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第四章 6月
お姉さま、予想外です! 5
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素直すぎる東郷先輩に、隣から幸の方が表情を緩めて口を挟んだ。
「東郷先輩は、本当に荻原先輩のことが大好きなんですね」
「勿論よ。私の助言者だもの」
東郷先輩もどこか穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
そうか、荻原先輩か。
柚鈴もようやく納得がいく。
今まで見てきた荻原先輩の志奈さんへの態度が、東郷先輩の考え方を軟化させたのだろう。
柚鈴の気持ちが自分の納得できない相手にあったとしたら譲るような人ではない。
志奈さんは西組の生徒ではあったが、助言者が一目置いていたということを、東郷先輩自身が見ていたことが影響しているということだ。
東郷先輩は穏やかな表情のままだが、ふいに何かを決意したように柚鈴を見て口を開いた。
「柚鈴さん、今後困ったことがあったら私の名前を使うのはどうかしら?」
「え?」
「2年東組の東郷千沙に前々からペア申し込みをされているので、今から他の人のことは考えるのは難しいですと。今度からそう断れば多少の時間は稼げるでしょう」
「…でもそれって」
そんなこと良いのだろうか。
確かに事実を含んではいるけれど、先ほどのことで既に東郷先輩には迷惑をかけている。
その上、柚鈴の都合のいいように名前を借りる、というはどうだろう。
東郷先輩は肩を竦めてから、どこか真面目な表情で言った。
「勿論、下心はあるわ。助言者候補が複数出てきては、私も困るもの」
「…」
下心。
その一言は、引っかかる。しかもなんだか真剣な顔だし。
思わず押し黙ると、東郷先輩はやれやれとため息をついた。
「このまま柚鈴さんに脈がないなら、私は他の1年生を考えないといけないでしょうね」
「そ、そうですね。そうしていただいた方が…。あ、なら私が東郷先輩の名前を使っては駄目ではないかと思います。今後のために」
「今の所、柚鈴さん以外に興味がないから問題ないわ」
「……」
やっぱりどこまでも一直線な東郷先輩に困っていると、ふっと声色が変わった気がした。
「…もしかしたら柚鈴さんの気が変わるようなことがあるかもしれない、と思っているのよ」
何か思う所でもあるのだろうか。
東郷先輩は思考に耽るような目線を一瞬見せた。
しかしそれが何か聞く前に、微かに笑って付け足すように口を開いた。
「別に大丈夫ならいいのよ。もしもの時にはそうしてもいいという話。柚鈴さんも申し込みばかり沢山いただいても困るでしょう?毒をもって毒を制す、って言うでしょう」
「毒…」
さらりと、自分のことも毒と言ってのける東郷先輩はなんだかすごい。
…自覚があるのかないのか、少々疑問なところもあるけれど。
「そうね、無条件ではなんだから、もし他に助言者にしたい誰かが出来たり、生徒会にでも入ってメンティの対象外になる時は教えてちょうだい」
「…」
東郷先輩は無理にとは言わないけど、とあっさり引いた。
下駄箱が見えてきて、東郷先輩はそれじゃあ行くわねと立ち去っていった。
柚鈴はお礼の気持ちを込めて頭を下げて見送った。
その姿が見えなくなると、幸が柚鈴の様子を窺うように声をかけた。
「さて、どうしようか?」
「え?」
「このまま教室に行ったら、別の先輩が待っていたりして」
「ゆ、幸ちゃん、止めてよ…」
「可能性はあるでしょう?わざわざ始業前に待っていた人たちもいるくらいだし」
確かに可能性はある。
柚鈴は言葉につまった。
「昼食も危険だよね」
「えぇ~…」
「とりあえず、放課後に凛子先輩に相談してみよう」
「なんだか毎度毎度申し訳ないな…」
「仕方ないよ」
幸はポンポンと柚鈴の方を叩いた。
仕方ない。
それはまあ、確かにその通りなんだろうけど、どうも志奈さんと関わりを持ってろくなことがない気もする。
しかも今度の相手は志奈さんに憧れている上級生の方々。悪意はなく、好奇心や興味からの行動だ。
好意よりも軽いそれらの対応は、相手に迷惑を掛けている気持ちが薄くなりやすい分難しそうだった。
「とりあえず、予鈴がなるまで教室に入るのは辞めようかな…」
柚鈴はぼやくように呟いた。
「東郷先輩は、本当に荻原先輩のことが大好きなんですね」
「勿論よ。私の助言者だもの」
東郷先輩もどこか穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
そうか、荻原先輩か。
柚鈴もようやく納得がいく。
今まで見てきた荻原先輩の志奈さんへの態度が、東郷先輩の考え方を軟化させたのだろう。
柚鈴の気持ちが自分の納得できない相手にあったとしたら譲るような人ではない。
志奈さんは西組の生徒ではあったが、助言者が一目置いていたということを、東郷先輩自身が見ていたことが影響しているということだ。
東郷先輩は穏やかな表情のままだが、ふいに何かを決意したように柚鈴を見て口を開いた。
「柚鈴さん、今後困ったことがあったら私の名前を使うのはどうかしら?」
「え?」
「2年東組の東郷千沙に前々からペア申し込みをされているので、今から他の人のことは考えるのは難しいですと。今度からそう断れば多少の時間は稼げるでしょう」
「…でもそれって」
そんなこと良いのだろうか。
確かに事実を含んではいるけれど、先ほどのことで既に東郷先輩には迷惑をかけている。
その上、柚鈴の都合のいいように名前を借りる、というはどうだろう。
東郷先輩は肩を竦めてから、どこか真面目な表情で言った。
「勿論、下心はあるわ。助言者候補が複数出てきては、私も困るもの」
「…」
下心。
その一言は、引っかかる。しかもなんだか真剣な顔だし。
思わず押し黙ると、東郷先輩はやれやれとため息をついた。
「このまま柚鈴さんに脈がないなら、私は他の1年生を考えないといけないでしょうね」
「そ、そうですね。そうしていただいた方が…。あ、なら私が東郷先輩の名前を使っては駄目ではないかと思います。今後のために」
「今の所、柚鈴さん以外に興味がないから問題ないわ」
「……」
やっぱりどこまでも一直線な東郷先輩に困っていると、ふっと声色が変わった気がした。
「…もしかしたら柚鈴さんの気が変わるようなことがあるかもしれない、と思っているのよ」
何か思う所でもあるのだろうか。
東郷先輩は思考に耽るような目線を一瞬見せた。
しかしそれが何か聞く前に、微かに笑って付け足すように口を開いた。
「別に大丈夫ならいいのよ。もしもの時にはそうしてもいいという話。柚鈴さんも申し込みばかり沢山いただいても困るでしょう?毒をもって毒を制す、って言うでしょう」
「毒…」
さらりと、自分のことも毒と言ってのける東郷先輩はなんだかすごい。
…自覚があるのかないのか、少々疑問なところもあるけれど。
「そうね、無条件ではなんだから、もし他に助言者にしたい誰かが出来たり、生徒会にでも入ってメンティの対象外になる時は教えてちょうだい」
「…」
東郷先輩は無理にとは言わないけど、とあっさり引いた。
下駄箱が見えてきて、東郷先輩はそれじゃあ行くわねと立ち去っていった。
柚鈴はお礼の気持ちを込めて頭を下げて見送った。
その姿が見えなくなると、幸が柚鈴の様子を窺うように声をかけた。
「さて、どうしようか?」
「え?」
「このまま教室に行ったら、別の先輩が待っていたりして」
「ゆ、幸ちゃん、止めてよ…」
「可能性はあるでしょう?わざわざ始業前に待っていた人たちもいるくらいだし」
確かに可能性はある。
柚鈴は言葉につまった。
「昼食も危険だよね」
「えぇ~…」
「とりあえず、放課後に凛子先輩に相談してみよう」
「なんだか毎度毎度申し訳ないな…」
「仕方ないよ」
幸はポンポンと柚鈴の方を叩いた。
仕方ない。
それはまあ、確かにその通りなんだろうけど、どうも志奈さんと関わりを持ってろくなことがない気もする。
しかも今度の相手は志奈さんに憧れている上級生の方々。悪意はなく、好奇心や興味からの行動だ。
好意よりも軽いそれらの対応は、相手に迷惑を掛けている気持ちが薄くなりやすい分難しそうだった。
「とりあえず、予鈴がなるまで教室に入るのは辞めようかな…」
柚鈴はぼやくように呟いた。
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