203 / 282
第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭の昼食です! 5
しおりを挟む
体育部対抗リレーがもうすぐ始まろうとする頃。
「ゆ~ず~ちゃあああん」
柚鈴は遠くから自分を呼びながら近づいてくる幸の声に振り返った。
リレーには特に知っている生徒が出ていないため、先に昼食にしようかと思っていた矢先だ。
「どうしたの?」
「一緒にご飯食べよう!」
ぜえぜえと息を切りつつ、誘ってくる幸はなんだか迫力がある。
思わず凝視してしまった。
「良いけど。てっきり黄組の方で花奏ちゃんと食べるのかと思ってたよ」
「ああ、うん…そのつもりだったんだけど、なんかちょっと黄組の待機場所に居づらくて」
言いにくそうに言葉を濁した幸に、柚鈴は小首を傾げた。
「何かあったの?」
「まあ、なんというか。その話はご飯でも食べながら」
えへへと笑って誤魔化す幸に、まあいいかと柚鈴は頷いた。別に断る理由もない。
ちなみに東組の生徒は昼食をどうするか。
当然ながら、炊き出しのご相伴に預かることはない。
だからお弁当を持ってきた家族と一緒に食べるか、持参したお弁当を食べるか。もしくは学食で体育祭限定で販売される『体育祭弁当』を購入して、食べることになる。
中には、炊き出し班に立候補して忙しくしている生徒もいるようだが、少数派。
大概は柚鈴と同じように、この一日をのんびり過ごしているのだ。
午後の借り物競争のことに一緒に悩んでくれた明智さんは、生徒会の手伝いで忙しくしているものの、お昼は同じように取るはずである。
そう思って柚鈴は振り返った。
「明智さんも一緒に行かない?」
「え?」
「もしよかったら。あ、もしかして生徒会の仕事ってまだあったりしたかな?」
少し遠慮がちになってきくと、ふわりと笑顔が返って来た。
「ううん。多分大丈夫だと思う。でも一応、同窓会のテントを覗いてからご一緒させてもらってもいいかしら?」
「あ、なら私もついて行っていい?」
もしかしたら岬紫乃舞さんが来ているかもしれないと思えば、ついていかないわけにはいかない。
借り物競走の望みを掛けないと、いざ本番でどうすればいいか、恐ろしい。
「そうか、小鳥遊さんは人探しもあったわね」
明智さんは頷くと、行きましょうかと歩き出した。
連れだって移動していると、ふと幸が気にしたように、柚鈴の袖口をツンツンと引っ張った。
「柚鈴ちゃん、薫は誘わなくていいかな?」
「薫なら、炊き出し貰ってるんじゃない?大活躍だったし」
「確かに。流石の俊足だったねえ」
朗らかに笑う幸の顔に、玉入れで散々な様子だったのを思い出したが、恐らくこれは言わない方がいいのだろう。
もしかしたら、黄組の待機場所から逃げ出してきたことと関係あるかもしれないし、と思慮深く考える。
代わりに、と話題を探してから、ふと思い出して口を開いた。
「そういえば沢城先輩、速かったね」
「うん!そうだね。凄いよね」
何故か幸に嬉しそうに見える笑みがパッと広がる。
その笑顔に、明智さんが不思議そうな顔を浮かべた。
「その人、春野さんの仲の良い先輩なの?」
「仲良し、と、言っていいのか分からないけど、美味しいものを教えてくれるとっても良い人だよ」
「美味しいもの?そうすると春野さんは嬉しいの?」
「うん、私はとっても嬉しい」
幸せそうな幸の顔に明智さんは良く分からないといった様子だ。
「つまり、春野さんは美味しいものを教えてくれる人が好きということ?」
「う~ん…そう、とも言えるのかな?美味しいものを好きな人には悪い人はいない気がするから」
「じゃあ、小鳥遊さんは、春野さんに何か美味しいものを教えてあげたの?」
急に話題がこっちに来てしまい、柚鈴は目を丸くしてしまう。
「え?まあ、教えたこともあるとは思うけど。え?幸ちゃんて、だから私と友達なの?」
話の流れから、まさかもしかして?と疑問を口にすると幸は慌てて首を振った。
「ゆ~ず~ちゃあああん」
柚鈴は遠くから自分を呼びながら近づいてくる幸の声に振り返った。
リレーには特に知っている生徒が出ていないため、先に昼食にしようかと思っていた矢先だ。
「どうしたの?」
「一緒にご飯食べよう!」
ぜえぜえと息を切りつつ、誘ってくる幸はなんだか迫力がある。
思わず凝視してしまった。
「良いけど。てっきり黄組の方で花奏ちゃんと食べるのかと思ってたよ」
「ああ、うん…そのつもりだったんだけど、なんかちょっと黄組の待機場所に居づらくて」
言いにくそうに言葉を濁した幸に、柚鈴は小首を傾げた。
「何かあったの?」
「まあ、なんというか。その話はご飯でも食べながら」
えへへと笑って誤魔化す幸に、まあいいかと柚鈴は頷いた。別に断る理由もない。
ちなみに東組の生徒は昼食をどうするか。
当然ながら、炊き出しのご相伴に預かることはない。
だからお弁当を持ってきた家族と一緒に食べるか、持参したお弁当を食べるか。もしくは学食で体育祭限定で販売される『体育祭弁当』を購入して、食べることになる。
中には、炊き出し班に立候補して忙しくしている生徒もいるようだが、少数派。
大概は柚鈴と同じように、この一日をのんびり過ごしているのだ。
午後の借り物競争のことに一緒に悩んでくれた明智さんは、生徒会の手伝いで忙しくしているものの、お昼は同じように取るはずである。
そう思って柚鈴は振り返った。
「明智さんも一緒に行かない?」
「え?」
「もしよかったら。あ、もしかして生徒会の仕事ってまだあったりしたかな?」
少し遠慮がちになってきくと、ふわりと笑顔が返って来た。
「ううん。多分大丈夫だと思う。でも一応、同窓会のテントを覗いてからご一緒させてもらってもいいかしら?」
「あ、なら私もついて行っていい?」
もしかしたら岬紫乃舞さんが来ているかもしれないと思えば、ついていかないわけにはいかない。
借り物競走の望みを掛けないと、いざ本番でどうすればいいか、恐ろしい。
「そうか、小鳥遊さんは人探しもあったわね」
明智さんは頷くと、行きましょうかと歩き出した。
連れだって移動していると、ふと幸が気にしたように、柚鈴の袖口をツンツンと引っ張った。
「柚鈴ちゃん、薫は誘わなくていいかな?」
「薫なら、炊き出し貰ってるんじゃない?大活躍だったし」
「確かに。流石の俊足だったねえ」
朗らかに笑う幸の顔に、玉入れで散々な様子だったのを思い出したが、恐らくこれは言わない方がいいのだろう。
もしかしたら、黄組の待機場所から逃げ出してきたことと関係あるかもしれないし、と思慮深く考える。
代わりに、と話題を探してから、ふと思い出して口を開いた。
「そういえば沢城先輩、速かったね」
「うん!そうだね。凄いよね」
何故か幸に嬉しそうに見える笑みがパッと広がる。
その笑顔に、明智さんが不思議そうな顔を浮かべた。
「その人、春野さんの仲の良い先輩なの?」
「仲良し、と、言っていいのか分からないけど、美味しいものを教えてくれるとっても良い人だよ」
「美味しいもの?そうすると春野さんは嬉しいの?」
「うん、私はとっても嬉しい」
幸せそうな幸の顔に明智さんは良く分からないといった様子だ。
「つまり、春野さんは美味しいものを教えてくれる人が好きということ?」
「う~ん…そう、とも言えるのかな?美味しいものを好きな人には悪い人はいない気がするから」
「じゃあ、小鳥遊さんは、春野さんに何か美味しいものを教えてあげたの?」
急に話題がこっちに来てしまい、柚鈴は目を丸くしてしまう。
「え?まあ、教えたこともあるとは思うけど。え?幸ちゃんて、だから私と友達なの?」
話の流れから、まさかもしかして?と疑問を口にすると幸は慌てて首を振った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる