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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭です! 11
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400M走で見事に一位になった薫を見届けて、2年生の走者が走り始めた頃
とうとう岬紫乃舞さんを発見できないまま、柚鈴は白組の待機場所に戻った。
発見できなかったことで困ったという気持ちよりも、今は遥先輩に見つかったら何と言い訳しようかの気持ちを大きくしつつ、辺りをきょきょろとしていると。
「遥さんなら、いないわよ」
突然、横から声がしたかと思うと、そこには小牧先輩が立っていた。
相変わらず、気配がない。
「あ、そ、そうなんですか。教えて下さってありがとうございます」
慌てて返事をするが、驚きのあまり、声が裏返ってしまう。
柚鈴の驚きに気付いているのかいないのか。
表情はほとんど変えずに重々しく小牧先輩は頷いた。
「遥さんは、この後の吹奏楽部の演目があるから集合場所に行ってしまったの」
「え!?遥先輩って、吹奏楽部なんですか!?」
「ええ、そうよ」
遥先輩が部活動をしているとは!考えたこともなかった。
当然のように頷く小牧先輩に、そういえば遥先輩について寮長ということ以外、あまり知らないことに気付く。
寮に住んでいるから良く会うが、学園でどう生活しているのか話したことはなかった。
なんだか申し訳ない気がする。
「知らなかった?柚鈴さんは、遥さんのファンではないの?」
「ファン、ではありません。良い先輩だとは思ってますけど」
「なのに、借り物競争で一緒に走ろうと思ったの?」
不思議そうに首を傾げた小牧先輩に、柚鈴は遥先輩とペアを組んでいる目の前の相手に、もしかしたら誤解されたんではないかと今更ながらに慌てた。
普通、借り物競争のお題として一緒に走る相手というと、憧れてる先輩とかそういうものだと思うはずだ。
…申し訳ないけど、それは違う。
「すみません。決して遥先輩に対して横恋慕なんてしているわけではないんです。ただ、ちょっと…別の方に助言者に申し込まれていて、それをお断りしたかっただけなんです」
「…そう」
静かな返事だったが、小牧先輩の雰囲気が少し和らいだように見えた。
何が変わったのか咄嗟に分からずと目を丸くしていると、どうやら微笑んでいるんだと気づく。
この人、やっぱり綺麗だ。
整った表情がそれだけの変化で魅力的に見える。
一瞬、柚鈴はドキドキしてしまった。
「分かるわ。申し込まれても困ることってあるわよね」
その言葉に、そういえば小牧先輩は遥先輩とは別の新体操部の人とペアになる予定だったという話を思い出した。
だから、柚鈴の立場に思うところがあったのかもしれない。
「遥さんのメンティの立場はあげれないけど、私も何か出来ることがあれば力になるわ」
「あ、ありがとうございます」
「遥さんも世話焼きだから、きっと力になってくれるわね」
「はい」
柚鈴が頷くと、しばらくしてから、ふふっと小牧先輩は笑った。
何かに気付いた、といった雰囲気で、急に笑い出したようにも思えた。
「ちょっと、安心した」
「え」
「柚鈴さんが、遥さんのことを本当に好きだったら、遥さんは素敵な人だからそんな後輩がいても当然なんだけど…ちょっと焦ったかも」
「そ、そうですよね」
ぼそぼそと言う言葉に、どこまでの感情が籠っているか分からず、一先ず相槌を打つと、小牧先輩はじっと柚鈴を見つめてから頭を下げた。
「ごめんなさい」
「い、いえ。私が誤解されるようなことを考えたからいけないんです。すみません」
小牧先輩が遥先輩を好きなんだという気持ちが伝わってきて、少し遠慮がちに頷いた。
小牧先輩は、多分気にはしていないんだろうけれど、こんなに慕っている人がいるのに自分の保身のために借り物競争のお題として、遥先輩を保険として考えていたのが申し訳なくなる。
ちょっと単純に考えすぎていたのかもしれない、と密かに反省もする。
とうとう岬紫乃舞さんを発見できないまま、柚鈴は白組の待機場所に戻った。
発見できなかったことで困ったという気持ちよりも、今は遥先輩に見つかったら何と言い訳しようかの気持ちを大きくしつつ、辺りをきょきょろとしていると。
「遥さんなら、いないわよ」
突然、横から声がしたかと思うと、そこには小牧先輩が立っていた。
相変わらず、気配がない。
「あ、そ、そうなんですか。教えて下さってありがとうございます」
慌てて返事をするが、驚きのあまり、声が裏返ってしまう。
柚鈴の驚きに気付いているのかいないのか。
表情はほとんど変えずに重々しく小牧先輩は頷いた。
「遥さんは、この後の吹奏楽部の演目があるから集合場所に行ってしまったの」
「え!?遥先輩って、吹奏楽部なんですか!?」
「ええ、そうよ」
遥先輩が部活動をしているとは!考えたこともなかった。
当然のように頷く小牧先輩に、そういえば遥先輩について寮長ということ以外、あまり知らないことに気付く。
寮に住んでいるから良く会うが、学園でどう生活しているのか話したことはなかった。
なんだか申し訳ない気がする。
「知らなかった?柚鈴さんは、遥さんのファンではないの?」
「ファン、ではありません。良い先輩だとは思ってますけど」
「なのに、借り物競争で一緒に走ろうと思ったの?」
不思議そうに首を傾げた小牧先輩に、柚鈴は遥先輩とペアを組んでいる目の前の相手に、もしかしたら誤解されたんではないかと今更ながらに慌てた。
普通、借り物競争のお題として一緒に走る相手というと、憧れてる先輩とかそういうものだと思うはずだ。
…申し訳ないけど、それは違う。
「すみません。決して遥先輩に対して横恋慕なんてしているわけではないんです。ただ、ちょっと…別の方に助言者に申し込まれていて、それをお断りしたかっただけなんです」
「…そう」
静かな返事だったが、小牧先輩の雰囲気が少し和らいだように見えた。
何が変わったのか咄嗟に分からずと目を丸くしていると、どうやら微笑んでいるんだと気づく。
この人、やっぱり綺麗だ。
整った表情がそれだけの変化で魅力的に見える。
一瞬、柚鈴はドキドキしてしまった。
「分かるわ。申し込まれても困ることってあるわよね」
その言葉に、そういえば小牧先輩は遥先輩とは別の新体操部の人とペアになる予定だったという話を思い出した。
だから、柚鈴の立場に思うところがあったのかもしれない。
「遥さんのメンティの立場はあげれないけど、私も何か出来ることがあれば力になるわ」
「あ、ありがとうございます」
「遥さんも世話焼きだから、きっと力になってくれるわね」
「はい」
柚鈴が頷くと、しばらくしてから、ふふっと小牧先輩は笑った。
何かに気付いた、といった雰囲気で、急に笑い出したようにも思えた。
「ちょっと、安心した」
「え」
「柚鈴さんが、遥さんのことを本当に好きだったら、遥さんは素敵な人だからそんな後輩がいても当然なんだけど…ちょっと焦ったかも」
「そ、そうですよね」
ぼそぼそと言う言葉に、どこまでの感情が籠っているか分からず、一先ず相槌を打つと、小牧先輩はじっと柚鈴を見つめてから頭を下げた。
「ごめんなさい」
「い、いえ。私が誤解されるようなことを考えたからいけないんです。すみません」
小牧先輩が遥先輩を好きなんだという気持ちが伝わってきて、少し遠慮がちに頷いた。
小牧先輩は、多分気にはしていないんだろうけれど、こんなに慕っている人がいるのに自分の保身のために借り物競争のお題として、遥先輩を保険として考えていたのが申し訳なくなる。
ちょっと単純に考えすぎていたのかもしれない、と密かに反省もする。
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