拝啓、お姉さまへ

一華

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第三章 5月‐結

お姉さま、茶道部のお誘いを受けました 4

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お、面白いこと…
さっきの東郷先輩の件が面白いこと…


余裕を感じさせる答えに、くらりと眩暈を感じてしまうった。

「曖昧な答えよね。ふふ、ごめんなさい。茶道部の今度のお茶会は、後日行う『多数のお客様』をお呼びする大寄せのお茶会の小規模版となります。プレ開催みたいなものかしら」
「プレ開催?」
「この時期のお茶会は、4月からの新入部員にとっては初めての催しですから」
そう言われて、柚鈴はああ、と納得した。
既に部活動を始めた1年生も、そろそろ一か月目。
各部活では、春の大会も行われたりしている。
そういったものの立ち位置にあるのが、茶道部では今度のお茶会ということらしい。

「それで急に大人数お招きする、言うわけにもいかなくて。体育祭間近ということもありますでしょう?大規模に用意してしまっては南組の方にも怒られてしまいます。だから人数に制限をさせて頂いてますの。それに対してどういった基準で招待客を選んでいるかは、茶道部だけの秘密。基準を明らかにするとそれはそれで厄介事も多くなりますの」
「厄介事、ですか?」
「なぜ私は呼ばれないか、とか。茶道部は歴史ある部活ですのでシガラミもございます。この時期の茶会をペア推進の意味合いを込めたお茶会にしたのは昨年からですが、それもおかげさまで中々良い評価を頂いておりますの」
相原先輩は、茶道部の部長らしく誇らしげに言う。
毎年、定例の物をしているわけではなく、その年々で工夫を凝らしているということだろうか。
遥先輩も、茶道部に関しては一目置いているような発言をしていたし、もしかしたら人気のイベントのようなものなのかもしれない。
茶会を『イベント』というと、ちょっととらえ方は違うのかもしれないけれど。
そんなことを考えている間に、相原先輩は言葉を続けた。

「だから、あなたを招待した理由も言えないませんの。でもそうね…少しばかり毛色が違う子がいた方が、変に勘ぐりをされなくて助かる所もある、と思って頂いても良いかしら」

…それだとまるで柚鈴を選んだのは、今回の招待客に対する茶道部の基準を分かりにくくするための目隠しみたいだけど。しかし、そう言われた方が納得できるような気がする。
やっぱり柚鈴自身、自分がわざわざ選ばれる、何かを持っているとはどうしても思えなかった。

よかった…私はやっぱりごく普通の子。
当たり前のことが、ちょっと安心する。
ごく短かに、普通でない出来事が起こりすぎていて、戸惑うことが多すぎたのだ。
自分を見失いたくはないものである。

プレ開催の人気の茶会に、本来はさほど必要のない人間も招待客に入れる。それが柚鈴だった。
その方が知らない人気の場所に呼ばれる理由としては受け入れやすい。
茶道部の常葉学園での立ち位置がどんなものなのかは想像もつかないが、こんな部長が仕切っているのなら、さぞや盛んなんだろうと思える。

更に安心させるようにゆったりと穏やかに相原先輩は続けた。

「私たち茶道部は招待した茶会で、絶対に助言者メンター探しをなさいなんて当然言いませんわ。特に今回の茶会に参加するのは上級生の助言者メンターの資格を有する人たちは、先ほどの方のように強引なお誘いなどしない人達よ。引く手数多で、相手に困ってもいないもの。だからこそ最初のお客様に相応しい。…なんて言い方は駄目ね」
口元に秘密を表すように人差し指を立てて、おどけてみせる。
招待客の基準は言えないから、と言うことだろう。
その様子は、先ほどまでとは打って変わって、人懐こく愛らしい。
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