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第三章 5月‐結
お姉さま、ペア作りが本格起動です ★8★
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まあ、確かに。
東組の特待生同士なら助言者制度の活用方法は勉強だろう。
少なくとも幸が先輩と約束したような、休日デートではないはずだ。
助言者ではないという相手との約束に上機嫌だった幸を思い出しながら、少し羨ましく思いつつもそんなお付き合いは相手が誰でも自分には縁がなさそうだと思っていたので、妙に納得した。
しかし納得したからと言って、その申し出を受けることはできない。
「あの、申し訳ないのですが」
と柚鈴は切り出した。
「私、ペア作りにはあまり前向きではなくて、候補とかはお断りしたいんですが」
「あら」
東郷先輩は少しだけ驚いたように言うと、小さく笑った。
「分かるわ」
「え?」
「私も去年、助言者制度のことを聞いた時には、さっぱり興味が湧かなかったもの」
「そ、そうなんですか」
「でも昨年一年で考えが変わったの。だから小鳥遊さんが思うより、あなたの気持ちを理解しながら関係を作れると思うわ」
柚鈴にとっては賢明な断りの言葉だったのだが。どうやら、昨年の自分に上手くかみ合ってしまったようで、東郷先輩は最初よりも打ち解けたような笑顔を見せた。
候補という消極的にも思える申し出だったが、東郷先輩が急にどこか積極的な言い方に切り替えた話し方になってしまったことに、柚鈴は内心焦る。
そもそも、候補、というのは何なんだろう?
その言葉を使うならば、わざわざ形としておかなくても、同じ常葉学園に通う先輩後輩ならば、誰でもお互い候補になり得るのではないだろうか?
困惑しながら、これは早い段階で断らないとなし崩しの形に持ち込まれそうな予感を抱いた。
相手も東組の生徒なだけに、話が計画的で、ゴールがしっかり見えている気がするのだ。
つまり候補から着実にペアになる道筋があるように思えて仕方ない。
それは、なんか嫌だ。
志奈さんの件がなくても、ちょっと受け入れ難い。
「とりあえず明日の放課後、図書館でどうかしら?」
話を進めようとする東郷先輩に、どうしようとぐるりと思考を巡らせる。
どうにか納得してもらって断らなくてはいけない。
そう、ちょっとした嘘でもいいから。そう考えて思考を巡らせていたところで、はっと思いついた。
それが名案かもわからないが、迷っている暇もないので、なるべく慌てないように言葉を選びながら口を開いた。
「あ、あの」
「何?」
「私、中間考査明けの茶道部が主催する茶会に誘われてまして」
「え?」
東郷先輩は意外だったのだろう。どこか達観しているような余裕のある表情が驚いたように崩れた。
明智さんから貰った招待状と、一緒に付け加えられた言葉を思い出して。
その意味が思った通りなら、いけるかもしれない。
柚鈴は畳みかけるように、しかし慎重に言葉を繋げた。
「そこに気になる先輩がいらっしゃるので、東郷先輩のお誘いは受けれません。すみません」
「茶道部って…それじゃ、西組か北組の方ってこと?」
「え、ええと」
質問には思わず目線が泳ぐ。
招待状を受け取っただけで、具体的にどういう人たちが集まるのか全く知らないのだ。
その態度をどう受け止めたのか、東郷先輩は眉を顰めてため息をついた。
なにか地雷でも踏んでしまったような空気の変化に、柚鈴は体を緊張させた。
「あなたは助言者制度がどういうものか分かっていないのね。東組の特待生がそれ以外の組の生徒とペアを組むなんて、全く意味がないことよ」
「ちょっと待っていただけるかしら」
語気の強まる様子に、それまで黙って様子を見ていた遥先輩がらしいとしか言いようのない、見かけを裏切る尊大な態度で話に割り込んでくる。
「別に組違いでのペアが意味がないということはないはずよ」
東郷先輩は、上級生ということもあってか遥先輩の言葉に一瞬口を閉ざした。
しかし不満そうな表情を浮かべてから、上級生であっても譲る気はないと言って様子で言葉を繋げる。
東組の特待生同士なら助言者制度の活用方法は勉強だろう。
少なくとも幸が先輩と約束したような、休日デートではないはずだ。
助言者ではないという相手との約束に上機嫌だった幸を思い出しながら、少し羨ましく思いつつもそんなお付き合いは相手が誰でも自分には縁がなさそうだと思っていたので、妙に納得した。
しかし納得したからと言って、その申し出を受けることはできない。
「あの、申し訳ないのですが」
と柚鈴は切り出した。
「私、ペア作りにはあまり前向きではなくて、候補とかはお断りしたいんですが」
「あら」
東郷先輩は少しだけ驚いたように言うと、小さく笑った。
「分かるわ」
「え?」
「私も去年、助言者制度のことを聞いた時には、さっぱり興味が湧かなかったもの」
「そ、そうなんですか」
「でも昨年一年で考えが変わったの。だから小鳥遊さんが思うより、あなたの気持ちを理解しながら関係を作れると思うわ」
柚鈴にとっては賢明な断りの言葉だったのだが。どうやら、昨年の自分に上手くかみ合ってしまったようで、東郷先輩は最初よりも打ち解けたような笑顔を見せた。
候補という消極的にも思える申し出だったが、東郷先輩が急にどこか積極的な言い方に切り替えた話し方になってしまったことに、柚鈴は内心焦る。
そもそも、候補、というのは何なんだろう?
その言葉を使うならば、わざわざ形としておかなくても、同じ常葉学園に通う先輩後輩ならば、誰でもお互い候補になり得るのではないだろうか?
困惑しながら、これは早い段階で断らないとなし崩しの形に持ち込まれそうな予感を抱いた。
相手も東組の生徒なだけに、話が計画的で、ゴールがしっかり見えている気がするのだ。
つまり候補から着実にペアになる道筋があるように思えて仕方ない。
それは、なんか嫌だ。
志奈さんの件がなくても、ちょっと受け入れ難い。
「とりあえず明日の放課後、図書館でどうかしら?」
話を進めようとする東郷先輩に、どうしようとぐるりと思考を巡らせる。
どうにか納得してもらって断らなくてはいけない。
そう、ちょっとした嘘でもいいから。そう考えて思考を巡らせていたところで、はっと思いついた。
それが名案かもわからないが、迷っている暇もないので、なるべく慌てないように言葉を選びながら口を開いた。
「あ、あの」
「何?」
「私、中間考査明けの茶道部が主催する茶会に誘われてまして」
「え?」
東郷先輩は意外だったのだろう。どこか達観しているような余裕のある表情が驚いたように崩れた。
明智さんから貰った招待状と、一緒に付け加えられた言葉を思い出して。
その意味が思った通りなら、いけるかもしれない。
柚鈴は畳みかけるように、しかし慎重に言葉を繋げた。
「そこに気になる先輩がいらっしゃるので、東郷先輩のお誘いは受けれません。すみません」
「茶道部って…それじゃ、西組か北組の方ってこと?」
「え、ええと」
質問には思わず目線が泳ぐ。
招待状を受け取っただけで、具体的にどういう人たちが集まるのか全く知らないのだ。
その態度をどう受け止めたのか、東郷先輩は眉を顰めてため息をついた。
なにか地雷でも踏んでしまったような空気の変化に、柚鈴は体を緊張させた。
「あなたは助言者制度がどういうものか分かっていないのね。東組の特待生がそれ以外の組の生徒とペアを組むなんて、全く意味がないことよ」
「ちょっと待っていただけるかしら」
語気の強まる様子に、それまで黙って様子を見ていた遥先輩がらしいとしか言いようのない、見かけを裏切る尊大な態度で話に割り込んでくる。
「別に組違いでのペアが意味がないということはないはずよ」
東郷先輩は、上級生ということもあってか遥先輩の言葉に一瞬口を閉ざした。
しかし不満そうな表情を浮かべてから、上級生であっても譲る気はないと言って様子で言葉を繋げる。
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