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第三章 5月‐結
お姉さま、借り物競争はご一緒に 6 ~幸のゴール?~
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断ろう。
2年生の借り物競争のスタート準備が始まる頃に、春野幸は黄組の待機場所で体育座りして小さくなりながら、しかし大きく決意していた。
これから行われる借り物競争で、同じ黄組の先輩の川合麻紀先輩が幸を迎えにくるかもしれない。
もしかしたら、それはやっぱり花奏の勘違いかもしれないけれど、もし本当にそうだったとしたら。
幸はここにきて、はっきり断ろうと心に決めたのだ。
幸にとって、柚鈴の決断は衝撃的だったと言っていい。
柚鈴が、まさかお義姉さんである前生徒会長小鳥遊志奈さんとゴールするとは思ってなかった。
大学、どうしたんだろうと思わないこともないが。
手をつないで走っているのを、そして迷いない友人の表情を見ていたら、分かった気がした。
幸自身がどうすればいいかを。
どうしようと悩む気持ちがあっても、こんな中途半端な気持ちでは、私は川合先輩とは手を繋いで走れない。
絵里の言うように、待ってもらうというのも確かに一つの手だ。
でも、きっと。
本当は答えは出ている。
川合先輩からバッチは受け取れない。その気持ちの種が幸の中に埋まってないから。
せめてお話を聞いてみよう。
もし迎えに来られたら、話を聞いて、それからちゃんとお礼を言ってお断りをしよう、と思った。
私をペアにしたいと思ってくれてありがとうございます。でも、ごめんなさい、と。
そう決意して妙に緊張していると、気付いたのか花奏が横に座って来た。
「幸ちゃん、どうしたの?」
「今、エネルギーを貯めているの」
「…そうなの?」
幸がガチガチの表情で答えると、花奏はぴったりくっついて、へへっと笑った。
「じゃあ私の有り余るパワーを分けてあげよう」
「…ありがとう」
思わず嬉しくなって、花奏にくっつき返す。
川合先輩のことを教えて、そしていよいよ始まる時に幸のこの様子だ。
詳しく説明しなくても、気持ちを察しているのだろう。友達の優しさが温かかった。
そうこうしているうちに、2年生借り物競争1組目のスタートの合図がした。
始まってしまった!と固まっていると。
「あ、川合先輩、スタート地点に立った」
花奏の教えてくれる声に幸は慌てて膝に顔を埋めた。
ということは、川合先輩は2組目なのだろう。
しかし、それを幸が確認することは出来ない。
緊張してしまって見てられないのだ。
この後、自分の所に走ってくるかもしれない。
もしかしたら来ないかも、なんて淡い希望を抱いているけれど、隣の花奏は確信しているようだ。
「1組目は、ほとんど障害の方は走り終えたみたい」
などと解説までしてくれる。
ああ、どうしよう。ちゃんと断れるだろうか。
そう思ってドキドキしてしまう。
「大丈夫だよ。ちゃんと隣にいるから。なんだったら支えてあげるよ」
花奏の優しい声に、うんうんと言葉もなく頷いた。
だが、誰かがゴールしたのだろう。
2組目のスタートの合図が聞こえて、幸は一瞬息を止めた。
もし、ここに来たら、断らなくてはいけない。
だって、答えはシンプルなんだ。
今後、ペアになるかどうか。幸がペアになりたいかも、って思う人は別にいて、その気持ちの種はしっかり幸の中にある。
そして、それが芽吹く可能性がなくても他の人を考えることが出来る程、幸は器用でもない。
だから断らなくなくちゃ、ダメなんだ。
幸は緊張して、胸の前で手を握り合わせた状態で、ゆっくりと立ち上がった。
花奏がその肩を支えてくれている。
そろそろ障害を走り終える頃だろうか。
そう思って、目線を上げれない幸に、花奏の声が聞こえた。
「先頭が障害走り終えてるよ。…あ?あれ?…こっち?来…」
「幸ちゃん!」
呼ばれて、反射的に顔を上げる。
こっちに走ってくる人を見て、幸は思わず、ほへ?と目を丸くした。
「幸ちゃん、私と、一緒に走ってくださいっ」
全力で来ました、というように息を切らせて。
何故か目の前に、沢城悠先輩がこちらに手を伸ばして、現れた。
2年生の借り物競争のスタート準備が始まる頃に、春野幸は黄組の待機場所で体育座りして小さくなりながら、しかし大きく決意していた。
これから行われる借り物競争で、同じ黄組の先輩の川合麻紀先輩が幸を迎えにくるかもしれない。
もしかしたら、それはやっぱり花奏の勘違いかもしれないけれど、もし本当にそうだったとしたら。
幸はここにきて、はっきり断ろうと心に決めたのだ。
幸にとって、柚鈴の決断は衝撃的だったと言っていい。
柚鈴が、まさかお義姉さんである前生徒会長小鳥遊志奈さんとゴールするとは思ってなかった。
大学、どうしたんだろうと思わないこともないが。
手をつないで走っているのを、そして迷いない友人の表情を見ていたら、分かった気がした。
幸自身がどうすればいいかを。
どうしようと悩む気持ちがあっても、こんな中途半端な気持ちでは、私は川合先輩とは手を繋いで走れない。
絵里の言うように、待ってもらうというのも確かに一つの手だ。
でも、きっと。
本当は答えは出ている。
川合先輩からバッチは受け取れない。その気持ちの種が幸の中に埋まってないから。
せめてお話を聞いてみよう。
もし迎えに来られたら、話を聞いて、それからちゃんとお礼を言ってお断りをしよう、と思った。
私をペアにしたいと思ってくれてありがとうございます。でも、ごめんなさい、と。
そう決意して妙に緊張していると、気付いたのか花奏が横に座って来た。
「幸ちゃん、どうしたの?」
「今、エネルギーを貯めているの」
「…そうなの?」
幸がガチガチの表情で答えると、花奏はぴったりくっついて、へへっと笑った。
「じゃあ私の有り余るパワーを分けてあげよう」
「…ありがとう」
思わず嬉しくなって、花奏にくっつき返す。
川合先輩のことを教えて、そしていよいよ始まる時に幸のこの様子だ。
詳しく説明しなくても、気持ちを察しているのだろう。友達の優しさが温かかった。
そうこうしているうちに、2年生借り物競争1組目のスタートの合図がした。
始まってしまった!と固まっていると。
「あ、川合先輩、スタート地点に立った」
花奏の教えてくれる声に幸は慌てて膝に顔を埋めた。
ということは、川合先輩は2組目なのだろう。
しかし、それを幸が確認することは出来ない。
緊張してしまって見てられないのだ。
この後、自分の所に走ってくるかもしれない。
もしかしたら来ないかも、なんて淡い希望を抱いているけれど、隣の花奏は確信しているようだ。
「1組目は、ほとんど障害の方は走り終えたみたい」
などと解説までしてくれる。
ああ、どうしよう。ちゃんと断れるだろうか。
そう思ってドキドキしてしまう。
「大丈夫だよ。ちゃんと隣にいるから。なんだったら支えてあげるよ」
花奏の優しい声に、うんうんと言葉もなく頷いた。
だが、誰かがゴールしたのだろう。
2組目のスタートの合図が聞こえて、幸は一瞬息を止めた。
もし、ここに来たら、断らなくてはいけない。
だって、答えはシンプルなんだ。
今後、ペアになるかどうか。幸がペアになりたいかも、って思う人は別にいて、その気持ちの種はしっかり幸の中にある。
そして、それが芽吹く可能性がなくても他の人を考えることが出来る程、幸は器用でもない。
だから断らなくなくちゃ、ダメなんだ。
幸は緊張して、胸の前で手を握り合わせた状態で、ゆっくりと立ち上がった。
花奏がその肩を支えてくれている。
そろそろ障害を走り終える頃だろうか。
そう思って、目線を上げれない幸に、花奏の声が聞こえた。
「先頭が障害走り終えてるよ。…あ?あれ?…こっち?来…」
「幸ちゃん!」
呼ばれて、反射的に顔を上げる。
こっちに走ってくる人を見て、幸は思わず、ほへ?と目を丸くした。
「幸ちゃん、私と、一緒に走ってくださいっ」
全力で来ました、というように息を切らせて。
何故か目の前に、沢城悠先輩がこちらに手を伸ばして、現れた。
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