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第三章 5月‐結
お姉さまの細やかな企み 5
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「うーん…。ここで志奈さんに暴露していいのか迷いしかありません」
『信用ないのね』
「志奈さんの影響力に関して信用しているからとも言えますけどね」
柚鈴は、受けた申し出のことを考えながら、柚鈴のことなら全力で常葉学園高等部に関わる意思があるらしい志奈に何を言うべきか本当に判断つかなった。
それが救いの神になると思えばいいのか、危険であると判断するべきなのか。
東郷先輩のことは、なんとかしなければならない問題であるのには違いない。答えは決まっている。つまり『きちんとお断りする』以外ない。
しかし向こうが『諦めない』という決断をしているように思えるから、ややこしい。それを折れさせることをどのようにすればいいのか。
だが、それを志奈さんに聞くのが正しいのか。
薫の前例のことを思えば、するなら早めに相談したほうがいいような気はしているが。
薫のように簡単に考えているから相談できないというより、柚鈴の場合、考えてすぎてしまっていて、相談できないでいる、と言う方が正しいのかもしれない。
そんなことを考えていると、薫のことでお世話になったからだろうか。ふと凛子先輩のことを思い出した。
凛子先輩が助言者に持った先輩の影響で成績が落ち、そのため志奈さんが間に立って異例のペア解除を成立させた、という件。
もう少し詳しく、志奈さんの口から聞いてみたい気がした。
「志奈さん。生徒会長の長谷川凛子さんのペアを、志奈さんが間にたって解除させたって本当ですか?」
『あら、そんな話を聞いたの?』
「ええ、まあ」
一体誰から?と聞かれたらどうしよう。
一瞬、そんなことを考えたが、志奈さんは気にしなかったらしい。
『成り行き上、そうなってしまっただけなんだけど、本当よ』
と本当に大したことないと言う様子で答えた。
志奈さんが物事をそんな風にしか感じてないのは、いつものことのようだけど、どんな成り行きがあると『そうなってしまう』というのだろう。
ちっとも分からない。
「大変じゃなかったですか?」
『あの時は大変だったのは凛子だったもの。私はそうすべきだろうと思ったことを、なるべく問題が起きないように対処しただけよ』
「それが難しいんだと思うんですけど」
『そう?う~ん…そう言われてしまうと、たまたま私の立ち位置ではそれが出来たとしか言いようがないけれど』
どこか困惑したような声が却って来て、話は立ち止まりそうになる。
柚鈴は、もう少し突っこんで聞いてみることにした。
「志奈さんは、そのことについて、どう思っているんですか?」
『え?』
「凛子先輩がペア解消になった原因というか。やっぱり組違いが上手くいかない原因だったんでしょうか?」
『ええ?柚鈴ちゃん、そんなことを考えていたの?』
意外といわんばかりに、志奈さんは驚いた声をあげる。
別に柚鈴が考えていたことでもなかったが、そういう噂がたっているのだ。
無言で、言葉の続きを待っていると、志奈さんはクスクスと笑った。
『原因なんて、私は考えたこともないわ。その話を知った時には、そこに結果があったもの』
単純な話をするように、志奈さんは言った。
『長谷川凛子は困っていて、ペアの相手は気づいていなかった。だから私は長谷川凛子が困っていることを教えてあげただけよ』
「だけ、ですか…」
『そうよ。それだけ。そうしたら結果的にペアの解除になってしまったの』
淡々とした話し方には、何かをやり遂げたような気持ちの背負いなどなく、本当に大したことのない些事でも思い出しているようだ。
そしてそのまま。ああ、なるほど、と繋げた。
『つまり柚鈴ちゃんには、まるで凛子が持っていた助言者のように、相手の状況をなかなか理解しない上級生から申し出があってるのね?』
『信用ないのね』
「志奈さんの影響力に関して信用しているからとも言えますけどね」
柚鈴は、受けた申し出のことを考えながら、柚鈴のことなら全力で常葉学園高等部に関わる意思があるらしい志奈に何を言うべきか本当に判断つかなった。
それが救いの神になると思えばいいのか、危険であると判断するべきなのか。
東郷先輩のことは、なんとかしなければならない問題であるのには違いない。答えは決まっている。つまり『きちんとお断りする』以外ない。
しかし向こうが『諦めない』という決断をしているように思えるから、ややこしい。それを折れさせることをどのようにすればいいのか。
だが、それを志奈さんに聞くのが正しいのか。
薫の前例のことを思えば、するなら早めに相談したほうがいいような気はしているが。
薫のように簡単に考えているから相談できないというより、柚鈴の場合、考えてすぎてしまっていて、相談できないでいる、と言う方が正しいのかもしれない。
そんなことを考えていると、薫のことでお世話になったからだろうか。ふと凛子先輩のことを思い出した。
凛子先輩が助言者に持った先輩の影響で成績が落ち、そのため志奈さんが間に立って異例のペア解除を成立させた、という件。
もう少し詳しく、志奈さんの口から聞いてみたい気がした。
「志奈さん。生徒会長の長谷川凛子さんのペアを、志奈さんが間にたって解除させたって本当ですか?」
『あら、そんな話を聞いたの?』
「ええ、まあ」
一体誰から?と聞かれたらどうしよう。
一瞬、そんなことを考えたが、志奈さんは気にしなかったらしい。
『成り行き上、そうなってしまっただけなんだけど、本当よ』
と本当に大したことないと言う様子で答えた。
志奈さんが物事をそんな風にしか感じてないのは、いつものことのようだけど、どんな成り行きがあると『そうなってしまう』というのだろう。
ちっとも分からない。
「大変じゃなかったですか?」
『あの時は大変だったのは凛子だったもの。私はそうすべきだろうと思ったことを、なるべく問題が起きないように対処しただけよ』
「それが難しいんだと思うんですけど」
『そう?う~ん…そう言われてしまうと、たまたま私の立ち位置ではそれが出来たとしか言いようがないけれど』
どこか困惑したような声が却って来て、話は立ち止まりそうになる。
柚鈴は、もう少し突っこんで聞いてみることにした。
「志奈さんは、そのことについて、どう思っているんですか?」
『え?』
「凛子先輩がペア解消になった原因というか。やっぱり組違いが上手くいかない原因だったんでしょうか?」
『ええ?柚鈴ちゃん、そんなことを考えていたの?』
意外といわんばかりに、志奈さんは驚いた声をあげる。
別に柚鈴が考えていたことでもなかったが、そういう噂がたっているのだ。
無言で、言葉の続きを待っていると、志奈さんはクスクスと笑った。
『原因なんて、私は考えたこともないわ。その話を知った時には、そこに結果があったもの』
単純な話をするように、志奈さんは言った。
『長谷川凛子は困っていて、ペアの相手は気づいていなかった。だから私は長谷川凛子が困っていることを教えてあげただけよ』
「だけ、ですか…」
『そうよ。それだけ。そうしたら結果的にペアの解除になってしまったの』
淡々とした話し方には、何かをやり遂げたような気持ちの背負いなどなく、本当に大したことのない些事でも思い出しているようだ。
そしてそのまま。ああ、なるほど、と繋げた。
『つまり柚鈴ちゃんには、まるで凛子が持っていた助言者のように、相手の状況をなかなか理解しない上級生から申し出があってるのね?』
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