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第三章 5月‐結
お姉さま、デートの時間です 2 ★幸の時間★
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バスは空いていて、隣り合わせて座ることが出来た。
上級生とのんびりお話する機会に恵まれることなど、そうそうない。せっかくのこの時間を逃す手はない。
幸は色々聞いてみたかったことを切り出すことにした。
「沢城先輩は、何組なんですか?」
「私ですか?私は西組です」
「あぁ、やっぱり」
「やっぱり?」
不思議そうな表情を見せた沢城先輩に、幸はにっこり笑って頷いた。
GWの時に考えた推理を自慢げに披露することにした。
「ごきげんようって挨拶するのは、北か西の生徒のイメージで。そうなんじゃないかなって思っていたんです」
そう言われて、沢城先輩は納得したように頷いた。
「あぁ、そういえば確かに教室では皆さん『ごきげんよう』ですね」
「東組や南組ではあまり使わないでしょう?」
再度、なるほど、と感心したように相槌を返してくれるので、幸は更にニコニコとしてしまう。
その嬉しそうな表情を見て、沢城先輩は柔らかな雰囲気を作って、少し間を持たせてから、口を開いた。
「そういえば春野さんは最初から『ごきげんよう』と返してくれましたね」
「ごきげんようって挨拶されたので。それは、ごきげんようで返した方が良い気がしまして」
「なるほど。同じ返事を返して貰えるって確かに嬉しいです。ありがとうございます」
細やかなことなのに、沢城先輩がきっちりお礼を言ってくれるので、思わず目を丸くしてしまう。
「いえ。別にお礼を言われることは、全然」
首を振ると沢城先輩は変わらずにこにこと笑っている。
その笑顔に、幸はどこか気恥ずかしいような、でも温かな気持ちを覚えた。
本当に細やかなことなのに、見逃さずにお礼を言われることは、なんだか嬉しい。
やっぱりどこか不思議な人だなあと、改めて思わずにはいられなかった。
沢城先輩は、のんびりとした口調で会話を続ける。
「そういえば、GWのお休みは常葉学園出身の遠縁の方とお会いしたんですよね?何か面白いお話は聞けましたか?」
大好きな遠縁、香苗さんの話になり、幸は頬を緩めた。
その時のことを思い出せば、自然とそうなってしまうのだ。
「お話は沢山したんですけど、どちらかと言えば今の常葉学園の話を、楽しそうに聞かれました」
「そうなんですか?」
「助言者制度というのが、新しい制度だから気になるみたいで」
「以前は違ったんでしたよね?」
「はい。私の遠縁の方の時は、姉妹制度と言っていたらしくて。特進科がない名門のお嬢様学校だったと聞いてます。沢城先輩もご存じですか?」
自分と違い、沢城先輩の住まいが近いと聞いていたことを思い出して聞いてみる。
沢城先輩は頷いた。
「私は元々地元がこの辺りなので、少しだけ両親から聞いてはいましたよ。通ったことがあるわけではないので、どんな制度があるかまでは知らなかったようですけど。そういえば学園の方針が今みたいに変わったからこそ進学出来ましたけど、受験を決めた時には随分心配されました」
「そうなんですか?」
「ええ。私はお嬢様ではありませんから」
そう言われて、幸は首を傾げた。
柔らかく笑う姿は、育ちの良さを感じる。
その雰囲気も、沢城先輩が西か北の生徒だろうと思った理由の一つなのだが。
それは単に人柄なんだろうか?
そもそも生粋のお嬢様、というものを幸は知らないので、比べようがないのかもしれない。
遠縁である香苗さんも、お嬢様だったわけでもない。
ただ親戚一同納得の品行方正、温厚篤実。
どこに出しても文句なしの淑女と言えるとは思う。
身内のひいき目と思われても仕方ないので、口にはしないけれど、当時の常葉学園に生粋のお嬢様がいても見劣りしなかったはず、と妙に自信があるのだ。
上級生とのんびりお話する機会に恵まれることなど、そうそうない。せっかくのこの時間を逃す手はない。
幸は色々聞いてみたかったことを切り出すことにした。
「沢城先輩は、何組なんですか?」
「私ですか?私は西組です」
「あぁ、やっぱり」
「やっぱり?」
不思議そうな表情を見せた沢城先輩に、幸はにっこり笑って頷いた。
GWの時に考えた推理を自慢げに披露することにした。
「ごきげんようって挨拶するのは、北か西の生徒のイメージで。そうなんじゃないかなって思っていたんです」
そう言われて、沢城先輩は納得したように頷いた。
「あぁ、そういえば確かに教室では皆さん『ごきげんよう』ですね」
「東組や南組ではあまり使わないでしょう?」
再度、なるほど、と感心したように相槌を返してくれるので、幸は更にニコニコとしてしまう。
その嬉しそうな表情を見て、沢城先輩は柔らかな雰囲気を作って、少し間を持たせてから、口を開いた。
「そういえば春野さんは最初から『ごきげんよう』と返してくれましたね」
「ごきげんようって挨拶されたので。それは、ごきげんようで返した方が良い気がしまして」
「なるほど。同じ返事を返して貰えるって確かに嬉しいです。ありがとうございます」
細やかなことなのに、沢城先輩がきっちりお礼を言ってくれるので、思わず目を丸くしてしまう。
「いえ。別にお礼を言われることは、全然」
首を振ると沢城先輩は変わらずにこにこと笑っている。
その笑顔に、幸はどこか気恥ずかしいような、でも温かな気持ちを覚えた。
本当に細やかなことなのに、見逃さずにお礼を言われることは、なんだか嬉しい。
やっぱりどこか不思議な人だなあと、改めて思わずにはいられなかった。
沢城先輩は、のんびりとした口調で会話を続ける。
「そういえば、GWのお休みは常葉学園出身の遠縁の方とお会いしたんですよね?何か面白いお話は聞けましたか?」
大好きな遠縁、香苗さんの話になり、幸は頬を緩めた。
その時のことを思い出せば、自然とそうなってしまうのだ。
「お話は沢山したんですけど、どちらかと言えば今の常葉学園の話を、楽しそうに聞かれました」
「そうなんですか?」
「助言者制度というのが、新しい制度だから気になるみたいで」
「以前は違ったんでしたよね?」
「はい。私の遠縁の方の時は、姉妹制度と言っていたらしくて。特進科がない名門のお嬢様学校だったと聞いてます。沢城先輩もご存じですか?」
自分と違い、沢城先輩の住まいが近いと聞いていたことを思い出して聞いてみる。
沢城先輩は頷いた。
「私は元々地元がこの辺りなので、少しだけ両親から聞いてはいましたよ。通ったことがあるわけではないので、どんな制度があるかまでは知らなかったようですけど。そういえば学園の方針が今みたいに変わったからこそ進学出来ましたけど、受験を決めた時には随分心配されました」
「そうなんですか?」
「ええ。私はお嬢様ではありませんから」
そう言われて、幸は首を傾げた。
柔らかく笑う姿は、育ちの良さを感じる。
その雰囲気も、沢城先輩が西か北の生徒だろうと思った理由の一つなのだが。
それは単に人柄なんだろうか?
そもそも生粋のお嬢様、というものを幸は知らないので、比べようがないのかもしれない。
遠縁である香苗さんも、お嬢様だったわけでもない。
ただ親戚一同納得の品行方正、温厚篤実。
どこに出しても文句なしの淑女と言えるとは思う。
身内のひいき目と思われても仕方ないので、口にはしないけれど、当時の常葉学園に生粋のお嬢様がいても見劣りしなかったはず、と妙に自信があるのだ。
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