拝啓、お姉さまへ

一華

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第三章 5月‐結

お姉さま、茶道部のお誘いを受けました 3

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「躾が悪いこと」
愛らしい笑い声の後に、音色をしっとりとしたものに変えて、零れた言葉には、どきりとするほど迫力がある。
これには東郷先輩も無意識に一歩下がった。

「…あなたがどうしてもと仰るなら、仕方ございません。3年東組で先にあなたの助言者メンターの方とお話をするしかございませんね」
「お、お姉さまは関係ないでしょう!?」
予想外の流れだったのか、東郷先輩は明らかに動揺したようだ。
相原先輩の方は、小首を傾げて見せる。
「関係ない?ペアの指導をする役割を担うのが助言者メンターたる者の務めです。そうでなくては何を持って助言者メンターのバッチを持ちますの?」
相原先輩は肩を竦めて、ため息をついた。

「なんでしたら生徒会でも構いませんわ。どちらにせよ、一度あなたの態度が相談されて恥ずかしいものでないか、相応しい方に相談なさいませ。誰に聞いたって結構です。下級生は自由に自分の助言者メンターを持つ持たないの選択が出来るんですから」
「…」
「3年東組か生徒会か。どちらがよろしくて?仕方ございません。わたくし、これからご一緒してさしあげますわ」
にっこりと笑った相原先輩の言葉に、東郷先輩は視線を彷徨わせてから、そっぽを向いた。
「…わかりました。今日は一度席をお譲りします」
「あら、ありがとう。感謝いたします」

にっこりと笑った相原先輩は、すぐに興味を失ったように柚鈴の方を見く。
東郷先輩は不機嫌そうにこちらをじっと見てから、渋々立ち去っていく。その姿を目で追いながら、柚鈴は幾ばくかホッとしつつ、相原先輩に向き合った。

向き合う相原先輩は、麗しい先輩にしか見えず、あの東郷先輩をあしらった迫力がどこから出て来たか分からない程だ。
とは言え、この目で見ていたので、この人は絶対に怖い人だ。
怒らせたくはない。自然と深々と頭を下げてお礼を言っていた。
「ご迷惑をおかけしました」
「ふふ。毎年こういったことは何かしら起きるものだから、気になさらないでね。というよりもご苦労様でした、と申し上げるべきかしら。中間考査が終わったらすぐ体育祭もあるでしょう?忙しくなる前にと気が焦る2年生も多くなりますから」
拍子抜けするほどに穏やかに労わられて、柚鈴は少し緊張を解いた。
志奈さんも言っていたけれど、これが毎年当然のような出来事なのか。
それに言われてみれば、体育祭も5月の終わりだ。
東組は中間考査最優先だったが、他組では結構話題になっているらしいのだ。

一先ずはどっと疲れたような気持にもなり、早く寮に帰りたい気持ちになりつつ、とりあえず先の会話を促すことにした。

「それで、相原先輩は茶道部主催の招待状について、でしたね」
「ええ。是非参加して頂きたいの。いかがかしら?」
「…先ほど、東郷先輩にもお話しましたけど、私、ペアを持つつもりは本当にないんですが」
もし怒られたらどうしようと思いつつ、柚鈴は恐る恐る本心を告げた。
もう少し考えて話せばいいのかもしれないが、どうせ交渉術なんてものは持ち合わせていない。
ままよ、という心持ちである。
だが、今回は相手の方は気にしないというようににっこりと笑顔を返してくれた。

「構いませんわ。今回の茶会は勿論そういった狙いもありますけど、本来、中々触れ合わない組や学年の生徒をお呼びして、お茶会を楽しみましょうと言うものですもの。楽しみに来ていただけるなら、まずはそれだけで」
「…それ。どうして私なんでしょう?」
「え?」
「いえ、その。学年主席の明智さんは分かるんですけど、特待生の子は他にもいますし。それとも東組の特待生の生徒は全員声を掛けられているのでしょうか?」
「いいえ。1年生の東組で声を掛けているのは、2人だけよ。野立てを模しての形式を取る予定だけれど、そんなに大人数お呼びはしていないの」
「…それにどうして私が呼ばれたんでしょうか?」
釈然としない様子の柚鈴に、相原先輩は曇りない笑顔で答えた。
「あなたが面白そうだと思ったから」
「え?」
「現に今だって、あなたに会いにきたら面白いことに出会えたもの。大正解だったと思うわ」
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