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第二章 5月‐序
一歩、進んで ★10★
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「え?柚鈴ちゃん、まさかペアを作っちゃうの?」
「そういうつもりで聞いたんじゃないんですけど」
いやいや、と否定するが、志奈さんは全く聞いていない。
肩を落として、落ち込んだような顔をする。
「柚鈴ちゃんに助言者が出来たらショックだなぁ。もしかしたら私自身が言い出したペア推進案が功をなす、なんて可能性もあるわけか。まさか自分自身の手で柚鈴ちゃんの危機を招くなんて考えてもいなかったわ」
…え、私の危機なの?
一瞬、疑問符が浮かんだが、それを聞くと余計会話が混乱しそうなので、それは諦めることにする。
「志奈さん、推進案なんて考えたんですか?」
「ええ。1年生でお手伝いを始めた時から、色々と」
あっさりと言った志奈さんに、話が分かってるのか分かってないのかお母さんは感心したように声を上げた。
「志奈ちゃん、すごいのね」
「あ、いえいえ。なんとなく口にしたら、勝手にいつの間にか形になっていただけで」
勝手にって。
それの方がすごいんじゃないだろうか。
真美子さんとか、周りが優秀だったということなのかなんなのか。
多少疑問に思いつつ、柚鈴は正直な感想を口にした。
「それにしても助言者ですか。いまいちピンと来ないですね」
「そうよね。柚鈴ちゃんには必要ないと思うわ」
力を込めていう志奈さんに少々苦笑しつつ、まあそうですね、と頷いた。
特に志奈さんを慌てさせる理由もない。とりあえず若干の皮肉を混ぜ合わせながら、確認だけはしておくことにした。
「私も志奈さんで精一杯な気がするのは確かですけど。別に強制的に組み合わされるわけじゃないんですよね?」
「それはないはずよ」
「なら、まあよかったです。後はその時考えます。それより志奈さん」
柚鈴は、ずっと暑そうにしている志奈さんに、とうとう我慢出来ずに声を掛けた。
「普通の辛さのカレーにかえましょうか?」
「え、嫌っ」
「嫌って……」
はっきりと拒絶した志奈さんの様子に驚いてしまうが、志奈さんはしっかりカレー皿を握りしめ抵抗の意志を見せる。
「これを食べなきゃ、後悔すると思うの」
「なんで後悔なんてするんですか」
「だって…」
言葉に詰まった志奈さんをフォローするように、お母さんが口を挟んだ。
「まあ、良いじゃない。志奈ちゃんだって頑張って食べてるわけだし」
「それはそうだけど」
私としては明らかに限界超えている様子の志奈さんに心配しかないのだけど。
「だって、明日は柚鈴ちゃん帰ってしまうじゃない。そうしたら、同じご飯を食べる機会なんて、しばらくないでしょう?」
「それはそうですけど」
「だとしたら、今日の機会を逃したくないの」
志奈さんは、力強くいって、スプーンを口に運んだ。
「私は頑張ると決めたことは頑張りたいのよ」
その強い意志に困ってしまって、柚鈴は隣のお母さんを見た。
にっこり笑って、目線で柚鈴を宥める。
「......」
柚鈴も一口スープカレーを食べる。
美味しくて辛い。
昔、「変わってる」と言われたことは全く気にしなかった様子の志奈さんが、このカレーを食べることにはこんなにムキになっていることが不思議だ。
不思議だけど。
こんなに頑張っているんだから、というとおかしいのは百も承知なんだけど。
頑張ってる志奈さんのために、ペアの上級生は作らない、というのもアリではないかな、と思えてきていた。
それは常葉学園としては、マイナスの行動なのかもしれないけれど、志奈さんを調子に乗らせてしまうことかもしれないけれど、それよりも何よりも。
それが、少なくとも柚鈴にとって、意味を持つか持たないかさえまだ分からない助言者制度でペアを作ることを嫌だと思う人がいるのなら。
とりあえず、本当に全部食べたら。
考えても良いかな、と思いながら、必死に食べ進める志奈さんを見つめた。
「そういうつもりで聞いたんじゃないんですけど」
いやいや、と否定するが、志奈さんは全く聞いていない。
肩を落として、落ち込んだような顔をする。
「柚鈴ちゃんに助言者が出来たらショックだなぁ。もしかしたら私自身が言い出したペア推進案が功をなす、なんて可能性もあるわけか。まさか自分自身の手で柚鈴ちゃんの危機を招くなんて考えてもいなかったわ」
…え、私の危機なの?
一瞬、疑問符が浮かんだが、それを聞くと余計会話が混乱しそうなので、それは諦めることにする。
「志奈さん、推進案なんて考えたんですか?」
「ええ。1年生でお手伝いを始めた時から、色々と」
あっさりと言った志奈さんに、話が分かってるのか分かってないのかお母さんは感心したように声を上げた。
「志奈ちゃん、すごいのね」
「あ、いえいえ。なんとなく口にしたら、勝手にいつの間にか形になっていただけで」
勝手にって。
それの方がすごいんじゃないだろうか。
真美子さんとか、周りが優秀だったということなのかなんなのか。
多少疑問に思いつつ、柚鈴は正直な感想を口にした。
「それにしても助言者ですか。いまいちピンと来ないですね」
「そうよね。柚鈴ちゃんには必要ないと思うわ」
力を込めていう志奈さんに少々苦笑しつつ、まあそうですね、と頷いた。
特に志奈さんを慌てさせる理由もない。とりあえず若干の皮肉を混ぜ合わせながら、確認だけはしておくことにした。
「私も志奈さんで精一杯な気がするのは確かですけど。別に強制的に組み合わされるわけじゃないんですよね?」
「それはないはずよ」
「なら、まあよかったです。後はその時考えます。それより志奈さん」
柚鈴は、ずっと暑そうにしている志奈さんに、とうとう我慢出来ずに声を掛けた。
「普通の辛さのカレーにかえましょうか?」
「え、嫌っ」
「嫌って……」
はっきりと拒絶した志奈さんの様子に驚いてしまうが、志奈さんはしっかりカレー皿を握りしめ抵抗の意志を見せる。
「これを食べなきゃ、後悔すると思うの」
「なんで後悔なんてするんですか」
「だって…」
言葉に詰まった志奈さんをフォローするように、お母さんが口を挟んだ。
「まあ、良いじゃない。志奈ちゃんだって頑張って食べてるわけだし」
「それはそうだけど」
私としては明らかに限界超えている様子の志奈さんに心配しかないのだけど。
「だって、明日は柚鈴ちゃん帰ってしまうじゃない。そうしたら、同じご飯を食べる機会なんて、しばらくないでしょう?」
「それはそうですけど」
「だとしたら、今日の機会を逃したくないの」
志奈さんは、力強くいって、スプーンを口に運んだ。
「私は頑張ると決めたことは頑張りたいのよ」
その強い意志に困ってしまって、柚鈴は隣のお母さんを見た。
にっこり笑って、目線で柚鈴を宥める。
「......」
柚鈴も一口スープカレーを食べる。
美味しくて辛い。
昔、「変わってる」と言われたことは全く気にしなかった様子の志奈さんが、このカレーを食べることにはこんなにムキになっていることが不思議だ。
不思議だけど。
こんなに頑張っているんだから、というとおかしいのは百も承知なんだけど。
頑張ってる志奈さんのために、ペアの上級生は作らない、というのもアリではないかな、と思えてきていた。
それは常葉学園としては、マイナスの行動なのかもしれないけれど、志奈さんを調子に乗らせてしまうことかもしれないけれど、それよりも何よりも。
それが、少なくとも柚鈴にとって、意味を持つか持たないかさえまだ分からない助言者制度でペアを作ることを嫌だと思う人がいるのなら。
とりあえず、本当に全部食べたら。
考えても良いかな、と思いながら、必死に食べ進める志奈さんを見つめた。
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