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第三章 5月‐結
お姉さま、ペア作りが本格起動です ★7★
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中間考査に向けての勉強会は、清葉寮の実習室で行うことにしている。
部屋でやってもいいのだが、実習室で寮生と勉強会をするのも中々捗るのだ。
幸も机を並べて、真面目に取り組んでいるし、部活が早めに切り上がる薫も後から合流することになっていた。
もちろん試験範囲の違う、柚鈴や幸と一緒に勉強するというわけではない。
分からないところを教えてほしいと頼まれているのだ。
実習室では、2年生や3年生も中間考査前ということもあり、集まっていた。
少し遠くだが、凛子先輩の姿もある。
生徒会業務が忙しそうで、一時は姿を見ることがなかったのだが、一段落したのだろうか。
ちらりと様子を伺うようにそちらを見ようと振り返ったところで、視界を遮るように誰かが柚鈴の前に立った。
「柚鈴さん、ちょっと良いかしら」
顔を上げると、遥先輩が立っている。
何か用があるらしく、付いてくるように促す様子に誘われるまま、実習室を出ると、玄関まで連れて行かれた。
玄関には知らない生徒が立っていた。寮生ではないので中に気軽に入らないのだろう。
そういったことを顔パスとばかりに入ってくるのは花奏くらいのものである。
上級生だろうか?何しに来たんだろう。そう思って不思議に思っていると、遥先輩が間に立って紹介してくれる。
「2年東組の東郷千紗さん」
紹介を受けて頭を下げると、東郷先輩も頭を下げた。
「初めまして。小鳥遊志奈さんね?東組特待生の」
ショートボブの真面目そうな人、という印象だが、その名前には特に聞き覚えがなかった。
不思議に思って遥先輩を見るが、特に口出す気はないように壁に後ずさると突っ立って様子を見ている。
仕方なく話を聞くために柚鈴は東郷先輩に向かい合った。
「突然ごめんなさい。今日配られた生徒会からの資料を見てきたの。あなた特待生でしょう?私は助言者のバッチを頂いているの。それで今日はペア候補として考えてもらえないかと思ってきたの」
「え?」
先ほど幸が呼ばれたのが、助言者の先輩でなかったことで完全にその可能性を忘れていたのだが、こちらはその意図で来たらしい。
驚いてしまい、マジマジとその表情を見つめてしまった。
その視線に東郷先輩は怯むことなく話を始めた。
「勿論、すぐにペアになりましょうとは言わないわ。もうすぐ中間考査だし、それが最優先だもの。ただ早い段階で候補として、お互い考えられる人を捜しているの」
「あの、どうして私なんでしょうか?」
「東組の特待生でしょう?それに寮生だって聞いたから興味があって」
「興味がですか」
柚鈴からするとピンと来ないが、東郷先輩は当然とでも言うように頷いた。
「親元から離れて高校生活を送るなんて、私は考えたこともないから。どうせなら自分にないものを持っている人の方が良いと思って」
その言葉に思わず、なるほど、と考えてから、はっとした。
これを迂闊に受けてはいけないんではないだろうか。
今すぐペアになろうと言われているわけではないから、油断してしまいそうになるが、そもそもペアを作るつもりがない柚鈴が了承しては話がややこしくなる。
志奈さんに、作りませんと言った矢先に、ペア候補を作りました、では恰好がつかなすぎる。
最初からお断りするのが、得策のはずだ。
そう思い内心慌てるが、東郷先輩は柚鈴が断りの言葉を選ぶ間もないほど着々と話を進めていく。
「もうすぐ中間考査だし、ひとまずそれまでの放課後、一緒に勉強会を図書館でするというのはどうかしら?」
「え、ええと」
「今日、図書館で勉強していたら、ペア同士で勉強会している姿を見かけて思ったの。そうすればお互い無駄がなく知り合えるんじゃないかしら?」
部屋でやってもいいのだが、実習室で寮生と勉強会をするのも中々捗るのだ。
幸も机を並べて、真面目に取り組んでいるし、部活が早めに切り上がる薫も後から合流することになっていた。
もちろん試験範囲の違う、柚鈴や幸と一緒に勉強するというわけではない。
分からないところを教えてほしいと頼まれているのだ。
実習室では、2年生や3年生も中間考査前ということもあり、集まっていた。
少し遠くだが、凛子先輩の姿もある。
生徒会業務が忙しそうで、一時は姿を見ることがなかったのだが、一段落したのだろうか。
ちらりと様子を伺うようにそちらを見ようと振り返ったところで、視界を遮るように誰かが柚鈴の前に立った。
「柚鈴さん、ちょっと良いかしら」
顔を上げると、遥先輩が立っている。
何か用があるらしく、付いてくるように促す様子に誘われるまま、実習室を出ると、玄関まで連れて行かれた。
玄関には知らない生徒が立っていた。寮生ではないので中に気軽に入らないのだろう。
そういったことを顔パスとばかりに入ってくるのは花奏くらいのものである。
上級生だろうか?何しに来たんだろう。そう思って不思議に思っていると、遥先輩が間に立って紹介してくれる。
「2年東組の東郷千紗さん」
紹介を受けて頭を下げると、東郷先輩も頭を下げた。
「初めまして。小鳥遊志奈さんね?東組特待生の」
ショートボブの真面目そうな人、という印象だが、その名前には特に聞き覚えがなかった。
不思議に思って遥先輩を見るが、特に口出す気はないように壁に後ずさると突っ立って様子を見ている。
仕方なく話を聞くために柚鈴は東郷先輩に向かい合った。
「突然ごめんなさい。今日配られた生徒会からの資料を見てきたの。あなた特待生でしょう?私は助言者のバッチを頂いているの。それで今日はペア候補として考えてもらえないかと思ってきたの」
「え?」
先ほど幸が呼ばれたのが、助言者の先輩でなかったことで完全にその可能性を忘れていたのだが、こちらはその意図で来たらしい。
驚いてしまい、マジマジとその表情を見つめてしまった。
その視線に東郷先輩は怯むことなく話を始めた。
「勿論、すぐにペアになりましょうとは言わないわ。もうすぐ中間考査だし、それが最優先だもの。ただ早い段階で候補として、お互い考えられる人を捜しているの」
「あの、どうして私なんでしょうか?」
「東組の特待生でしょう?それに寮生だって聞いたから興味があって」
「興味がですか」
柚鈴からするとピンと来ないが、東郷先輩は当然とでも言うように頷いた。
「親元から離れて高校生活を送るなんて、私は考えたこともないから。どうせなら自分にないものを持っている人の方が良いと思って」
その言葉に思わず、なるほど、と考えてから、はっとした。
これを迂闊に受けてはいけないんではないだろうか。
今すぐペアになろうと言われているわけではないから、油断してしまいそうになるが、そもそもペアを作るつもりがない柚鈴が了承しては話がややこしくなる。
志奈さんに、作りませんと言った矢先に、ペア候補を作りました、では恰好がつかなすぎる。
最初からお断りするのが、得策のはずだ。
そう思い内心慌てるが、東郷先輩は柚鈴が断りの言葉を選ぶ間もないほど着々と話を進めていく。
「もうすぐ中間考査だし、ひとまずそれまでの放課後、一緒に勉強会を図書館でするというのはどうかしら?」
「え、ええと」
「今日、図書館で勉強していたら、ペア同士で勉強会している姿を見かけて思ったの。そうすればお互い無駄がなく知り合えるんじゃないかしら?」
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