159 / 282
第三章 5月‐結
お姉さま、デートの時間です 17
しおりを挟む
「それなら美味しくならないとおかしくないかしら?」
「何故、そう確信されているのか、甚だ疑問です」
「疑問かしら?じゃあ、逆のことをして、美味しくなるかどうか実験してくれてもいいわよ」
志奈さんは、ナイフとフォークを置いて、にっこり笑った。
「実験?」
「はい、どうぞ」
何かを待ち構えるような態度で、しばし間を持たせた様子に、嫌な予感しかせず、何を実験したいのかなど聞きたくない。
しかし期待に満ち溢れた視線に耐えかねて、柚鈴は恐る恐る聞いた。
「どういう意味ですか?」
「だから。柚鈴ちゃんが、ロコモコを私に一口くれるんでしょう?そしてそれを私が美味しいと感じるかどうかという実験」
「……。食べたいならどうぞ?」
こちらのランチのお皿を、取りやすいように志奈さんの方に寄せると、すぐに不満そうな表情を見せた。
「柚鈴ちゃん、分かっててやってるでしょう?」
「すみません。分かっててやってます。姉として察したら黙って諦めてください」
「う。姉として、と言われると…」
すかさず言い返した言葉に、志奈さんはショックそうな顔を見せた。
柚鈴に食べさせてもらいたいという願望が強くあるのだろう。
だが、姉として、という言葉は柚鈴が思っていた以上に効果的に、志奈さんを躊躇わせることになったらしい。
姉としての自覚を持たせるって、意外と使える。
密かに柚鈴は思った。
志奈さんは、それでもしばらく諦めきれなかった様子で間を置いてなら、がっくりと項垂れた。
「…察した方がいい気がしてしまうわね」
「ありがとうございます」
思わずほっとして。柚鈴はお礼を言った。
悔しそうにため息をついた志奈さんは「実験なのに」とブツブツと呟く。
後々怖くも思えたけれど、すぐに諦めた様子で、自分のスプーンで一口ロコモコを食べてくれた。
「美味しい」
「そうですよね」
幸せそうな志奈さんの笑みに、柚鈴も相槌を打つと、まだ残っていた悔しい気持ちが湧き上がったのか、志奈さんはしつこく言葉を足した。
「ここに柚鈴ちゃんの愛情というスパイスが加わったらもっと美味しかったと思うのに、実験出来なくて残念だわ」
「そんなことないですよ」
「やってもいないのに、どうして言い切れるの?」
「そ、それは、同じ言葉をお返しします」
「……」
「……」
少し間があって。
クスクスと笑い声が聞こえてくる。
志奈さんは何故か嬉しそうだった。
「どうしたんですか?」
そう柚鈴が聞くと、志奈さんは目を細めた。
「なんだか随分、柚鈴ちゃんと一緒の時間が自然になってきたなあと思って」
「そうですか?」
「はい。そうだと思います。日々、一歩ずつ。私の願う通りに姉妹になってきているわ」
「そ、そう思っているんですか…」
自信たっぷりの志奈さんの様子に、同意は素直に出来ないものの。
柚鈴は、まあいいかと思った。
嬉しそうな志奈さんの様子にも、悪い気がしない。
そのまま二人で、ランチを食べて。
こっそり心の中で思った。
下手に喜ばせないように、心の中だけでこっそりと。
初めてのランチデート、終了、と。
まるでミッションクリアのようだけど。
この志奈さんという人とは沢山の姉妹が、当たり前のようにしていることをきっと沢山させられるんだろうと思うから。
柚鈴も自分なりに。
受け入れる所は受け入れていこうと思ったのだ。
薫が言うように「人間の本質なんて残念ながら大きく変わるものではない」
だけど経験することで、選択肢を増やして。
そうして、姉妹らしくなっていけるというなら、悪くはないと思った。
志奈さんにちょっとは付き合ってみるのも。確かに少しずつ近くなっている気がするから。
本当にこっそりと、そう思った。
「何故、そう確信されているのか、甚だ疑問です」
「疑問かしら?じゃあ、逆のことをして、美味しくなるかどうか実験してくれてもいいわよ」
志奈さんは、ナイフとフォークを置いて、にっこり笑った。
「実験?」
「はい、どうぞ」
何かを待ち構えるような態度で、しばし間を持たせた様子に、嫌な予感しかせず、何を実験したいのかなど聞きたくない。
しかし期待に満ち溢れた視線に耐えかねて、柚鈴は恐る恐る聞いた。
「どういう意味ですか?」
「だから。柚鈴ちゃんが、ロコモコを私に一口くれるんでしょう?そしてそれを私が美味しいと感じるかどうかという実験」
「……。食べたいならどうぞ?」
こちらのランチのお皿を、取りやすいように志奈さんの方に寄せると、すぐに不満そうな表情を見せた。
「柚鈴ちゃん、分かっててやってるでしょう?」
「すみません。分かっててやってます。姉として察したら黙って諦めてください」
「う。姉として、と言われると…」
すかさず言い返した言葉に、志奈さんはショックそうな顔を見せた。
柚鈴に食べさせてもらいたいという願望が強くあるのだろう。
だが、姉として、という言葉は柚鈴が思っていた以上に効果的に、志奈さんを躊躇わせることになったらしい。
姉としての自覚を持たせるって、意外と使える。
密かに柚鈴は思った。
志奈さんは、それでもしばらく諦めきれなかった様子で間を置いてなら、がっくりと項垂れた。
「…察した方がいい気がしてしまうわね」
「ありがとうございます」
思わずほっとして。柚鈴はお礼を言った。
悔しそうにため息をついた志奈さんは「実験なのに」とブツブツと呟く。
後々怖くも思えたけれど、すぐに諦めた様子で、自分のスプーンで一口ロコモコを食べてくれた。
「美味しい」
「そうですよね」
幸せそうな志奈さんの笑みに、柚鈴も相槌を打つと、まだ残っていた悔しい気持ちが湧き上がったのか、志奈さんはしつこく言葉を足した。
「ここに柚鈴ちゃんの愛情というスパイスが加わったらもっと美味しかったと思うのに、実験出来なくて残念だわ」
「そんなことないですよ」
「やってもいないのに、どうして言い切れるの?」
「そ、それは、同じ言葉をお返しします」
「……」
「……」
少し間があって。
クスクスと笑い声が聞こえてくる。
志奈さんは何故か嬉しそうだった。
「どうしたんですか?」
そう柚鈴が聞くと、志奈さんは目を細めた。
「なんだか随分、柚鈴ちゃんと一緒の時間が自然になってきたなあと思って」
「そうですか?」
「はい。そうだと思います。日々、一歩ずつ。私の願う通りに姉妹になってきているわ」
「そ、そう思っているんですか…」
自信たっぷりの志奈さんの様子に、同意は素直に出来ないものの。
柚鈴は、まあいいかと思った。
嬉しそうな志奈さんの様子にも、悪い気がしない。
そのまま二人で、ランチを食べて。
こっそり心の中で思った。
下手に喜ばせないように、心の中だけでこっそりと。
初めてのランチデート、終了、と。
まるでミッションクリアのようだけど。
この志奈さんという人とは沢山の姉妹が、当たり前のようにしていることをきっと沢山させられるんだろうと思うから。
柚鈴も自分なりに。
受け入れる所は受け入れていこうと思ったのだ。
薫が言うように「人間の本質なんて残念ながら大きく変わるものではない」
だけど経験することで、選択肢を増やして。
そうして、姉妹らしくなっていけるというなら、悪くはないと思った。
志奈さんにちょっとは付き合ってみるのも。確かに少しずつ近くなっている気がするから。
本当にこっそりと、そう思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる