拝啓、お姉さまへ

一華

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第三章 5月‐結

お姉さま、茶道部のお誘いを受けました 2

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「小鳥遊さん、あなたが何故、そこまで助言者を不要と思うのかは私には分からないわ。でも私も、一度声を掛けたのに、何の事情も知らずに引き下がれない。ましてや、西や北の組違いの上級生に憧れてなんて事情なら尚更よ」
「……」
色々と矛盾がある発言を堂々と言ってしまうだけで、正当性を帯びるような気がするのは何故だろう。
返す言葉を見失ってしまい、柚鈴は体を固くするしかなかった。

その様子を楽しそうに。
クスクスと場違いにも思える笑い声が間に入るように響いた。

そちらを見ると。
笑い声の主は笑う口元を手で隠し、どこか品のある女生徒だった。編み込みを使用したきっちりしたお団子頭と、切れ長だが優しさを感じる黒く大きな瞳は細められて、艶っぽい。上級生なのだろうとすぐに分かる。
着物でも着たら良く似合いそうな和の雰囲気を纏っている。

ど、どなた様なんだろう。

突然の飛び入りに目を丸くした柚鈴は、一瞬その人と目を合わせた。にっこり笑顔が返されて、東郷先輩の方へ静かに向き直る。
「まあ、聞き捨てなりませんわね。そんな風に東組の生徒が同じ組の下級生に対して、西や北組に敵意を植え付けるような言葉なんて」
柔らかく、おっとりとした優し気な声は微塵も険を含んではいない。
だが、その発言の内容はしっかりと東郷先輩を牽制していた。
クスクスと愛らしさを感じさせる笑みはそのままに、今度は柚鈴へと向き直り、品よく頭を下げる。

「初めまして、小鳥遊柚鈴さん。わたくし、3年北組の相原花蓮かれんと申します。茶道部の部長をしておりまして、本日は茶会の出欠の有無を確認しに参りました」
「あ、はい…」
「でも、来てよかった。こんなに面白い場面に出会えるなんて思ってもおりませんでしたもの」

コロコロと鈴の音のように笑った相原先輩は、流し見るように後ろを振り返り、東郷先輩を分かりやすく上から下まで眺めた。
その視線に不快そうな表情を見せた東郷先輩にクスリと笑って、口元を上品に抑えながら柔和な表情を作った。
「まあ、怖い。それが上級生に対する態度かと思いますと、東組の品位を疑ってしまいますわ」
「…失礼いたしました」
そこは一学年差と言えど、明確に上下関係があるのだろう。
渋々といった様子で、東郷先輩が目線を外し謝ると、相原先輩はにっこりと笑った。

「良いのよ。些細なことをいつまでも気にしないことにしているの」
笑っているのに、何故か怖い笑顔。柚鈴は背中に寒さを感じてしまう。

「小鳥遊さん、あなたとお話がしたいのだけど構わないかしら?」
「は、はい」
思わず恐怖のまま、直立不動で返事を返してしまった。

「良かった。先日、茶道部からの茶会の招待状を受け取ったと思うのだけど、ご参加いただけるかしら?」
「待ってください」
相原先輩の誘いの返事をする前に、遮るように声を上げたのは、やはり東郷先輩だった。

「小鳥遊さんの都合を確認していたのは私が先です。上級生とはいえ、順番は順番だと思います」
「……あなた、お断りされていたわよね?」
小首を傾げて、相原先輩が愛らしく言った。

その通り、お断りはしました!
心の中で同意するものの、柚鈴は明らかに憤りを感じている東郷先輩と、それに対峙している相原先輩の静かな迫力に押されて、言葉も出ない。
「私は納得していません」
「つまり…あなたが納得するまで話が続くということ?」
はっきりと言った東郷先輩の様子に。
きょとん、とした表情で相原先輩は言うと、少し間を置いて、再度コロコロと笑う。
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