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第三章 5月‐結
お姉さま、茶道部のお誘いを受けました 5
しおりを挟む「だから気負わずに来て頂きたいのよ。それにほら、先ほどみたいな人からのいい隠れ蓑にして頂いても構いませんわ」
「隠れ蓑、ですか?」
「気になる上級生が出来ましたって」
「…多分、そんなことを言ったとしても、さっきの先輩は諦めないと思うのですが」
柚鈴は嘘は上手ではないし、例え上手に言えたとしても、東郷先輩には通用しそうでもない。
違う考え方は受け入れない、そんなタイプだ。
「…まあ」
相原先輩もそこは納得したのだろう。何度目かのコロコロと鈴のなるような笑い声は、耳障りが良かった。
「わたくしには、先ほどの方は些細な問題ですけれど。小鳥遊さんはお優しそうだから、そうですわね。ではその件は、一度生徒会長に相談してはいかが?」
「凛子先輩にですか?」
「ええ。そのための生徒会でもあるし、長谷川凛子さんも真摯な物の考え方をされますもの。きっとあなたと一緒に悩んでくださいますわ」
「悩む…」
そう言われてしまえば、少々迷ってしまうが。
相原先輩は微笑んだまま頷いた。
「人の上に立つ、ということは、様々なやり方があると思います。人を上手に使える方もいれば、人が自然と動いてくれるという方もいらっしゃいます。どれが良いのかは私には判断つきませんわ。ただ長谷川凛子さんは、人の動かし方については少々不得手ではありますけれど、自らが動いて、自らが悩んで進もうとされますから。そういったところがあなたと似ているように思えますわ。だから相談しては如何かと」
「え…」
凛子先輩が、自分と似ていると言われて、柚鈴は少し驚いた。
そういう風に思ったことのなかった。
凛子先輩は、柚鈴とは違いなんでも真面目に取り組む生徒会長で、しっかりしていて、頼りがいもある。
その人に似ているなんて言われるとは思ってもいなかったのだ。
「凛子先輩に似ていますか?」
「ふふ。近い所はあるのではないかしら?」
頷かれて、少し嬉しくなる。
一目置いている人、しかも志奈さんのように斜め上をいくわけではない人であれば、それは素直にそう思えてしまう。
『自らが動いて、自らが悩んで進もうとする』
その言葉は、人を褒める言葉とは少々違うのかもしれないが、認めてくれる言葉には違いない。
そう思って、嬉しかった。
「解決してくれるかどうかは、お約束いたしませんけれど。悩みを相談することが出来るということは心を軽くして、行動する力を与えてくれます。そういったものは小鳥遊さんには必要ではないかと思いますの」
「…はい、ありがとうございます」
足された言葉に素直に頷く。
柚鈴の様子に深まった相原先輩の微笑みと温かな目線を受けて、つい赤くもなってしまう。
瞬間、拗ねたような志奈さんの顔が思い浮かんだ。
浮気だわっとでも言うだろうか。
実際そんな風にいうのかは謎ではあるけれど、志奈さんが拗ねると、とてつもなく面倒な気はする。
ごめんなさい、志奈さん、浮気じゃないです。感謝してるだけなので、感謝の気持ちとお礼は良いでしょう?
心の中で言った言葉は、ついどこか言い訳めいてしまう。
「あ、あの。茶会には参加させていただこうと思います」
「本当に?嬉しいわ」
ニコニコと相原先輩は微笑んでみせた。
それが正しいかどうか分からないが、人数合わせならば参加してもいいかもしれない、と思わせる程度に相原先輩の誘いは好意的に感じてしまったのだ。
茶道部のお茶会、というのも楽しそうだと思ってしまった。
志奈さんには念のため、『茶道部の茶会に参加する』と伝えておけば。
うん、きっと拗ねない。大丈夫。後で連絡しておこう。
こんな風に変に気を使う考えが浮かんだのことも。
今までからすると小さな変化だと言うことには、柚鈴は気づかなかった。
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