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第三章 5月‐結
お姉さまの細やかな企み 4
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とうとう母の日が訪れて、柚鈴は寮の自分の部屋から、お母さんの携帯に電話をかけた。
仕事が終わるのと言われていた時間は、ちょうど寮の夕食を食べ終わるくらいの時間。
お風呂の間までは何もなければ勉強している所だ。
隣の部屋の幸や、逆隣の部屋の生徒も、実習室に行ってしまったのを確認してからだ。
少しくらい話し込んでも、これで問題がないということになる。
『もしもし』
数コールで電話に出たお母さんに、少々気恥ずかしい気持ちを抱きつつ、柚鈴は切り出した。
「もしもし。母の日だから電話しました」
『ふふ、ありがとう』
嬉しそうな声で応じてくれる母に、くずぐったいような感覚になる。
去年は、わざわざ母の日だから電話をしなくとも話せたわけで。それをこうして『話す』ために行動を起こすと、なんだか関わり合うだけのことが特別に思えてしまう。
親子である絆は、2人きりだった分、強いのだと思ってきた。
だけどこうして離れてみてまた分かる、そういう絆もあるのだと、最近気付いていた。
お母さんの声は電話を通すと、直接聞くよりも優しく聞こえる。
それも新しい発見である。
『勉強ははかどってる?』
「うん。寮の実習室で勉強してるけど、集中できるよ」
「そうよね。そこは柚鈴のことだから心配はしてないけど、あんまり集中しすぎないようにね」
時間を忘れて勉強してしまうことがある柚鈴を心配しているのだと分かって、苦笑した。
そういえば、勉強しなさい、と言われたことは、あまりなかったような気がする。
元々、そんなに要領は良い方でもないので、勉強時間と結果が比例するわけではない。だから結局、勉強はしなきゃならないんだけど、そこは柚鈴の勉強に対する熱中度の問題なのだろう。
「それは程ほどに努力します。あの、お母さん、カーネーションのカゴのリボン、メッセージになってるの。後で見てね」
本題を切り出すと、お母さんは、え?と不思議そうな声をあげた。
どうやらまだ気づいていなかったらしいことに安心する。
ああ、もう気づいていたわ、なんて気配だったら、せっかくのサプライズなのにちょっと残念だった。
そんなことを思っていると。
『じゃあちょっと見てくるわね』
そのことが気になったらしいお母さんは言った。
「え、後でもいいのに」
引き止める声を聞いていないのだろうか。電話の向こうで、ねえちょっとと呼びかける声の後。
『志奈ちゃん、電話代わって』
ん?
なにやら思いもかけない言葉を聞いた気がする。
と思った時には、既にお母さんではない声に変わっていた。
『柚鈴ちゃん?』
「志奈さん…」
『ふふ。がっかりしちゃった?ごめんなさい。お母さんったら、携帯を持っていくという発想を忘れてしまったみたい』
クスクスと笑う声が聞こえれば、別に志奈さんが嫌なわけでもない。
いえ、と母に対して少し呆れた気持ちになるだけだ。
志奈さんとは、何度となく電話で話しているのだから、今更、新鮮味はない。
却って真向いで話すより、顔が見えない分気が楽でさえある。
そんな柚鈴の気持ちを知ってか知らずか、志奈さんは穏やかに会話を始めた。
『それで、どう?5月からの高校生活は』
「中々、大変ですね」
一瞬東郷先輩の顔が浮かんでしまい、つい、正直に答えてしまう。
志奈さんはクスクスと笑う。
『もう誰かから、申し込みでも受けた?』
「はぁ…なんだか、ちょっと面倒な感じになってる気がします」
『どんな面倒なの?』
問われれば、一瞬躊躇った。
仕事が終わるのと言われていた時間は、ちょうど寮の夕食を食べ終わるくらいの時間。
お風呂の間までは何もなければ勉強している所だ。
隣の部屋の幸や、逆隣の部屋の生徒も、実習室に行ってしまったのを確認してからだ。
少しくらい話し込んでも、これで問題がないということになる。
『もしもし』
数コールで電話に出たお母さんに、少々気恥ずかしい気持ちを抱きつつ、柚鈴は切り出した。
「もしもし。母の日だから電話しました」
『ふふ、ありがとう』
嬉しそうな声で応じてくれる母に、くずぐったいような感覚になる。
去年は、わざわざ母の日だから電話をしなくとも話せたわけで。それをこうして『話す』ために行動を起こすと、なんだか関わり合うだけのことが特別に思えてしまう。
親子である絆は、2人きりだった分、強いのだと思ってきた。
だけどこうして離れてみてまた分かる、そういう絆もあるのだと、最近気付いていた。
お母さんの声は電話を通すと、直接聞くよりも優しく聞こえる。
それも新しい発見である。
『勉強ははかどってる?』
「うん。寮の実習室で勉強してるけど、集中できるよ」
「そうよね。そこは柚鈴のことだから心配はしてないけど、あんまり集中しすぎないようにね」
時間を忘れて勉強してしまうことがある柚鈴を心配しているのだと分かって、苦笑した。
そういえば、勉強しなさい、と言われたことは、あまりなかったような気がする。
元々、そんなに要領は良い方でもないので、勉強時間と結果が比例するわけではない。だから結局、勉強はしなきゃならないんだけど、そこは柚鈴の勉強に対する熱中度の問題なのだろう。
「それは程ほどに努力します。あの、お母さん、カーネーションのカゴのリボン、メッセージになってるの。後で見てね」
本題を切り出すと、お母さんは、え?と不思議そうな声をあげた。
どうやらまだ気づいていなかったらしいことに安心する。
ああ、もう気づいていたわ、なんて気配だったら、せっかくのサプライズなのにちょっと残念だった。
そんなことを思っていると。
『じゃあちょっと見てくるわね』
そのことが気になったらしいお母さんは言った。
「え、後でもいいのに」
引き止める声を聞いていないのだろうか。電話の向こうで、ねえちょっとと呼びかける声の後。
『志奈ちゃん、電話代わって』
ん?
なにやら思いもかけない言葉を聞いた気がする。
と思った時には、既にお母さんではない声に変わっていた。
『柚鈴ちゃん?』
「志奈さん…」
『ふふ。がっかりしちゃった?ごめんなさい。お母さんったら、携帯を持っていくという発想を忘れてしまったみたい』
クスクスと笑う声が聞こえれば、別に志奈さんが嫌なわけでもない。
いえ、と母に対して少し呆れた気持ちになるだけだ。
志奈さんとは、何度となく電話で話しているのだから、今更、新鮮味はない。
却って真向いで話すより、顔が見えない分気が楽でさえある。
そんな柚鈴の気持ちを知ってか知らずか、志奈さんは穏やかに会話を始めた。
『それで、どう?5月からの高校生活は』
「中々、大変ですね」
一瞬東郷先輩の顔が浮かんでしまい、つい、正直に答えてしまう。
志奈さんはクスクスと笑う。
『もう誰かから、申し込みでも受けた?』
「はぁ…なんだか、ちょっと面倒な感じになってる気がします」
『どんな面倒なの?』
問われれば、一瞬躊躇った。
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