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第三章 5月‐結
お姉さま、デートの時間です 10
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「だって。1年生の私がこれだけ、助言者問題に振り回されているのに、そんなことが可能なんだとびっくりしまして」
「そうね。あの子は…岬紫乃舞はちょっと変わっていたから」
岬紫乃舞さん。
志奈さんの口から出た初めて聞く名前を柚鈴は心の中で一度呟いた。
「…志奈さんに変わってるなんて言われてしまうとは、その人は大概ですね」
「ひどいっ。柚鈴ちゃん、その言い方はあんまりだわ」
「そうでしょうか?ユニークな先輩だったとは聞いてますけど」
わざとらしく傷ついた、という言い方をする志奈さんを流すと、向こうも大して気にはしてない様子で頷いた。
「そうね。文化部の中でも茶道部活躍していたのは彼女が部長をしてからだもの。一目置かれる存在ではあったと思うわ」
志奈さんは相槌を打ってから身を乗り出してきて、じぃっと柚鈴を見つめた。
それから考え込むようように沈黙する。
「あの、なんでしょう?」
頬杖をついて柚鈴を見つめ続ける志奈さんに、身じろぎして聞いた。
「考えているの」
「は?」
「どうして柚鈴ちゃんは、そのことをわざわざ私に報告するんだろうって」
「どうしてって」
問われている意味が分からずに、柚鈴は怪訝そうな表情を浮かべる。
「なあに?」
言わなかったら、やきもちとか、変な心配しそうだから。と心の中で呟きつつ、
興味アリマス!の表情でこちらを見続ける相手に逆に問いかけた。
「志奈さんは、なんでだと思ったんですか?」
「ん~…考えられるとしたら、今の所、二つかしら」
志奈さんは小首を傾げて、実に愛らしく言葉を選んだ。
「一つは単なる世間話という線」
柔らかな雰囲気に不似合な程、纏められた考えを、ゆったりと話し出す姿は、なんのかんの言いながら常葉学園生徒会会長として、全校生徒を率いてきたという過去には相応しい。
本人は全くそんなことお構いなしではあるが。
「特に報告ではなくて、なんとなく学園の卒業生である私に近況を話したくなった。この場合、私は柚鈴ちゃんが茶道部の誰か、もしくは招待客に対する憧れを持っていることを心配しなくてはならないわね。世間話なんて好みそうでもない柚鈴ちゃんが、わざわざここまで出向いてそんな話を私にするくらい浮かれている、ということが推察されるもの」
「…それはないでしょうね」
思わず、相槌を打ってしまうと、志奈さんは嬉しそうに頬を緩めた。
「だとすると、もう一つは私への気遣い、とか」
核心にさらりと触れた志奈さんは柚鈴の表情を伺った。
まさにそれこそが大正解。
なのだが、その言葉を発した志奈さんが、とても嬉しそうにこちらを見ている。
「ごきげん、ですね」
「はい。ごきげんです。柚鈴ちゃんが、私のことを好きになってきてくれてるのかなあと思うから」
「……」
その言葉に、柚鈴は思わず絶句した。
やきもちの心配をすることが、志奈さんを好きになってきているってことになるの!?
そんなことは全く一切考えてなかっただけに、言い返す言葉が見つからない。見つからないどころか、そのだったの?いやいやそんなバカなと大混乱してしまう。
つまりかなり動揺してしまっているのだ。
志奈さんは勢いのまま、畳み込んでくる。
「だってそうでしょう?私が柚鈴ちゃんが気が変わって助言者作りをし始めた、と心配したりしないように気を使ってくれるなんて。これは二人の関係が変わってきた証拠でしかないわ」
「そんな大げさのものじゃないです!」
「柚鈴ちゃんがどんなにつれなくしたって、私には大切な話だもの。ここは大げさにさせてもらうわ」
両手に握りこぶしを作って、きっぱりと言い切られ。
柚鈴は二の句が継げなくなってしまった。
「そうね。あの子は…岬紫乃舞はちょっと変わっていたから」
岬紫乃舞さん。
志奈さんの口から出た初めて聞く名前を柚鈴は心の中で一度呟いた。
「…志奈さんに変わってるなんて言われてしまうとは、その人は大概ですね」
「ひどいっ。柚鈴ちゃん、その言い方はあんまりだわ」
「そうでしょうか?ユニークな先輩だったとは聞いてますけど」
わざとらしく傷ついた、という言い方をする志奈さんを流すと、向こうも大して気にはしてない様子で頷いた。
「そうね。文化部の中でも茶道部活躍していたのは彼女が部長をしてからだもの。一目置かれる存在ではあったと思うわ」
志奈さんは相槌を打ってから身を乗り出してきて、じぃっと柚鈴を見つめた。
それから考え込むようように沈黙する。
「あの、なんでしょう?」
頬杖をついて柚鈴を見つめ続ける志奈さんに、身じろぎして聞いた。
「考えているの」
「は?」
「どうして柚鈴ちゃんは、そのことをわざわざ私に報告するんだろうって」
「どうしてって」
問われている意味が分からずに、柚鈴は怪訝そうな表情を浮かべる。
「なあに?」
言わなかったら、やきもちとか、変な心配しそうだから。と心の中で呟きつつ、
興味アリマス!の表情でこちらを見続ける相手に逆に問いかけた。
「志奈さんは、なんでだと思ったんですか?」
「ん~…考えられるとしたら、今の所、二つかしら」
志奈さんは小首を傾げて、実に愛らしく言葉を選んだ。
「一つは単なる世間話という線」
柔らかな雰囲気に不似合な程、纏められた考えを、ゆったりと話し出す姿は、なんのかんの言いながら常葉学園生徒会会長として、全校生徒を率いてきたという過去には相応しい。
本人は全くそんなことお構いなしではあるが。
「特に報告ではなくて、なんとなく学園の卒業生である私に近況を話したくなった。この場合、私は柚鈴ちゃんが茶道部の誰か、もしくは招待客に対する憧れを持っていることを心配しなくてはならないわね。世間話なんて好みそうでもない柚鈴ちゃんが、わざわざここまで出向いてそんな話を私にするくらい浮かれている、ということが推察されるもの」
「…それはないでしょうね」
思わず、相槌を打ってしまうと、志奈さんは嬉しそうに頬を緩めた。
「だとすると、もう一つは私への気遣い、とか」
核心にさらりと触れた志奈さんは柚鈴の表情を伺った。
まさにそれこそが大正解。
なのだが、その言葉を発した志奈さんが、とても嬉しそうにこちらを見ている。
「ごきげん、ですね」
「はい。ごきげんです。柚鈴ちゃんが、私のことを好きになってきてくれてるのかなあと思うから」
「……」
その言葉に、柚鈴は思わず絶句した。
やきもちの心配をすることが、志奈さんを好きになってきているってことになるの!?
そんなことは全く一切考えてなかっただけに、言い返す言葉が見つからない。見つからないどころか、そのだったの?いやいやそんなバカなと大混乱してしまう。
つまりかなり動揺してしまっているのだ。
志奈さんは勢いのまま、畳み込んでくる。
「だってそうでしょう?私が柚鈴ちゃんが気が変わって助言者作りをし始めた、と心配したりしないように気を使ってくれるなんて。これは二人の関係が変わってきた証拠でしかないわ」
「そんな大げさのものじゃないです!」
「柚鈴ちゃんがどんなにつれなくしたって、私には大切な話だもの。ここは大げさにさせてもらうわ」
両手に握りこぶしを作って、きっぱりと言い切られ。
柚鈴は二の句が継げなくなってしまった。
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