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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭への準備です 10
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…体育祭終わったくらいに、遥先輩と凛子先輩には、志奈さんのことをちゃんと言おうかな…
素直すぎる程に、柚鈴の誤魔化しを信じてくれる遥先輩にも、一生懸命、柚鈴たちをフォローしてくれる凛子先輩にも、感謝の気持ちしかない。
二人ならば、それを正直に伝えても、受け止めてくれそうな気もする。
多少怒られたりするかもしれないけれど、それは今まで黙っていたのだから仕方ない。柚鈴自身が悪い。
本当に今更、と言われても仕方ないけれど。
早く伝えたい気持ちにもなってきていた。
ただ、体育祭前のこの慌ただしい時に伝えることが良いのかどうか。
うん。体育祭が終わったら、二人に話そう。
密かにそう決意をした。
そんな柚鈴の気持ちを知らない遥先輩は話の続きが気になったらしい。柚鈴に促してくる。
「でも、体育祭は平日よ。紫乃舞さまを、あなた体育祭に連れ出せるの?」
「連れ出すと言うかなんというか。今日、大学はどうにかして体育祭を見に行くと言われてましたので」
その目的が、柚鈴のペア作りの邪魔をする、ということは一先ずおいておくことにする。
だがありがたいことに、遥先輩は、なんでどうしてなどとは言い出さなかった。
「紫乃舞さまが?…まあ、あの方なら、そんな発想もあり得ないことではないけれど…」
「どういう人なんですか…」
「どう、というか。柚鈴さん、今日お会いしたんでしょう?ああいう方なのよ」
説明するまでもない、といった口調の遥先輩だ。
それだけで済まそうとする遥先輩は、随分とおおざっぱな気もするが、妙に言いたいことも分かる気がするので複雑な所だ。
とにかく、しのさんは、本当に体育祭に来そうな人なんだなと思う。
…大丈夫なんだろうか。
あの人、体育祭をかき混ぜそうだけど。
柚鈴が見たままが、しのさんということなら、そういうことである。
「私は、紫乃舞さまと一緒に走ることが出来るなら、今回の件、上手くまとまるかもしれないと思うわ」
「…本当にそう思われるのですか?」
「ええ。紫乃舞さまと競おうとする方なんて、ほとんどいないのではないかしら?」
「…危険人物だからですか?」
「あなた面白いことを言うわね」
…私は、ちっとも面白くありません
「なんだか楽しみになって来たわ。是非、一緒に走ってね」
「…いや、私の目的は人を楽しくすることではないんです」
「あら、ほほほ」
遥先輩は、自分が私欲に走ったことを言ったことに気付いたように、誤魔化して笑った。
「でも、紫乃舞さまはああいった方だから、支援者も多かったのよ。つまらない学園生活を出来る限り面白くしたいと仰ってて。実際なさったことはユニークなことばかりだったから」
「支援者がいたんですか?本当に多かったんですか?…というかいたのは支援者だけですか?」
思わず怪しんで聞くと、遥先輩はとぼけたように目線を逸らした。
「そうねえ。突拍子もないことをされるから、支援者と同じくらい批判したりされることも多かったかもしれないわね」
…ですよねえ。
しれっと言ってのけるあたり、遥先輩もなかなかいい性格をしている。
ほほほっと軽く笑ってごまかして、遥先輩は付け足した。
「同じ学年に生徒会長として小鳥遊志奈さまがいらっしゃったから、大きな問題になったようなこともなかったし。まあ、いらっしゃらなかったら問題になったことも多かったかもしれないけれど」
「…例えば、どんなことがあったんですか?」
思わず聞いてしまった柚鈴に、答えを返しかけてから、何かに気付いたようにして遥先輩はふふっと笑った。
「教えてあげてもいいけれど、今度にした方がいいと思うわ」
「え?」
「お食事をなさったほうがいい、ということ。あなたのお友達は二人とも終わらせているわよ」
「ええ!?」
その言葉に柚鈴が振り返ると。
気が付けば、薫だけでなく幸まで食事を終えている。
どうやら、柚鈴が遥先輩と話している間、黙々と食事をしていたらしい。
そして食事を終えた今度は、疲れたためだろう、眠そうに目を細めている。
どうりで、さっきから何も言わなかったはずである。
疲れと戦いながら、黙々と食べていたのだろう。
「ごめん、二人とも」
「まあ、いいよ。そろそろ部屋に帰るつもりだったけどさ」
「柚鈴ちゃん~。私は待ってるから安心していいよ~」
しかし幸は半分寝ている。薫が反抗されないのを良いことに、よしよしと頭を撫でると、小さく頭を振るませて、嫌そうにしている。
…これは申し訳ない。
遥先輩はにっこりと笑った。
「私も食事をしたいから、お話は今度にしましょう。せっかくの料理が覚めてしまっていてよ?」
「はい、食べます。ありがとうございました」
「ええ。それではごきげんよう」
遥先輩と薫が立ち去っていくと、柚鈴は慌てて食事と向き合った。
確かにすっかり冷めてしまっている。
幸が寝てしまわないうちにと、柚鈴は箸を急いだ。
素直すぎる程に、柚鈴の誤魔化しを信じてくれる遥先輩にも、一生懸命、柚鈴たちをフォローしてくれる凛子先輩にも、感謝の気持ちしかない。
二人ならば、それを正直に伝えても、受け止めてくれそうな気もする。
多少怒られたりするかもしれないけれど、それは今まで黙っていたのだから仕方ない。柚鈴自身が悪い。
本当に今更、と言われても仕方ないけれど。
早く伝えたい気持ちにもなってきていた。
ただ、体育祭前のこの慌ただしい時に伝えることが良いのかどうか。
うん。体育祭が終わったら、二人に話そう。
密かにそう決意をした。
そんな柚鈴の気持ちを知らない遥先輩は話の続きが気になったらしい。柚鈴に促してくる。
「でも、体育祭は平日よ。紫乃舞さまを、あなた体育祭に連れ出せるの?」
「連れ出すと言うかなんというか。今日、大学はどうにかして体育祭を見に行くと言われてましたので」
その目的が、柚鈴のペア作りの邪魔をする、ということは一先ずおいておくことにする。
だがありがたいことに、遥先輩は、なんでどうしてなどとは言い出さなかった。
「紫乃舞さまが?…まあ、あの方なら、そんな発想もあり得ないことではないけれど…」
「どういう人なんですか…」
「どう、というか。柚鈴さん、今日お会いしたんでしょう?ああいう方なのよ」
説明するまでもない、といった口調の遥先輩だ。
それだけで済まそうとする遥先輩は、随分とおおざっぱな気もするが、妙に言いたいことも分かる気がするので複雑な所だ。
とにかく、しのさんは、本当に体育祭に来そうな人なんだなと思う。
…大丈夫なんだろうか。
あの人、体育祭をかき混ぜそうだけど。
柚鈴が見たままが、しのさんということなら、そういうことである。
「私は、紫乃舞さまと一緒に走ることが出来るなら、今回の件、上手くまとまるかもしれないと思うわ」
「…本当にそう思われるのですか?」
「ええ。紫乃舞さまと競おうとする方なんて、ほとんどいないのではないかしら?」
「…危険人物だからですか?」
「あなた面白いことを言うわね」
…私は、ちっとも面白くありません
「なんだか楽しみになって来たわ。是非、一緒に走ってね」
「…いや、私の目的は人を楽しくすることではないんです」
「あら、ほほほ」
遥先輩は、自分が私欲に走ったことを言ったことに気付いたように、誤魔化して笑った。
「でも、紫乃舞さまはああいった方だから、支援者も多かったのよ。つまらない学園生活を出来る限り面白くしたいと仰ってて。実際なさったことはユニークなことばかりだったから」
「支援者がいたんですか?本当に多かったんですか?…というかいたのは支援者だけですか?」
思わず怪しんで聞くと、遥先輩はとぼけたように目線を逸らした。
「そうねえ。突拍子もないことをされるから、支援者と同じくらい批判したりされることも多かったかもしれないわね」
…ですよねえ。
しれっと言ってのけるあたり、遥先輩もなかなかいい性格をしている。
ほほほっと軽く笑ってごまかして、遥先輩は付け足した。
「同じ学年に生徒会長として小鳥遊志奈さまがいらっしゃったから、大きな問題になったようなこともなかったし。まあ、いらっしゃらなかったら問題になったことも多かったかもしれないけれど」
「…例えば、どんなことがあったんですか?」
思わず聞いてしまった柚鈴に、答えを返しかけてから、何かに気付いたようにして遥先輩はふふっと笑った。
「教えてあげてもいいけれど、今度にした方がいいと思うわ」
「え?」
「お食事をなさったほうがいい、ということ。あなたのお友達は二人とも終わらせているわよ」
「ええ!?」
その言葉に柚鈴が振り返ると。
気が付けば、薫だけでなく幸まで食事を終えている。
どうやら、柚鈴が遥先輩と話している間、黙々と食事をしていたらしい。
そして食事を終えた今度は、疲れたためだろう、眠そうに目を細めている。
どうりで、さっきから何も言わなかったはずである。
疲れと戦いながら、黙々と食べていたのだろう。
「ごめん、二人とも」
「まあ、いいよ。そろそろ部屋に帰るつもりだったけどさ」
「柚鈴ちゃん~。私は待ってるから安心していいよ~」
しかし幸は半分寝ている。薫が反抗されないのを良いことに、よしよしと頭を撫でると、小さく頭を振るませて、嫌そうにしている。
…これは申し訳ない。
遥先輩はにっこりと笑った。
「私も食事をしたいから、お話は今度にしましょう。せっかくの料理が覚めてしまっていてよ?」
「はい、食べます。ありがとうございました」
「ええ。それではごきげんよう」
遥先輩と薫が立ち去っていくと、柚鈴は慌てて食事と向き合った。
確かにすっかり冷めてしまっている。
幸が寝てしまわないうちにと、柚鈴は箸を急いだ。
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