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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭への準備です 3
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『つっかれたぁ』
寮の食堂で。
柚鈴と幸の声が盛大にハモった。
柚鈴が疲れているのは、もちろん今日の出来事だ。
遅れたお茶会での参加メンバーは、そうそうたる顔ぶれだった、ようだ。
柚鈴自身は、ピンと来なかったけれど、先に参加して自己紹介をしあったと言う明智さんが、親切にも端から教えてくれた。
大まかに纏めると生徒会次期会長候補や生徒会手伝いのメンバー、常葉学園の主だった部活の次期部長候補メンバー、北組の芸術関係優秀たる生徒。1年生の方も、様々な分野で光が当たる助言者のいない生徒ばかりが選ばれているようで、柚鈴も東組特待生とはいえ、ここでは平凡な枠に入っていると言って良さそうだった。
しかし明智さんは、さすがに東組首席。
簡単な自己紹介くらいしか受けていないだろうに、全て覚えていて、しかも会話から判断して分析したのか、細やかな情報を足して教えてくれるので、柚鈴は途中から思考が停止しそうだった。
メモを、メモをとらなきゃ覚えられない…
そもそも柚鈴は、暗記は書いて覚える方だ。
明智さんは、一度聞いたことを覚えていられるタイプらしく、頭脳の違いを見せつけられる気がする。
2年生で招待されている東組の先輩方は、幸いにも『生徒会次期会長候補』等の生徒だけで、東郷先輩はいなかった。
もっとも来る予定があれば、相原先輩と先日のような会話にはならないだろうけど。
柚鈴が容量オーバー気味の頭で、情報や状況を纏めていると、明智さんは少しばかり気を使ったように間を置いてから、そういえばと思い出したように言った。
「先ほどの岬紫乃舞さんが小鳥遊さんを連れていったことを相原先輩には言うな、と言っていたから、念のため他の茶道部の方にお話ししておいたけど良かったかしら?」
そう、明智さんはしれっと言った。
しのさんからの頼み事は遂行したけれど、結果的には報告した、ということだ。
茶道部の部員にそのことを伝えれば、相原先輩の耳に入るに決まっている。
「一応、要件は分からないということにしておいたわ」
それなりの気遣いも挟んでくれたらしい。
なんというか明智さんは、真面目で優秀な人だと思っていたけど、中々大胆な発想の持ち主なのかもしれない。
要領良くやる、というか。
その思考は参考にしたい気もした。
ここで明智さんがもし気を使わずに。
『小鳥遊さんのお姉さんのことで、岬紫乃舞さんがという茶道部の前部長を名乗る方が連れていってしまいました』では、どうしたって志奈さんの関わりを想像されるだろう。
いつかばれるかもしれないけれど、誤魔化せるうちは誤魔化しておきたい、という気持ちは変わらない。
お茶会に参加を断られた岬紫乃舞さんが、参加予定の一年生を一人、急に連れ去りました。
…悪いけど、しのさんがいつもあんな風にマイペースなのであれば、あり得ない話ではなさそうだ。
何故、その一年生が柚鈴だったのかと突っ込まれてしまうと困るのだけど。
少なくとも、その後柚鈴が戻って来たことに気付いて寄って来た相原先輩は、完全にしのさんが面白がってやったとしか思っていなかった。
「岬紫乃舞さんとは初対面でしたわよね?変わった方で驚かれたでしょう。ご迷惑掛けてごめんなさい」
明智さんと話していた柚鈴を見つけると、早歩きに近づいてくるなり相原先輩は頭を下げて謝罪してきたのだ。
身内が迷惑を掛けた、と言わんばかりである。
「ええと…あの、確かに初対面ではありましたけど」
柚鈴にも疚しいところがないわけではないので、良い淀みつつ答えると相原先輩は申し訳なさそうに眉を下げた。
寮の食堂で。
柚鈴と幸の声が盛大にハモった。
柚鈴が疲れているのは、もちろん今日の出来事だ。
遅れたお茶会での参加メンバーは、そうそうたる顔ぶれだった、ようだ。
柚鈴自身は、ピンと来なかったけれど、先に参加して自己紹介をしあったと言う明智さんが、親切にも端から教えてくれた。
大まかに纏めると生徒会次期会長候補や生徒会手伝いのメンバー、常葉学園の主だった部活の次期部長候補メンバー、北組の芸術関係優秀たる生徒。1年生の方も、様々な分野で光が当たる助言者のいない生徒ばかりが選ばれているようで、柚鈴も東組特待生とはいえ、ここでは平凡な枠に入っていると言って良さそうだった。
しかし明智さんは、さすがに東組首席。
簡単な自己紹介くらいしか受けていないだろうに、全て覚えていて、しかも会話から判断して分析したのか、細やかな情報を足して教えてくれるので、柚鈴は途中から思考が停止しそうだった。
メモを、メモをとらなきゃ覚えられない…
そもそも柚鈴は、暗記は書いて覚える方だ。
明智さんは、一度聞いたことを覚えていられるタイプらしく、頭脳の違いを見せつけられる気がする。
2年生で招待されている東組の先輩方は、幸いにも『生徒会次期会長候補』等の生徒だけで、東郷先輩はいなかった。
もっとも来る予定があれば、相原先輩と先日のような会話にはならないだろうけど。
柚鈴が容量オーバー気味の頭で、情報や状況を纏めていると、明智さんは少しばかり気を使ったように間を置いてから、そういえばと思い出したように言った。
「先ほどの岬紫乃舞さんが小鳥遊さんを連れていったことを相原先輩には言うな、と言っていたから、念のため他の茶道部の方にお話ししておいたけど良かったかしら?」
そう、明智さんはしれっと言った。
しのさんからの頼み事は遂行したけれど、結果的には報告した、ということだ。
茶道部の部員にそのことを伝えれば、相原先輩の耳に入るに決まっている。
「一応、要件は分からないということにしておいたわ」
それなりの気遣いも挟んでくれたらしい。
なんというか明智さんは、真面目で優秀な人だと思っていたけど、中々大胆な発想の持ち主なのかもしれない。
要領良くやる、というか。
その思考は参考にしたい気もした。
ここで明智さんがもし気を使わずに。
『小鳥遊さんのお姉さんのことで、岬紫乃舞さんがという茶道部の前部長を名乗る方が連れていってしまいました』では、どうしたって志奈さんの関わりを想像されるだろう。
いつかばれるかもしれないけれど、誤魔化せるうちは誤魔化しておきたい、という気持ちは変わらない。
お茶会に参加を断られた岬紫乃舞さんが、参加予定の一年生を一人、急に連れ去りました。
…悪いけど、しのさんがいつもあんな風にマイペースなのであれば、あり得ない話ではなさそうだ。
何故、その一年生が柚鈴だったのかと突っ込まれてしまうと困るのだけど。
少なくとも、その後柚鈴が戻って来たことに気付いて寄って来た相原先輩は、完全にしのさんが面白がってやったとしか思っていなかった。
「岬紫乃舞さんとは初対面でしたわよね?変わった方で驚かれたでしょう。ご迷惑掛けてごめんなさい」
明智さんと話していた柚鈴を見つけると、早歩きに近づいてくるなり相原先輩は頭を下げて謝罪してきたのだ。
身内が迷惑を掛けた、と言わんばかりである。
「ええと…あの、確かに初対面ではありましたけど」
柚鈴にも疚しいところがないわけではないので、良い淀みつつ答えると相原先輩は申し訳なさそうに眉を下げた。
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