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第三章 5月‐結
思い出は輝いて 4
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次の競技である、組対抗リレーが始まるまでの時間。
『組対抗リレーが始まるまでの準備がございます。少々お待ちください。ここで、借り物競争でも走られました、昨年度生徒会長である小鳥遊志奈さんへ、インタビューの時間をもうけさせて頂きます』
アナウンスが入ると、一気にグラウンドがざわめいた。
借り物競争で一緒に走ってるときのどよめきもすごかったが、こうして外野の立場になるとより感じる。
グラウンドの正面の位置に、放送部に案内された志奈さんが姿を現すと、さらに一気に騒めきが起こった。
歓声が許されたと言わんばかりに、掛け声さえ飛ぶ始末で。
…あ、あの人。アイドルだったんだっけ?
思わず柚鈴の頭には、間違った疑問が浮かんでしまう。
そもそもいるのは分かっているはずの生徒達が、登場したからと言ってこんな騒ぎになってしまう理由が分からなう。わからないが、もしかしたら常葉学園では当たり前のことなのだろうか?
誰に聞けば正しい答えが得れるのか分からないが、なんとなく凛子先輩を見ると、やれやれ、と肩を竦めていた。
…うわ、いつものことっぽい。
特に驚いた様子もない雰囲気に、悟りつつ、柚鈴は志奈さんに視線を戻した。
志奈さんは大きな歓声に、少し驚いたように目を丸くしたが、やがて本当に嬉しそうに、胸の辺りを押さえてにっこりと笑った。
その無邪気さが、まさに堂に入った様に見えてしまい、柚鈴は絶句した。
やっぱり志奈さんと自分は別次元の生き物だと確信した。
『皆様、ごきげんよう』
マイクを通して、ソプラノの優しい声が響くと、歓声は一度一層大きくなった。
志奈さんは、その様子に驚くこともなく、ほほ笑んでゆっくりと歓声を聞いてしばらく間をおく。
それからおもむろにマイクを持ち直して、口元に寄せた。
すると。
一気にグラウンド中がシンとした。
彼女が何を言い出すのかと聞こうとしているのだ。
完全にその場を掌握してしまっている志奈さんに、柚鈴はゾッとした。
なんだかとてつもなく恐ろしい。
この大人数を相手に動揺一つ見せない。
見せないどころか、簡単に手のひらに転がしているようにさえ見えた。
全校生徒のお姉さま。
最初にその言葉を聞いた時には、少々大げさだと感じたのだが、今は逆である。
そんな言葉は生易しい。
お姉さま、などと言うような、どこか綺麗な言葉に収めてはならない。
これではまるで、何かの教祖さま…
「柚鈴さん、気を確かに持ちなさい」
冷静な声で我に返らせてくれたのは、笹原真美子さんだった。
いつの間にか横にいて、そのどこか冷ややかな視線は、今は柚鈴を落ち着かせてくれる。
「久しぶりだから、みんなちょっと楽しんでいる所もあるのよ。いつもはここまで派手ではなかったわ」
「本当ですか?」
「ええ。ああいう目立つ存在がいることは、学園生活には多少なりとも潤いになるそうよ。私にはよく分からないけれど」
淡々と真美子さんが言うと、凛子先輩が、申し訳なさそうに小さくなる。
「提供できる潤いが少なくて、申し訳ない限りです」
「ばかなことを言わないで。あんなのが毎年出てくることを考えたら、頭痛がするわ」
真美子さんはため息をついた。
まるで怪物みたいな言われ方だ。
だが、確かに毎年、あんな人が現れる女子校と言うのはない気がする。
柚鈴からすれば、凛子先輩が十分素敵な生徒会長だ。
志奈さんのような生徒会長がいても、あまりお近づきになりたいとは思わなかっただろう。
現状、お近づきどころか、姉妹になってしまっているのが恐ろしい事実ではある。
同窓会テント前は、やや冷静な空気で、ここに戻ってきて良かったと思っていると、志奈さんはとうとう次の言葉を話すために口を開いた。
『組対抗リレーが始まるまでの準備がございます。少々お待ちください。ここで、借り物競争でも走られました、昨年度生徒会長である小鳥遊志奈さんへ、インタビューの時間をもうけさせて頂きます』
アナウンスが入ると、一気にグラウンドがざわめいた。
借り物競争で一緒に走ってるときのどよめきもすごかったが、こうして外野の立場になるとより感じる。
グラウンドの正面の位置に、放送部に案内された志奈さんが姿を現すと、さらに一気に騒めきが起こった。
歓声が許されたと言わんばかりに、掛け声さえ飛ぶ始末で。
…あ、あの人。アイドルだったんだっけ?
思わず柚鈴の頭には、間違った疑問が浮かんでしまう。
そもそもいるのは分かっているはずの生徒達が、登場したからと言ってこんな騒ぎになってしまう理由が分からなう。わからないが、もしかしたら常葉学園では当たり前のことなのだろうか?
誰に聞けば正しい答えが得れるのか分からないが、なんとなく凛子先輩を見ると、やれやれ、と肩を竦めていた。
…うわ、いつものことっぽい。
特に驚いた様子もない雰囲気に、悟りつつ、柚鈴は志奈さんに視線を戻した。
志奈さんは大きな歓声に、少し驚いたように目を丸くしたが、やがて本当に嬉しそうに、胸の辺りを押さえてにっこりと笑った。
その無邪気さが、まさに堂に入った様に見えてしまい、柚鈴は絶句した。
やっぱり志奈さんと自分は別次元の生き物だと確信した。
『皆様、ごきげんよう』
マイクを通して、ソプラノの優しい声が響くと、歓声は一度一層大きくなった。
志奈さんは、その様子に驚くこともなく、ほほ笑んでゆっくりと歓声を聞いてしばらく間をおく。
それからおもむろにマイクを持ち直して、口元に寄せた。
すると。
一気にグラウンド中がシンとした。
彼女が何を言い出すのかと聞こうとしているのだ。
完全にその場を掌握してしまっている志奈さんに、柚鈴はゾッとした。
なんだかとてつもなく恐ろしい。
この大人数を相手に動揺一つ見せない。
見せないどころか、簡単に手のひらに転がしているようにさえ見えた。
全校生徒のお姉さま。
最初にその言葉を聞いた時には、少々大げさだと感じたのだが、今は逆である。
そんな言葉は生易しい。
お姉さま、などと言うような、どこか綺麗な言葉に収めてはならない。
これではまるで、何かの教祖さま…
「柚鈴さん、気を確かに持ちなさい」
冷静な声で我に返らせてくれたのは、笹原真美子さんだった。
いつの間にか横にいて、そのどこか冷ややかな視線は、今は柚鈴を落ち着かせてくれる。
「久しぶりだから、みんなちょっと楽しんでいる所もあるのよ。いつもはここまで派手ではなかったわ」
「本当ですか?」
「ええ。ああいう目立つ存在がいることは、学園生活には多少なりとも潤いになるそうよ。私にはよく分からないけれど」
淡々と真美子さんが言うと、凛子先輩が、申し訳なさそうに小さくなる。
「提供できる潤いが少なくて、申し訳ない限りです」
「ばかなことを言わないで。あんなのが毎年出てくることを考えたら、頭痛がするわ」
真美子さんはため息をついた。
まるで怪物みたいな言われ方だ。
だが、確かに毎年、あんな人が現れる女子校と言うのはない気がする。
柚鈴からすれば、凛子先輩が十分素敵な生徒会長だ。
志奈さんのような生徒会長がいても、あまりお近づきになりたいとは思わなかっただろう。
現状、お近づきどころか、姉妹になってしまっているのが恐ろしい事実ではある。
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