147 / 282
第三章 5月‐結
お姉さま、デートの時間です 5 ★幸の時間★
しおりを挟む
にっこりと沢城先輩に促されて、幸はオムライスをスプーンですくって口に運んだ。
ふんわりとした半熟卵と相性抜群のバターライスの味がほろりと口の中で広がって。
美味しい…!
幸せな気分でそのまま、満面の笑みになってしまう。
思わず感想を言うことを忘れて、そのままもう一口もう一口と食べ進め。
しばらくしてから、楽しそうに幸を見つめたままの沢城先輩に気付いてハッとした。
「…す、すみません」
「え?あ、こちらこそ、見ていて申し訳ないです。とっても美味しそうに食べてくれるなあと嬉しくなってしまって」
その言葉に反応して、見てみると沢城先輩はまだ一口も食べていない。
もしや幸の感想を待っていたのだろうか。
そう思って幸は動揺してしまう。
「すごく美味しいです。思わず沢城先輩の存在を完全に忘れていました」
そう言うと、沢城先輩は一瞬瞬きしてから、顔を背けて、噴き出した。
「そ、そうですか。忘れられてしまいましたか」
「え、あ…はい。すみません」
「いえ。喜んで頂けて何よりです」
そういって、ふと悪戯を思いついたように沢城先輩は目を輝かせた。
自分のハンバーグを一口分切って、さらに器用にその上に目玉焼きの黄身をすくって乗せてから、フォークに取り、幸に笑いかける。
「良ければ、これも食べてみませんか?とても美味しいですよ」
「え?」
「はい、どうぞ」
そのまま、幸の方へ。
フォークを持った手がすっと動いて。
思わず、そのハンバーグの吸い寄せられるように、口を開いていた。
そのまま、ぱくっと一口。
今度は口の中に、なんともジューシーなハンバーグの旨味が広がっていく
「美味しい…」
先に食べていたオムライスとの相性も抜群。
頬がゆるゆると緩んでしまう。
幸の様子を見ている沢城先輩は、まるで小動物におやつでも与えたように幸せそうな顔をしていたが、それに気付く余裕などはない
「お肉とソースのバランスが絶妙です!玉子もトロトロで、幸せです!」
「そんなに喜んで頂けると私も嬉しいです。もう一口食べますか?」
「え?」
一瞬目を輝かせてから、ハッとする。
沢城先輩はさっきから自分は全く食べていないのだ。そうして幸ばかりが食べている。
もちろん、ご両親の料理なら食べなれているのかもしれないが、このまま与えられるままに食べてしまっては、大切なデザートが入らなくなるかもしれない。
そう思えば無闇に与えられたからと食べるわけにはいかなかった。
「さ、沢城先輩が私のオムライスも食べて下さるなら」
「オムライスをですか?え、でも。念願のオムライスですよね?」
沢城先輩は目を丸くして、理由が分からないと言わんばかりに聞き返した。
幸は大きく頷いて肯定する。
「そうです!オムライスは大好きです!とっても好きです」
「なら私が頂くわけには。もしかしてお口に合いませんでしたか?」
眉を下げて悲しげな表情を見せた沢城先輩に、幸は慌てて勢いよく首を振ってみせた。
「とても美味しいです。ハンバーグもとてもとても美味しかったです。でも私のお腹の許容量は限りがあるんです。以外と沢山入りますけど、一応一般女性並みしか入らないと思ってます」
「…そ、そうでしょうね」
勢いに押されて、ちらり、と沢城先輩が幸のお腹を見たような気がする。
それでどう思ったかはわからないけど、同意を得ることの方が大切なので細かいことは気にしない。
「ですので。このあとのデザートの居場所はきちんと考えて確保しておかないとならないんです!」
「……ああ。デザートですか」
沢城先輩は少し間を持たせてから、納得したように頷いた。
ふんわりとした半熟卵と相性抜群のバターライスの味がほろりと口の中で広がって。
美味しい…!
幸せな気分でそのまま、満面の笑みになってしまう。
思わず感想を言うことを忘れて、そのままもう一口もう一口と食べ進め。
しばらくしてから、楽しそうに幸を見つめたままの沢城先輩に気付いてハッとした。
「…す、すみません」
「え?あ、こちらこそ、見ていて申し訳ないです。とっても美味しそうに食べてくれるなあと嬉しくなってしまって」
その言葉に反応して、見てみると沢城先輩はまだ一口も食べていない。
もしや幸の感想を待っていたのだろうか。
そう思って幸は動揺してしまう。
「すごく美味しいです。思わず沢城先輩の存在を完全に忘れていました」
そう言うと、沢城先輩は一瞬瞬きしてから、顔を背けて、噴き出した。
「そ、そうですか。忘れられてしまいましたか」
「え、あ…はい。すみません」
「いえ。喜んで頂けて何よりです」
そういって、ふと悪戯を思いついたように沢城先輩は目を輝かせた。
自分のハンバーグを一口分切って、さらに器用にその上に目玉焼きの黄身をすくって乗せてから、フォークに取り、幸に笑いかける。
「良ければ、これも食べてみませんか?とても美味しいですよ」
「え?」
「はい、どうぞ」
そのまま、幸の方へ。
フォークを持った手がすっと動いて。
思わず、そのハンバーグの吸い寄せられるように、口を開いていた。
そのまま、ぱくっと一口。
今度は口の中に、なんともジューシーなハンバーグの旨味が広がっていく
「美味しい…」
先に食べていたオムライスとの相性も抜群。
頬がゆるゆると緩んでしまう。
幸の様子を見ている沢城先輩は、まるで小動物におやつでも与えたように幸せそうな顔をしていたが、それに気付く余裕などはない
「お肉とソースのバランスが絶妙です!玉子もトロトロで、幸せです!」
「そんなに喜んで頂けると私も嬉しいです。もう一口食べますか?」
「え?」
一瞬目を輝かせてから、ハッとする。
沢城先輩はさっきから自分は全く食べていないのだ。そうして幸ばかりが食べている。
もちろん、ご両親の料理なら食べなれているのかもしれないが、このまま与えられるままに食べてしまっては、大切なデザートが入らなくなるかもしれない。
そう思えば無闇に与えられたからと食べるわけにはいかなかった。
「さ、沢城先輩が私のオムライスも食べて下さるなら」
「オムライスをですか?え、でも。念願のオムライスですよね?」
沢城先輩は目を丸くして、理由が分からないと言わんばかりに聞き返した。
幸は大きく頷いて肯定する。
「そうです!オムライスは大好きです!とっても好きです」
「なら私が頂くわけには。もしかしてお口に合いませんでしたか?」
眉を下げて悲しげな表情を見せた沢城先輩に、幸は慌てて勢いよく首を振ってみせた。
「とても美味しいです。ハンバーグもとてもとても美味しかったです。でも私のお腹の許容量は限りがあるんです。以外と沢山入りますけど、一応一般女性並みしか入らないと思ってます」
「…そ、そうでしょうね」
勢いに押されて、ちらり、と沢城先輩が幸のお腹を見たような気がする。
それでどう思ったかはわからないけど、同意を得ることの方が大切なので細かいことは気にしない。
「ですので。このあとのデザートの居場所はきちんと考えて確保しておかないとならないんです!」
「……ああ。デザートですか」
沢城先輩は少し間を持たせてから、納得したように頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる