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第三章 5月‐結
お姉さま、午後の部がスタートしました! 3
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息のあったチアは、メインで動いているのが新体操部なだけあってレベルが高い。
小牧先輩は目を輝かせて、センターポジションの一人である花奏ちゃんを追っている。
柚鈴はもちろん花奏も気になるし、幸も気になる。
交互に目線を動かし見ることになるが、花奏は流石の迫力の演技だ。
幸の方も練習を毎日こなしたからだろうか、派手な動きは少ないが薫が盆踊りと評したほど酷くはなく、多少ぎこちないながらに、ちゃんと動きが音楽と周りにあっていた。
…頑張ったね、幸ちゃん。
妙に保護者のような気持ちになりながら、柚鈴は感動してしまった。
あんなに小さかった子が、みたいな心境だ。
勿論、幸の小さな頃なんて知らないのだが、そこは友人のよしみである。
全部終わる頃には、小牧先輩に負けないくらい拍手を送ってしまっていた。
敵の組なのに問題かもしれないが。
その辺りは沢城先輩も一緒だったから良いのだろう。
「幸ちゃん、チア可愛かったですね。玉入れをしているのも気づいて見れたので良かったです。東組だから参加競技は1つでも良かったんですよね。ということは、もう今日は幸ちゃんの競技終了ですか?」
「へ?」
興奮冷めやらぬ、と言った様子で沢城先輩に聞かれて、柚鈴は目を泳がせた。
確かに幸が出る競技は終了である。だが、借り物競争が…
動揺は思い切り顔に出てしまい、沢城先輩は不思議そうに首を傾げた。
「え?何かにまだ出る予定があるんですか?」
「い、いえ。その、出るというか…」
「出るというか?」
おうむ返しの質問に答えに迷った。
果たして、沢城先輩はどう思うだろうか。
隠してもどうせバレる。だから素直に言うのが正解なのだろう。
それでも妙に気まずくて、柚鈴は沢城先輩から目を逸らしてから、小さく言った。
「ゆ、幸ちゃんは終了ですけど。どうも黄組の先輩が借り物競争のお題に、幸ちゃんを誘うみたいです」
「え」
驚いたような声。
その顔を確認することが出来ずにいると、少し間があって、元気のない声が恐る恐るといった感じで隣から聞こえて来た。
「ええと、つまり幸ちゃんは…その人とペアになりたいということですか?」
「違います!」
大慌てで柚鈴は言って、思わず沢城先輩を振り返った。
柚鈴の声に驚いたように、目を見開いた沢城先輩の表情。
その顔に少々反省しつつ、柚鈴は言葉を選びつつ言った。
「幸ちゃんは、助言者制度には憧れてますけど、その人とそうなりたいとは、今は思ってないと思います」
「今は、ですか」
眉を下げて、沢城先輩は少し情けない声を出してから、気遣う柚鈴に気付いたように、ふわりと笑った。
…今は。
それ以外何も言えない。それに気づいて、柚鈴は困ってしまった。
幸は、黄組の先輩を断るとは言わなかった。好きな先輩ではあるとも言った。
だから、今日を機に、いずれその人のペアになるかもしれない。
それも可能性としてはあるのだ。
幸が助言者制度に憧れがあるのは確かな事実なのだ。
私が沢城先輩に話しかけてしまったのって間違ってたのかな。
そう思えて、柚鈴は顔を伏せた。
「教えて下さって、ありがとうございます」
響いてきた柔らかな沢城先輩の声は、どこか納得したような、落ち着いた声だった。
「いえ」
柚鈴はどうにか、それだけ答えると、沢城先輩は独り言のように何事かを微かに呟いた。
「…?」
一部しか聞こえなかったその言葉の意味が分からず、顔を上げる。
小牧先輩の方は聞こえていたのかもしれない。
「借り物競争が始まれば、それから分かることもあるんじゃないかしら?」
いつも通り重々しく答えた言葉に、沢城先輩は微妙な笑顔を浮かべた。
柚鈴にはその表情の意味は分からなかったが、それ以上聞くことも出来なかった。
小牧先輩は目を輝かせて、センターポジションの一人である花奏ちゃんを追っている。
柚鈴はもちろん花奏も気になるし、幸も気になる。
交互に目線を動かし見ることになるが、花奏は流石の迫力の演技だ。
幸の方も練習を毎日こなしたからだろうか、派手な動きは少ないが薫が盆踊りと評したほど酷くはなく、多少ぎこちないながらに、ちゃんと動きが音楽と周りにあっていた。
…頑張ったね、幸ちゃん。
妙に保護者のような気持ちになりながら、柚鈴は感動してしまった。
あんなに小さかった子が、みたいな心境だ。
勿論、幸の小さな頃なんて知らないのだが、そこは友人のよしみである。
全部終わる頃には、小牧先輩に負けないくらい拍手を送ってしまっていた。
敵の組なのに問題かもしれないが。
その辺りは沢城先輩も一緒だったから良いのだろう。
「幸ちゃん、チア可愛かったですね。玉入れをしているのも気づいて見れたので良かったです。東組だから参加競技は1つでも良かったんですよね。ということは、もう今日は幸ちゃんの競技終了ですか?」
「へ?」
興奮冷めやらぬ、と言った様子で沢城先輩に聞かれて、柚鈴は目を泳がせた。
確かに幸が出る競技は終了である。だが、借り物競争が…
動揺は思い切り顔に出てしまい、沢城先輩は不思議そうに首を傾げた。
「え?何かにまだ出る予定があるんですか?」
「い、いえ。その、出るというか…」
「出るというか?」
おうむ返しの質問に答えに迷った。
果たして、沢城先輩はどう思うだろうか。
隠してもどうせバレる。だから素直に言うのが正解なのだろう。
それでも妙に気まずくて、柚鈴は沢城先輩から目を逸らしてから、小さく言った。
「ゆ、幸ちゃんは終了ですけど。どうも黄組の先輩が借り物競争のお題に、幸ちゃんを誘うみたいです」
「え」
驚いたような声。
その顔を確認することが出来ずにいると、少し間があって、元気のない声が恐る恐るといった感じで隣から聞こえて来た。
「ええと、つまり幸ちゃんは…その人とペアになりたいということですか?」
「違います!」
大慌てで柚鈴は言って、思わず沢城先輩を振り返った。
柚鈴の声に驚いたように、目を見開いた沢城先輩の表情。
その顔に少々反省しつつ、柚鈴は言葉を選びつつ言った。
「幸ちゃんは、助言者制度には憧れてますけど、その人とそうなりたいとは、今は思ってないと思います」
「今は、ですか」
眉を下げて、沢城先輩は少し情けない声を出してから、気遣う柚鈴に気付いたように、ふわりと笑った。
…今は。
それ以外何も言えない。それに気づいて、柚鈴は困ってしまった。
幸は、黄組の先輩を断るとは言わなかった。好きな先輩ではあるとも言った。
だから、今日を機に、いずれその人のペアになるかもしれない。
それも可能性としてはあるのだ。
幸が助言者制度に憧れがあるのは確かな事実なのだ。
私が沢城先輩に話しかけてしまったのって間違ってたのかな。
そう思えて、柚鈴は顔を伏せた。
「教えて下さって、ありがとうございます」
響いてきた柔らかな沢城先輩の声は、どこか納得したような、落ち着いた声だった。
「いえ」
柚鈴はどうにか、それだけ答えると、沢城先輩は独り言のように何事かを微かに呟いた。
「…?」
一部しか聞こえなかったその言葉の意味が分からず、顔を上げる。
小牧先輩の方は聞こえていたのかもしれない。
「借り物競争が始まれば、それから分かることもあるんじゃないかしら?」
いつも通り重々しく答えた言葉に、沢城先輩は微妙な笑顔を浮かべた。
柚鈴にはその表情の意味は分からなかったが、それ以上聞くことも出来なかった。
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