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第三章 5月‐結
お姉さま、借り物競争はご一緒に 5
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責任は自分の方にあるのだから、このまま自分勝手な反応をしていてもいけないだろう。
「志奈さん、騒ぎになると申し訳ないので、インタビュー受けて頂いてもいいですか?」
柚鈴がそうお願いすると、志奈さんはわざとらしく、まあと驚きの表情を作って目を輝かせた。
「良いの?私が何を言っても」
「な、何を言っても、の意味がわかりません」
「私がインタビューを受けて自由に話したら、うっかり柚鈴ちゃんを後悔させるかもしれないもの。確認しておかないと」
「は?それは何の脅しですか!?」
思わず怯えた声が出ると、志奈さんはふふっと楽しそうに笑った。
柚鈴は目を細めて、なるべく警戒してもらえるように、声のトーンを落として言う。
「私が今後、登校拒否したくならない程度にお願いします」
「柚鈴ちゃんは、お母さんを心配させるようなことはしないと思うけど」
…それは、その通りだ。
寮生活をさせてもらっている身の上で登校拒否なんてしてしまっては、お母さんの信用と信頼を裏切ることになる。
それだけが柚鈴は出来ない。絶対にだ。
その辺りを容易く理解出来てしまっている志奈さんの様子に悔しく思う。
やがめ、にこにこと笑ってこちらの反応を見ている志奈さんに、観念して譲歩した。
「せめてインタビューを受けるのは、借り物競争が全部終わってからでお願いします」
「あら」
「どうせ色々ばれるのは違いないんで、もうその辺りは私が頑張りますので」
お手柔らかに、と小さく付けくわえる。
どうせ代わりにインタビューを受けることは出来ない。上手く話すことだってできないだろう。
志奈さんの手をここで取ってしまったからには、受け入れなきゃならないことだってあるのは分かっている。
それならせめて全て終わった後。
柚鈴はこれから東郷先輩との追いかけっこもあるし、幸のことが上手く収まるかも気になっているのだ。今からインタビューなんて受けられたら、それも気になって混乱するだろう。
全てが終わった後に、志奈さんに任せることに決めた。
「そう言われると、揶揄えなくなっちゃうわね」
志奈さんは小さく呟いた。
そわそわしている柚鈴に、志奈さんは笑顔を見せてから、放送部の先輩の方を振り向いた。
「インタビュー、お受けするわ。借り物競争が全学年終了したあとで良ければ」
「ありがとうございます」
放送部の先輩はお礼を言ってから、二人の話が不思議だったのだろう。
柚鈴の方を伺うように見つめている。
「あの、あなたのお名前は?」
聞かれて柚鈴は、一瞬うっとなった。
当然ながら相手とは初対面。しかも、目立たない一生徒である柚鈴のことなど知るわけがないのだ。
名乗れば、当然ある程度の憶測はされるだろうと思いつつ、渋々口を開いた。
「…小鳥遊柚鈴です」
「え」
案の定、目を見開いた先輩の様子に、行きが詰まりそうになった。
「はい。その後のお話は後回しね」
志奈さんが柔らかく笑って間に入った。
「一度、席に戻ってもいいのかしら?」
「あ、はい」
「じゃあ、同窓会テントの近くにいるわ。また後でお願いね」
志奈さんは、ふわり笑ってから一緒についてくるように柚鈴の背中を押した。
私も行くんですか、と思わないこともないけれど、白組の待機場所に帰っても落ち着かないだろうし、すぐに二年生の借り物競争で逃げなければならない。
どこに行っても一緒かと大人しくついて行くことにした。
柚鈴は結局、誤魔化すことなく自分の気持ちに正直に行動したのだ。
これを東郷先輩がどう見たのか、そして他の人たちがどう見たのか。
体育祭実行委員から、1年生の借り物競争の終了の合図がされた。
ゴールしていない生徒もいたようで、ざわつく中に放送部のアナウンスが流れた。
「借り物競争一年生の部が終了致しました。これより二年生が準備をしますので少々お待ちください」
なににせよ、と柚鈴は思った。
やるべきことはやったのだ。東郷先輩とのことも、正直にやるべきことをやるしかないのだ、と。
「志奈さん、騒ぎになると申し訳ないので、インタビュー受けて頂いてもいいですか?」
柚鈴がそうお願いすると、志奈さんはわざとらしく、まあと驚きの表情を作って目を輝かせた。
「良いの?私が何を言っても」
「な、何を言っても、の意味がわかりません」
「私がインタビューを受けて自由に話したら、うっかり柚鈴ちゃんを後悔させるかもしれないもの。確認しておかないと」
「は?それは何の脅しですか!?」
思わず怯えた声が出ると、志奈さんはふふっと楽しそうに笑った。
柚鈴は目を細めて、なるべく警戒してもらえるように、声のトーンを落として言う。
「私が今後、登校拒否したくならない程度にお願いします」
「柚鈴ちゃんは、お母さんを心配させるようなことはしないと思うけど」
…それは、その通りだ。
寮生活をさせてもらっている身の上で登校拒否なんてしてしまっては、お母さんの信用と信頼を裏切ることになる。
それだけが柚鈴は出来ない。絶対にだ。
その辺りを容易く理解出来てしまっている志奈さんの様子に悔しく思う。
やがめ、にこにこと笑ってこちらの反応を見ている志奈さんに、観念して譲歩した。
「せめてインタビューを受けるのは、借り物競争が全部終わってからでお願いします」
「あら」
「どうせ色々ばれるのは違いないんで、もうその辺りは私が頑張りますので」
お手柔らかに、と小さく付けくわえる。
どうせ代わりにインタビューを受けることは出来ない。上手く話すことだってできないだろう。
志奈さんの手をここで取ってしまったからには、受け入れなきゃならないことだってあるのは分かっている。
それならせめて全て終わった後。
柚鈴はこれから東郷先輩との追いかけっこもあるし、幸のことが上手く収まるかも気になっているのだ。今からインタビューなんて受けられたら、それも気になって混乱するだろう。
全てが終わった後に、志奈さんに任せることに決めた。
「そう言われると、揶揄えなくなっちゃうわね」
志奈さんは小さく呟いた。
そわそわしている柚鈴に、志奈さんは笑顔を見せてから、放送部の先輩の方を振り向いた。
「インタビュー、お受けするわ。借り物競争が全学年終了したあとで良ければ」
「ありがとうございます」
放送部の先輩はお礼を言ってから、二人の話が不思議だったのだろう。
柚鈴の方を伺うように見つめている。
「あの、あなたのお名前は?」
聞かれて柚鈴は、一瞬うっとなった。
当然ながら相手とは初対面。しかも、目立たない一生徒である柚鈴のことなど知るわけがないのだ。
名乗れば、当然ある程度の憶測はされるだろうと思いつつ、渋々口を開いた。
「…小鳥遊柚鈴です」
「え」
案の定、目を見開いた先輩の様子に、行きが詰まりそうになった。
「はい。その後のお話は後回しね」
志奈さんが柔らかく笑って間に入った。
「一度、席に戻ってもいいのかしら?」
「あ、はい」
「じゃあ、同窓会テントの近くにいるわ。また後でお願いね」
志奈さんは、ふわり笑ってから一緒についてくるように柚鈴の背中を押した。
私も行くんですか、と思わないこともないけれど、白組の待機場所に帰っても落ち着かないだろうし、すぐに二年生の借り物競争で逃げなければならない。
どこに行っても一緒かと大人しくついて行くことにした。
柚鈴は結局、誤魔化すことなく自分の気持ちに正直に行動したのだ。
これを東郷先輩がどう見たのか、そして他の人たちがどう見たのか。
体育祭実行委員から、1年生の借り物競争の終了の合図がされた。
ゴールしていない生徒もいたようで、ざわつく中に放送部のアナウンスが流れた。
「借り物競争一年生の部が終了致しました。これより二年生が準備をしますので少々お待ちください」
なににせよ、と柚鈴は思った。
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