がした。
そんな複雑な気持ちは...
見逃してください。
沈黙した柚鈴に不思議そうに目を向けた志奈さん。
正直にいうのは躊躇われて、柚鈴はじぃっと志奈さんを見つめてから、そっぽを向いてごまかすために言葉を繋げた。
「志奈さん、本当はお祖母様が漬けたっていうお酒、実はすこし飲んだことあるんじゃないですか?そんな疑いの心が生まれました」
「ええ?」
「志奈さんが試しに一口飲まなかったなんて、信じられないような気がします」
「酷いわ。そ、そこまで欲深くないもの」
「本当ですか?」
わざと冷たい言い方をすると、志奈さんはふーんっとソッポを向いた。
「その時はお祖母様が、アルコールなしの梅ジュースも作ってくれたもの。それを飲んだから、お酒は飲まなかったのよ」
「梅ジュースですか」
「柚鈴ちゃんという通り、作ったからには飲みたくなったのよね。でもお祖母さまは当然ダメだっておっしゃって、私が残念そうにしてたら作ってくれたの」
「優しい、お祖母さまですね」
「……」
相槌を打っただけのつもりだったが、柚鈴の言葉に志奈さんは黙って柚鈴を見た。
「な、なんですか?」
「そうか、優しい、か」
何か重要なことに気づいたように志奈さんはもう一個瓶に手を触れた。
「なら、私は、優しいお姉さまになるわ!」
「は…?」
急に決意したように志奈さんが高らかに宣言した。
「梅の時期になったら私が梅ジュースも作っておくの。それなら成人まで待たなくてもいいし、柚鈴ちゃんとすぐに飲めるわ。そして飲むたびに柚鈴ちゃんが『優しいお姉さんが作ってくれた』と思うの」
「え」
斜め上の進展に、絶句してしまう。
「そう思ってね。柚鈴ちゃん」
志奈さんはにこにこと楽しそうだ。
柚鈴は、後ろめたいような、なんだか複雑な気持ちを隠したまま、志奈さんの笑顔を見つめた。
これは柚鈴が、寂しい気持ちを抱いたなんて、気づいていない気がする。
無邪気そのものだ。
「随分、嬉しそうですね」
「嬉しいわ。柚鈴ちゃんが妹になった年のお酒を作ったり、成人するまでの期間のために梅ジュースを作っておくなんて考えただけでも楽しいもの」
「そうですか」
「そうよ。そもそも柚鈴ちゃんの為に何かしたくたって大して出来ないでしょう?お姉さんとしての私は瀕死寸前なのよ」
「なんですか、瀕死寸前て」
「体力が有り余っているってことかなあ」
お姉さんをすることにやる気満々の志奈さんは、確かに余力が有り余っているらしい。
それなら、と柚鈴は思いついて、もう一つ瓶を手にとった。
図々しいかもしれないけど、何かしたいならいいかと思うことにする。
瀕死状態なら、少しくらい。
「なら梅が手に入ってから作る梅酒は二瓶にしておいてください」
「え?」
「4人で事あるごとに出して飲んだら、すぐになくなってしまいそうじゃないですか。だから二瓶はお願いしたいんですけど」
そう言うと、志奈さんは瞬きしてから、こちらをまっすぐ見ていた。
「……」
「いけませんか?」
心配になって柚鈴が聞くと、首を振って微笑んだ。
「ううん。そうか、これから4人なんだなぁって、改めて思っただけ」
志奈さんの言葉に、少し恥ずかしくなって憎まれ口になってしまう。
「志奈さんがあっという間に結婚して、人数減っちゃう可能性もありますけどね」
「あら、私は柚鈴ちゃんと姉妹を堪能しきるまで、家を出て行くつもりはないわよ」
「いつ堪能しきるんですか?」
「いつかなー。一生かかったりして」
うふふ、と冗談めかして言う姿に困った気持ちになりながらも、少しだけ嬉しい。
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