拝啓、お姉さまへ

一華

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第三章 5月‐結

お姉さま、お茶会参加のはずでした! 2

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「もちろん、いいわよ。私は去年の常葉学園卒業生、みさき紫乃舞しのぶです」
にっこりと笑顔で答えた名前に、柚鈴は思わず目を丸くした。

その名前には聞き覚えがある。ごく最近。
「岬志乃舞…さん?」
小鳥遊たかなしさん、知ってる方なの?」
「ええと…」

明智さんの質問に考え込むと。

「見つけた」
女性が、しっかりと柚鈴の手首を掴んできた。
「へ?」
「いやあ。せっかく今日のお茶会に参加するって聞いたのに、卒業したら部外者だから入れてくれないっていんだもん。どうしようかと思った」
「は、はあ?」
「私、昨年の卒業生の岬紫乃舞です。茶道部では去年は部長をしていたの」

そう言われて。
柚鈴ははっとした。
そうだ、志奈さんの口から聞いたのだ。
ゴールデンウィークに料理を教わった相手だって。

たしかそう。
志奈さんの友達で、茶道部前部長。料亭の娘で、料理上手。
……ん?
…条件から考え付くイメージ出来る人とは全然違う人、じゃないだろうか?

なんというか。
茶道やってる人に対して、柚鈴が勝手に抱いていた淑やかさとか、ヤマトナデシコ感が全くない。
理想を持ちすぎなんだろうか?
いまはや、相原先輩はイメージ通りだったけど。

ぐるぐる困惑していると、岬紫乃舞さんは、手首を掴んだまま、目を輝かせた。

「私、あなたに会いに来たのよ」
「ええ!?」
「本当はお茶会しながらさりげなくって思ってたんだけど。花蓮かれんが入れてくれなさそうだし。仕方ないわ」
「仕方ないって…」
「これから堂々とあなたをさらっていきます」
「え!?」
岬紫乃舞さんは、全く悪びれた様子なく言い切った。
意味が分からないままでいると、明智さんがどうすべきか困ったように口を挟んでくれる。

「あの。でも小鳥遊さんは、お茶会に参加することになっていますし」
「知ってるわよ。なに、どうしても参加したいの?」
確認をする岬紫乃舞さんの言葉に、どうも最近『強引な年上』に縁が深いと思いつつ、柚鈴はたじろぎながら答えた。

「ええっと、どうしてもかと言うと…」
「どうしてもじゃないわけよね?じゃあ別に構わないわね?」
「いや、一体何の用…」
何の用なんですか、と言いかけて、柚鈴はふと止まった。

普通に考えて。
志奈さんの友達が、私にわざわざ会いに来るのだから。要件は志奈さん関係であることに違いない。
明智さんが『小鳥遊さん』と呼んだことで、反応していたのだから。

常葉学園の一年生の『小鳥遊さん』を探しに来た志奈さんの友達。
これが、志奈さん関係でなくて何だと言うのだろう。
柚鈴がどうしたものかと、じぃっと相手を見つめていると。

「そっか。このままついて来たって何の得もないもんね。今日はちょっと様子見と頼み事があってきたんだけえど、どうしようかな」
「頼み事?」
「そ。私の大切な友達のことでね」
あっさりとそういって。
岬紫乃舞さんは、腕を組んで考えこんだ。

大切な友達、というと。
やはりそれは志奈さんのことだろうか?
そのことで、わざわざ柚鈴に会いに来てどんな頼み事があるというのか。

気になってしまうと、柚鈴はこれは仕方なし、と決断することにした。
わざわざ出席確認まで来てくれた相原先輩には実に申し訳ないけれど、これはこちらを優先することにする。

「私、ご一緒します」
「いいの?」
「わざわざここまでいらっしゃったお話、気になりますし」
「ありがとう。嬉しいわ」

にっこり笑った岬紫乃舞先輩に頷いてから、明智さんを振り返った。
「ごめんなさい。そういうわけなんで、お茶会行ってきて?」
「…いいの?」
「うん。もし、途中からでも参加出来そうならそうするから」

明智さんは、少し困った顔をしながら、分かったわと了承してくれる。
「悪いね。あ、花蓮には言わないでね。じゃあ、行きましょう」
岬紫乃舞さんは、柚鈴が気が変わらないうち、とでも思っているようにガッチリ手を掴んだまま。
少々早足に、引きずるように。
その場から足早に連れ去った。
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