123 / 282
第三章 5月‐結
お姉さま、ペア作りが本格起動です ★9★
しおりを挟む
「確かに市原寮長は、組違いの南組の特待生である小牧さんをペアにされていますから、そう思われるのかもしれませんけど。ですが東組の特待生である現生徒会長も、以前はその組み合わせで苦労されたのは有名な話じゃありませんか」
「あら、貴女。その話を知っているの」
柚鈴には何の話なのか分からなかったが、遥先輩は思い当たる節があるらしい。ツインテールを揺らして、小さく笑った。
「知ってます。だからこそ、東組の生徒には東組の助言者がつくべきと思っています」
「凛子は、結局東組の助言者を持たなかったけど、返り咲いたあげくに主席にまでのし上がったわよ」
「だとしても、組違いのペアが失敗だという実例には違いありません」
「そういった側面も確かにあるでしょう」
やれやれと、遥先輩は小さくため息をついて、腰に手を当てて胸を張った。
「組み合わせ次第で問題が起こることは否定はしないけれど。今私が良くないと感じているのは、貴女の余裕がなさすぎる点よ」
「な...」
「ペア候補云々も別に否定はしないけど、そもそも中間考査前の寮への訪問時間は切り上がっているの。すぐ話が済むというから、取り次いだけれど、貴女の行為がこの時間の柚鈴さんの勉強の邪魔です」
可愛い顔からは想像もできないほど辛辣に、しかし威厳を持って言い切った遥先輩に柚鈴は思わず感動してしまう。
だが勿論、東郷先輩は収まるつもりはなさそうだ。
感情的に顔を赤らめたように見えた。
「助言者制度のために動いているんですから、そんな風に言われる筋合いはありません」
その東郷先輩の様子に、何を思ったのか遥先輩は考え込むようにしてから、ゆっくりと息を吐いた。
それから穏やかな表情で告げる。
「貴女が例に挙げた凛子の件は、少なくとも私には一年生の方に選ばせなかった上級生や先生方のあり方の問題だと思っているわ」
それからチラリと柚鈴の方を見てから、深刻そうな表情を作ってみせた。
「この子だって、東組でない上級生との組み合わせが難しいことも分かっているはずよ。だから、ペア作りに前向きじゃないなんて言い方をしてるんでしょう」
「わ、分かっているなら...」
「それでも中間考査後にある茶会を楽しみにして、勉強に粉骨砕身努力しているのが分からないの!?今、無理矢理貴女とペア候補になって、ガタガタとやる気が削がれたら、貴女責任とれるの?」
「......そ、それは」
え?えーと。
え?
柚鈴は何故か急に話の流れが変わってしまったのを感ていた。
確かに柚鈴は気になる先輩がいると言いはした。したが、何故か『分不相応な相手を望んで、諦めつつも悩んでいる』というまるで身分差の恋愛に悩む物語の登場人物のように仕立て上げられていないだろうか?
自分のことの筈なのに、思っていた斜め上をいく話の展開に、凍りついてしまう。
え、私。
茶会を楽しみに勉強に粉骨砕身努力、してるの?
話の部品は確かに合っているのだけど、つなげ方はどう考えても間違っていないだろうか?いや、間違ってしかいない気がする。
しかし、それを今言いだしても今はこじれる話しかない。
混乱していてもそれぐらいは分かるので、釈然とはしないが口出さずに見守っていると、遥先輩は穏やかに猫撫で声を出して東郷先輩に囁いた。
「ね?貴女も思うことはあるでしょうけど、一先ず中間考査が東組の生徒は最優先のはずよ」
「それは、確かに…」
「なら、今日は約束は諦めなさい。助言者となる資格を持った2年生なら、その程度の余裕は持てるでしょう?特に貴女は東組の特待生なんですから」
「...それは、勿論です」
どういう流れなのか、東郷先輩は頷いた。
本当にどうして納得しているのか分からないが、もしかしたら東郷先輩も分かっていないのかもしれない。
どこか狐につままれたような顔をしている。
遥先輩はうんうんと満足げに頷いているから、勢い勝ちのようなものだろうか。
「では、中間考査後。改めて参ります」
少し疲れたような顔をした東郷先輩は柚鈴を見つめた。
少々申し訳ない気持ちを抱きつつ、かける言葉もない。
「中間考査前にごめんなさい。しっかり勉強に励んでちょうだい」
「は、はい」
「それではまたね」
そういって東郷先輩は寮を後にして帰っていった。
「あら、貴女。その話を知っているの」
柚鈴には何の話なのか分からなかったが、遥先輩は思い当たる節があるらしい。ツインテールを揺らして、小さく笑った。
「知ってます。だからこそ、東組の生徒には東組の助言者がつくべきと思っています」
「凛子は、結局東組の助言者を持たなかったけど、返り咲いたあげくに主席にまでのし上がったわよ」
「だとしても、組違いのペアが失敗だという実例には違いありません」
「そういった側面も確かにあるでしょう」
やれやれと、遥先輩は小さくため息をついて、腰に手を当てて胸を張った。
「組み合わせ次第で問題が起こることは否定はしないけれど。今私が良くないと感じているのは、貴女の余裕がなさすぎる点よ」
「な...」
「ペア候補云々も別に否定はしないけど、そもそも中間考査前の寮への訪問時間は切り上がっているの。すぐ話が済むというから、取り次いだけれど、貴女の行為がこの時間の柚鈴さんの勉強の邪魔です」
可愛い顔からは想像もできないほど辛辣に、しかし威厳を持って言い切った遥先輩に柚鈴は思わず感動してしまう。
だが勿論、東郷先輩は収まるつもりはなさそうだ。
感情的に顔を赤らめたように見えた。
「助言者制度のために動いているんですから、そんな風に言われる筋合いはありません」
その東郷先輩の様子に、何を思ったのか遥先輩は考え込むようにしてから、ゆっくりと息を吐いた。
それから穏やかな表情で告げる。
「貴女が例に挙げた凛子の件は、少なくとも私には一年生の方に選ばせなかった上級生や先生方のあり方の問題だと思っているわ」
それからチラリと柚鈴の方を見てから、深刻そうな表情を作ってみせた。
「この子だって、東組でない上級生との組み合わせが難しいことも分かっているはずよ。だから、ペア作りに前向きじゃないなんて言い方をしてるんでしょう」
「わ、分かっているなら...」
「それでも中間考査後にある茶会を楽しみにして、勉強に粉骨砕身努力しているのが分からないの!?今、無理矢理貴女とペア候補になって、ガタガタとやる気が削がれたら、貴女責任とれるの?」
「......そ、それは」
え?えーと。
え?
柚鈴は何故か急に話の流れが変わってしまったのを感ていた。
確かに柚鈴は気になる先輩がいると言いはした。したが、何故か『分不相応な相手を望んで、諦めつつも悩んでいる』というまるで身分差の恋愛に悩む物語の登場人物のように仕立て上げられていないだろうか?
自分のことの筈なのに、思っていた斜め上をいく話の展開に、凍りついてしまう。
え、私。
茶会を楽しみに勉強に粉骨砕身努力、してるの?
話の部品は確かに合っているのだけど、つなげ方はどう考えても間違っていないだろうか?いや、間違ってしかいない気がする。
しかし、それを今言いだしても今はこじれる話しかない。
混乱していてもそれぐらいは分かるので、釈然とはしないが口出さずに見守っていると、遥先輩は穏やかに猫撫で声を出して東郷先輩に囁いた。
「ね?貴女も思うことはあるでしょうけど、一先ず中間考査が東組の生徒は最優先のはずよ」
「それは、確かに…」
「なら、今日は約束は諦めなさい。助言者となる資格を持った2年生なら、その程度の余裕は持てるでしょう?特に貴女は東組の特待生なんですから」
「...それは、勿論です」
どういう流れなのか、東郷先輩は頷いた。
本当にどうして納得しているのか分からないが、もしかしたら東郷先輩も分かっていないのかもしれない。
どこか狐につままれたような顔をしている。
遥先輩はうんうんと満足げに頷いているから、勢い勝ちのようなものだろうか。
「では、中間考査後。改めて参ります」
少し疲れたような顔をした東郷先輩は柚鈴を見つめた。
少々申し訳ない気持ちを抱きつつ、かける言葉もない。
「中間考査前にごめんなさい。しっかり勉強に励んでちょうだい」
「は、はい」
「それではまたね」
そういって東郷先輩は寮を後にして帰っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる