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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭です! 14 ~荻原翔子~
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ペア探しは基本的には個人同士の問題だ。
千沙がこの子だと思って申し込む。
相手が受ける、もしくは断る。
それだけのことだ。
確かに千沙が断られても諦めていないのは問題だろうが、それにはそれなりの理由があるはずなのだ。
それを聞いてもいないうちに『分かった。言い聞かせる』などと言うことが正しいとは思えなかった。
確かに相手の1年生は困っているかもしれないけれど、それだけで結論を出す気がない。
何故、千沙が諦めきれないのか。
それを確かめて、それから改めて問題解決を考えなくてはならない。
だから、凛子のお願いを聞くと約束することは出来ないのだ。
『千沙とは話してみるけれど、あなたが思うような結果を提供出来るかどうかは約束できないわ』
翔子としては遠慮がちにそう言ったのだが、どうやら周りはそう受け取らなかったらしい。
喧嘩をしているとしか思われなかったということを、後日周りから聞かされて頭を抱えたのだった。
とは言え、翔子が体育祭当日が車でに千沙と何も話さなかったわけではない。
1年生の教室の前で、3年北組の相原花蓮から注意を受けたと報告に来たのだから。
それは長谷川凛子から翔子が話を持ちかけられる前の出来事だったらしい。2人のタイミングが合わず、すぐに報告出来なかったことことを前置きにした千沙の顔は心苦しい、と書いてあるような落ち込んだものだった。
『すみません、お姉さま。またご迷惑をお掛けしました』
そう頭を下げてきた千沙に、迷惑を掛けられている意識のない翔子は少し困惑したのだ。
どうやら、相原さんに助言者と直接話すと言われて、動揺したらしい。
ことの詳細が分かるのであれば、相原さんと直接話した方が良いかもしれないと思ったが、千沙の顔を見るとそれを言うのは躊躇われた。
『それであなた、何が悪かったと思っているの?』
『…私は、ペアの相手として考えてもらうチャンスが欲しかったのですが、強引だと思われたんだと思います』
『そう』
この言葉に、翔子は内心ほっとした。
言葉の内容は、長谷川凛子のものとずれてはいない。
本人が分かっているのなら、問題は解決できないほど大きいとは思えない。
『私はお姉さまとペアになって、良かったと思ってます。助言者制度は必ず良い結果が生み出されるとは言えないですが、相手を間違わなければ、誰でもそう感じられると思うんです』
『あなたにとって、その相手が今回の方だと思っているの?』
『はい』
『どうして、そう思ったのか聞いてもいい?』
『親近感、でしょうか。高等部からの常葉学園で新しい環境に戸惑っているだろうと声を掛けたんですけど、なんだか彼女を見ると去年の自分を思い出すようで、力になりたいって思ったんです』
『そう』
翔子自身は、相手の1年生を知らないのだから、なんとも言い難い。
長谷川凛子の話では、強引な千沙に困っていると言う様子だったが、そのことは多少とはいえ千沙も気づいている様子だ。
ならば、止めろと言うのが正しいのかどうか。
翔子は少し考え込むために沈黙すると、千沙は大人しく答えが出るのを待っている。
その様子に、問題とされている強引さを感じることが出来ないので、止めろと言う言葉が出てこなかった。
『千沙、あなたは今後どうしようと思っているの?』
『私は、お姉さまのご迷惑になることはしたくありません』
『私のことは良いのよ。それは考えないでと言えば、どうするの?』
『構わなければ、体育祭での借り物競争に参加して、彼女にもう一度ペアにならないか考えてくれるよう申し込んでみようと思います』
借り物競走。
昨年の生徒会長の提案した競技が、そういえば今年もあるのだと、翔子は懐かしい気持ちになった。
たった一年前なのに、なんだか遠い話に感じる。
温かな気持ちにさせてくれる先輩の笑顔を思い出す。
ペア促進をしていた昨年の生徒会のお手伝いをしていたことは誇りと言っても良い。
昨年の卒業生が去った後、生徒会を続けなくても良い、やりきったと思える程に翔子は情熱を注ぎこんだ。
その痕跡の一つと言える借り物競争に、メンティである千沙が出るというのなら反対することなどないだろう。
『構わないわ。頑張りなさい。でもそれまでの間は相手の方にお誘いは控えたらどうかしら?』
そう言葉を足すと、千沙は素直に頷いた。
体育祭で鳴り響く吹奏楽部の演奏。
みんなの士気を高めるような音楽に、同じ組にいる千沙も気持ちを高めているのかもしれない。
翔子は静かに、どんな結果であっても受け止めようとする気持ちをしっかりと再確認していた。
千沙がこの子だと思って申し込む。
相手が受ける、もしくは断る。
それだけのことだ。
確かに千沙が断られても諦めていないのは問題だろうが、それにはそれなりの理由があるはずなのだ。
それを聞いてもいないうちに『分かった。言い聞かせる』などと言うことが正しいとは思えなかった。
確かに相手の1年生は困っているかもしれないけれど、それだけで結論を出す気がない。
何故、千沙が諦めきれないのか。
それを確かめて、それから改めて問題解決を考えなくてはならない。
だから、凛子のお願いを聞くと約束することは出来ないのだ。
『千沙とは話してみるけれど、あなたが思うような結果を提供出来るかどうかは約束できないわ』
翔子としては遠慮がちにそう言ったのだが、どうやら周りはそう受け取らなかったらしい。
喧嘩をしているとしか思われなかったということを、後日周りから聞かされて頭を抱えたのだった。
とは言え、翔子が体育祭当日が車でに千沙と何も話さなかったわけではない。
1年生の教室の前で、3年北組の相原花蓮から注意を受けたと報告に来たのだから。
それは長谷川凛子から翔子が話を持ちかけられる前の出来事だったらしい。2人のタイミングが合わず、すぐに報告出来なかったことことを前置きにした千沙の顔は心苦しい、と書いてあるような落ち込んだものだった。
『すみません、お姉さま。またご迷惑をお掛けしました』
そう頭を下げてきた千沙に、迷惑を掛けられている意識のない翔子は少し困惑したのだ。
どうやら、相原さんに助言者と直接話すと言われて、動揺したらしい。
ことの詳細が分かるのであれば、相原さんと直接話した方が良いかもしれないと思ったが、千沙の顔を見るとそれを言うのは躊躇われた。
『それであなた、何が悪かったと思っているの?』
『…私は、ペアの相手として考えてもらうチャンスが欲しかったのですが、強引だと思われたんだと思います』
『そう』
この言葉に、翔子は内心ほっとした。
言葉の内容は、長谷川凛子のものとずれてはいない。
本人が分かっているのなら、問題は解決できないほど大きいとは思えない。
『私はお姉さまとペアになって、良かったと思ってます。助言者制度は必ず良い結果が生み出されるとは言えないですが、相手を間違わなければ、誰でもそう感じられると思うんです』
『あなたにとって、その相手が今回の方だと思っているの?』
『はい』
『どうして、そう思ったのか聞いてもいい?』
『親近感、でしょうか。高等部からの常葉学園で新しい環境に戸惑っているだろうと声を掛けたんですけど、なんだか彼女を見ると去年の自分を思い出すようで、力になりたいって思ったんです』
『そう』
翔子自身は、相手の1年生を知らないのだから、なんとも言い難い。
長谷川凛子の話では、強引な千沙に困っていると言う様子だったが、そのことは多少とはいえ千沙も気づいている様子だ。
ならば、止めろと言うのが正しいのかどうか。
翔子は少し考え込むために沈黙すると、千沙は大人しく答えが出るのを待っている。
その様子に、問題とされている強引さを感じることが出来ないので、止めろと言う言葉が出てこなかった。
『千沙、あなたは今後どうしようと思っているの?』
『私は、お姉さまのご迷惑になることはしたくありません』
『私のことは良いのよ。それは考えないでと言えば、どうするの?』
『構わなければ、体育祭での借り物競争に参加して、彼女にもう一度ペアにならないか考えてくれるよう申し込んでみようと思います』
借り物競走。
昨年の生徒会長の提案した競技が、そういえば今年もあるのだと、翔子は懐かしい気持ちになった。
たった一年前なのに、なんだか遠い話に感じる。
温かな気持ちにさせてくれる先輩の笑顔を思い出す。
ペア促進をしていた昨年の生徒会のお手伝いをしていたことは誇りと言っても良い。
昨年の卒業生が去った後、生徒会を続けなくても良い、やりきったと思える程に翔子は情熱を注ぎこんだ。
その痕跡の一つと言える借り物競争に、メンティである千沙が出るというのなら反対することなどないだろう。
『構わないわ。頑張りなさい。でもそれまでの間は相手の方にお誘いは控えたらどうかしら?』
そう言葉を足すと、千沙は素直に頷いた。
体育祭で鳴り響く吹奏楽部の演奏。
みんなの士気を高めるような音楽に、同じ組にいる千沙も気持ちを高めているのかもしれない。
翔子は静かに、どんな結果であっても受け止めようとする気持ちをしっかりと再確認していた。
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